○ 実機レビュー (2010年 秋モデル)
          エプソン Endeavor Pro4700

エプソン様より、高性能型のパソコン「Endeavor Pro4700」を試用する機会を頂きました。

EPSON Endeavor Pro4700エプソンは自社でパソコンのケースやパーツの開発を行っている国内大手の PC メーカーです。
市販のパーツを組み立てるだけではなく、パーツ自体の自社開発もしているため、超小型のパソコンから大型のものまでサイズのラインナップが豊富で、非常に特殊なスタイルのパソコンも多く用意されています。

分類すると、NEC や富士通と同じ「メーカー品」と呼ばれるパソコンと言って良いのですが・・・
しかし近年のエプソンのパソコンは NEC や富士通のパソコンとは一線を画す、パソコンマニアも唸るような拡張性と、最新 3D グラフィックのゲームも快適に動く高性能モデルも用意されているのが特徴です。
家電メーカーのパソコンとパソコンショップのブランドPC、その中間に位置する特殊なモデルと言えますね。

エプソンのパソコンの中で大型・高性能のものは「Endeavor Pro」というモデルです。
このうち(2010年9月時点で)上位型の Core i7 900 シリーズという CPU を使うのが Pro7000 シリーズ、新型の Core i7 800 シリーズの CPU を使うのが Pro 4000 シリーズです。
今回お借りした Endeavor Pro4700 は Core i7 800 シリーズを使う高性能型の PC という事になります。

この Endeavor Pro 4000 シリーズの特徴は、実用性と拡張性を両立させた特殊な設計のケースが使われている事
それはパソコンに詳しい人ほど「素晴らしい」と思える、非常によく考えられた設計になっています。
今回はそのケース・パソコンの構造を中心にレビューを行いたいと思います。

※現在、すでに後継機の Endeavor Pro5000 が登場しています。 Pro5000 のレビューは こちら をご覧下さい。


エプソンダイレクト株式会社
 パソコンの概要と外観、内部構造

EPSON Endeavor Pro4700エプソン(セイコーエプソン)は、日本の精密機器メーカー「セイコーグループ」の中で、パソコンやプリンター、デジタルカメラなどの販売を手がけている大手企業です。
時計や電子部品などを製造しているメーカーもグループ内に存在し、日本各地に工場を持つため、日本の電子機器メーカーの中ではトップクラスの開発力を持つ企業ですね。
扱っているものが東芝や松下、シャープなどの家電メーカーとは違い、電子機器がメインであるため、パソコンのスタイルもそれらの企業のものより性能や汎用性に優れた専門的なものとなっています。
NEC や富士通のような拡張性のない保守的な設計とも異なっていて、「自社開発のメーカー品でありながら拡張性が高い」という独特とも言える特徴のパソコンが作られています。

本体は白と黒のツートンカラー。 エプソンのパソコンは割とデザインにも優れていて、単なる四角い本体ではありません。
Pro4000 シリーズの前面パネルは伝統的(?)に、凹凸が多い形状になっている気がします。
他のモデルよりデザイン面も重視されている印象ですね。

今回試用させて頂いた Endeavor Pro4700 の本体は、非常に「実用性」「使い勝手」、そして「拡張性」を考慮したものになっていました。
なんとこのパソコン、パーツの着脱を行うのに「ドライバー」をほとんど使いません!
ツールフリー構造」という特殊な設計になっていて、側面パネルはレバーを下ろすだけで簡単にはずせ、パーツのほとんどは専用の「留め具」で固定できるようになっています。
パーツの着脱の際に「ネジ止め」をする事がほとんどないという珍しいパソコンで、この時点で「単なるメーカー品ではない、パソコンに詳しい人も納得の拡張性の高い本体」だというのが解ると思います。

前面には2つの USB コネクタがあるのですが、「横向きに」付いています。
これはこの方がコードや機器が干渉しにくいためで、設計の都合で USB を横向きに出来ない場合は、エプソンのパソコンは USB の間隔を出来るだけ空けるようにしているそうです。
こうした「使い勝手」に配慮した設計と、そのケースを自社で開発・生産できる企業力が、エプソンの特徴と言えますね。

EPSON Endeavor Pro4700 USB端子部 EPSON Endeavor Pro4700 取っ手 EPSON Endeavor Pro4700 背面部
USB は横向き。
幅が広くても干渉しません。
上部には「取っ手」を装着可能。
移動させるのが容易です。
背面部には eSATA と USB が6つ。
IEEE1394 端子はありません。

そして Endeavor Pro4700 の最大の特徴と言えるのが、前面下部に用意された HDD スロット。
内蔵型の HDD(ハードディスク)を、前面部から「手前に引き出して」簡単に交換できるようになっています!
レバーを握りながら前面部を手前に引くと「HDD ベイ」(HDD 収納部)を丸ごと手前に開くことができ、その中にある「カートリッジ」に内蔵 HDD を装着して差し込むことで、ケースの中に手を入れなくても HDD を簡単に着脱できるようになっています。
このカートリッジは中に「ガチャッ」と入れるだけで後部のコネクタが接続されるようになっており、面倒なコードの取り付けは必要ありません
セキュリティーのために、HDD ベイが開かないように「鍵」をかけることもできます。

こうしたカートリッジ式の HDD ベイは個別に販売されていたりしますが、それがケース本体に、しかも非常に使いやすい形で備わっているというパソコンは他にありません。
正直、私もこれを見た時は「このパソコン欲しい」と思いましたね。

EPSON Endeavor Pro4700 引出式HDDスロット EPSON Endeavor Pro4700 引出式HDDスロット EPSON Endeavor Pro4700 引出式HDDスロット
手前に引くと HDD ベイが丸ごと開く。
ロックをかけておく事も出来ます。
引っ張るだけで HDD 着脱可能。
カートリッジに HDD をはめるのも簡単。
奥には SATA の端子と電源があります。
カチッと刺すだけではまります。


内部の様子は以下の様になっています。
前述したように側面パネルはレバーで簡単に外せるようになっていて、ネジを外したりする必要はありません。

EPSON Endeavor Pro4700 ケース内部 EPSON Endeavor Pro4700 ケース内部
側面パネルを開けるとこの状態。
手前に拡張カードの留め具をはめる柱があります。
拡張カードの柱とエアダクトを取り外した状態。
拡張カードの留め具は無理になくてもいい気もする・・・

パネルを外すと手前に一本の柱が立っています。 これは拡張カードやビデオカード(グラフィックカード)などを固定する「留め具」を装着するもので、ネジ止めがないためか、これで動かないようにカードを固定しているようです。

内部にも色々と工夫があり、前面パネルはストッパーを押さえるだけで簡単に外すことができ、CD/DVD ドライブ(5インチベイ)や、カードリーダーなどを入れるスロット(中央部の 3.5 インチベイ)は、前面からパーツを入れた後、スライドレバー式の留め具を使って簡単に固定できるようになっています。
これなら外す場合もラクですね。

内部はかなり広く取られていて、大型のビデオカードも装着可能になっています。
例えば今回試用したパソコンには大型の RADEON HD 5870 というビデオカードが装着されていたのですが、スペースには十分余裕があり、最大で 312mm の拡張カードも装着できるようになっています。
これは現在最大のビデオカード RADEON HD 5970 も装着できるサイズで、つまり現在の全てのビデオカードに対応できる事になりますね。
これだけビデオカードのスペースが広いのは、独自設計の HDD ベイがかなりスリムなサイズに作られているからのようで、この辺りもケースを自社で設計・開発できる利点が生かされていると言えます。

EPSON Endeavor Pro4700 前面パネル EPSON Endeavor Pro4700 留め具
前面パネルを外した状態。 簡単に外せます。
今回、5インチベイの2段目には SSD が付いてます。
CD/DVD ドライブなどは留め具で固定。
中は広く大型ビデオカードも普通に入ります。

やや気になるのは「エアフロー(通気性)」で、前面側にはケースファンがありません
さらに開口部も5インチベイ(CD/DVD ドライブ)の間にある細いすき間のみで、前面からの通気口はこれだけです。
パソコンの本体内部には「通気ダクト」が設けられていて、前面からの空気は電源ユニットに直接送る形になっています。
よって CPU や VGA(ビデオカード)へのエアフローは、側面パネルの開口部からの自然吸気のみとなります。

側面パネルの開口部は CPU 側とビデオカード側の2個所で、サイズ、穴の大きさ、共にかなり大きめに取られています。
十分な吸気が出来るようにはなっているようで、説明では「十分な冷却性能はある」との事です。
また、電源ユニットに付いている電源ケーブルの数や長さがケースに合わせてカスタマイズされたものになっていて、邪魔なケーブルでケース内のスペースやエアフローが遮られないようになっています。
ただ、Endeavor Pro はあくまで「一般の高性能型モデル」なので、ビデオカードが重視される他の「ゲーミングモデル」などと比べると、エアフローの考慮は低めかもしれません。

EPSON Endeavor Pro4700 エアフロー EPSON Endeavor Pro4700 側面開口部 EPSON Endeavor Pro4700 拡張スロット
電源と CPU の空気の流れが完全に分けられていて、
本体内の温い空気が電源側に行かないようにしている。
CPUとVGAはここから吸気。
塞いだりするのは厳禁!
スロットは PCIe 1つ、PCI 3つ。
留め具を使ってネジなし固定可能。

拡張カードスロットはビデオカードの直下のものを除いて、PCI Express x16 スロット1つと、普通の PCI スロットが3つ用意されています。
4つ分のスロットがあるので拡張性は十分と言えるでしょう。
拡張カードも専用の留め具で固定できるようになっていて、ドライバーなどは一切必要ありません。
なお、地デジチューナーカードを取り付けて、テレビを見れる状態で送ってもらうことも出来ます。

ケース全体のサイズは横幅が 21.5 cm、高さが 43 cm、奥行きが 50 cm です。
一般のパソコンは横幅が約 20〜23 cm、高さが約 40〜45 cm、奥行きは約 50〜55 cm なので、サイズとしては標準的ですね。

今回試用したパソコン「エプソン Endeavor Pro4700」のパーツ構成は以下の様になっていました。

OS Windows 7 Home Premium 64bit 版
CPU Core i7 870 (2.93GHz、4コア)
メモリ DDR3 8GB (2GB×4)
ビデオカード RADEON HD 5870 (VRAM 1GB)
HDD 80GB SSD (インテル X25-M)+ 250GB HDD
マザーボード P55 チップセット (おそらくエプソン自社製)
電源 750W 電源 (エプソン自社製)

利用可能なパーツ構成、およびパーツの製品名は、あくまで今回の検証機に付いていたものですのでご了承下さい。
(時期により変わる可能性があります。 この辺りのパーツが使われるという「目安」として考えて下さい)
(ただマザーボードと電源ユニットはエプソンの場合、基本的に自社製のものが使われると思います)

価格は約 23 万円という、かなり高価な構成ですが・・・
これは私がお願いして、SSD を付けて貰ったり、ビデオカードをハイスペックなものにして貰ったりしたからですね。
Endeavor Pro4700 の基本構成は約 11 万円で、この場合は CPU に廉価型の Core i3、ビデオカードに RADEON の低価格型(RADEON HD 4350)が付いています。
まあ BTO(パーツ選択)が可能ですから、注文時の構成次第で安価なものにもハイスペックなものにもすることが可能です。

ケースの価格はやはり(パソコンショップのブランド品などと比べると)高めです。
これだけ様々な機能性を持っているケースなので、そこは仕方がないと言ったところでしょうか。
一般的な高性能型と思われる、CPU Core i7 870メモリ 4GBビデオカード RADEON HD 5770 という構成にすると、価格は 15〜16 万円といったところです。


実機レビュー




































 性能の検証(エプソン Endeavor Pro4700)

EPSON Endeavor Pro シリーズは BTO(パーツ選択によるカスタマイズ)に対応しています。
以下の性能の検証は、あくまで今回お借りした実機のものだと考えて下さい。

今回の構成の特徴は、新型データ記録装置「SSD」を搭載している事と、ビデオカードに RADEON シリーズの最高クラス「RADEON HD 5870」を使用している事でしょう。
CPUCore i7 870 も、高性能型の CPU としては現在もっとも一般的、かつコストパフォーマンスに優れたタイプです。

以下はパソコンの性能を測定するソフト PCmark 05 の結果です。
比較対象として他のパソコンの性能も掲載しています。

ツクモ G-GEAR GA7J-B23
2010年 夏モデル
G-Tune NEXTGEAR i800SA6
2010年 秋モデル
ドスパラ Galleria XG
2010年 夏モデル
エプソン Endeavor Pro4700
2010年 秋モデル
CPU Core i5 760
(2.8GHz、コア4つ)
Core i7 970
(3.2GHz、コア6つ)
Core i7 860
(2.8GHz、コア4つ)
Core i7 870
(2.8GHz、コア4つ)
メモリ DDR3 4GB DDR3 12GB DDR3 4GB DDR3 8GB
VGA GeForce GTS 250 GeForce GTX 470 GeForce GTX 480 RADEON HD 5870
構成価格 約9万円 約23万円 約16万円 SSD 追加で約23万円
ツクモ G-GEAR GA7J-B23/S G-Tune NEXTGEAR i800SA6 ドスパラ Galleria XG エプソン Endeavor Pro4700

グラフィックの性能(Graphics Score)は、GeForce の最上位型 GeForce GTX 480 を搭載した機種よりも高いスコアが出ています。
CPU の違いも影響していると思いますが、さすがに高性能と言えますね。
GeForce GTX 480 と RADEON HD 5870 は同クラス・同価格帯のライバル製品です。
ただ、後で詳しく解説しますが、RADEON は「得手不得手」があるビデオカードです。 使用するソフトによっては動作が遅くなる事もあるので注意して下さい。
画質に関しては、RADEON はソフトで色鮮やか、GeForce はシャープでクッキリ、と一般に言われています。

そしてなんと言っても注目なのは SSD の速度でしょう。
HDD のスコアが他は 6000〜7500 なのに、SSD だとなんと 26000! 圧倒的な早さです。
実際、使っていてもデータの読み込みが明らかに早いのを体感できます。

以下は HDD の速度を調べる定番ソフト「CrystalDiskMark」で測定した、HDD / SSD の速度です。

HDD と SSD の検証結果

読み込み速度で SSD が圧倒的、一般的な HDD と比べて数倍以上の速度が出ていますね。
特に「ランダムアクセス」(細かいファイルを次々と読み書きする速度)は HDD よりはるかに早く、ここが Windows の起動速度や普段の使用時に最も影響する部分なので、体感できるほどの SSD の早さに直結していると言えます。

「連続」(シーケンシャル速度)は大きなファイルの読み書きの早さで、ここの書き込み速度に関しては普通の HDD の方が早かったりするのですが、ここは普段の使用にはそれほど大きく影響しない部分ですし、シーケンシャル速度でも読み込みに関しては SSD の方がかなり上です。

SSD は以前にも検証した事があるのですが、今回使用されていた SSD は「Intel X25-M」という定番かつ高性能なもので、今回の方がかなり総合性能が高まっていました。
SSD はまだ新しい技術なので、新型による性能の向上率も高いですね。
特に Intel X25-M のランダムアクセスの書き込み速度は、本来書き込みがあまり得意でない SSD とは思えないほど高速です。

CPU の速度については、前述した PCmark 05 のスコアと、多数の処理を同時に行ってテストする CINEBENCH(R11.5) というソフトで測定した結果を合わせて掲載しておきますので参考にして下さい。
PCmark05(緑色のバーグラフ)は1つ〜4つの処理を同時に行って測定し、CINEBENCH(青色のバーグラフ)はその CPU で出来る最大数の処理を行って測定します。
比較対象として他の CPU の性能値も含めています。

Core i7 970 3.2Ghz x 6 (12) 11075
8.24

Core i7 960 3.2Ghz x 4 (8) 5.48
Core i7 950 3.2Ghz x 4 (8) 10536
Core i7 920 2.6GHz x 4 (8) 9304
4.75

Core i7 870 2.9GHz x 4 (8) 10633
5.49

Core i7 860 2.8GHz x 4 (8) 10130
5.05

Core i5 760 2.8GHz x 4 9460
3.71

Core i5 650 3.3GHz x 2 (4) 9026
2.90

Core i3 530 2.9GHz x 2 (4) 7820
2.45

Core 2 Quad Q9650 3.0GHz x 4 9528
3.65

Core 2 Duo E8400 3.0GHz x 2 7460
1.80

※ x2 や x4 はコア数、(4)や(8)は同時に可能な処理数です。

実際の使用時の速度は用途によって異なるのですが、緑と青のバーグラフの中間ぐらい、と思えばいいでしょうか。
一番上の Core i7 970 は高性能ですが約9万円ぐらいします。
Core i7 870 は約3万円ぐらいなので、コストパフォーマンスで言うと Core i7 870 が優れていますね

Core i5 も2万円ぐらいで、コストパフォーマンスは高めですが、すでに Core 2 Quad や Core 2 Duo を搭載したパソコンを使っている人だと、あまり性能の向上は感じられないかもしれません。



続いて、今回の実機で、3D グラフィックを使ったソフトを動かしたり、ゲームをやった時にどのぐらい快適に動くかを調べたものを表記します。
「エプソン Endeavor Pro4700」はゲーミングモデル(ゲーム用パソコン)ではありませんが、一般に高性能なビデオカードが搭載されたパソコンというのは、基本的に「ゲーム向け」「ゲーム用途も考えたPC」と言えます。
比較対象として他のパソコンの測定結果も併記しています。

EPSON Endeavor Pro4700 ベンチマーク表

※3D mark 06 はゲームではありませんが、世界標準と言える 3D グラフィック性能の測定ソフトです。
3D mark Vantage は最新の標準的な測定ソフトですが、スコアの差やブレが大きめに出るので目安程度にして下さい。

大航海時代 Online は 2D(平面)グラフィックの描画速度もスコアに影響する特徴があります。
どのベンチマークソフトも特に表記がない限り標準設定のままで測定を行っています。
目安として、大航海時代 Online は 300 以上、FFXI は 4000 以上、モンスターハンターは 3500 以上、バイオハザード5は 60 以上で快適です。

今回はビデオカード(グラフィックカード)が GeForce ではなく、RADEON という点が注目でした。
RADEON はどちらかと言うとゲーム向きではなく、一般の映像や画像の視聴向けのビデオカードです。
近年の RADEON は 3D 描画の性能も飛躍的に向上し、3D グラフィックを使ったゲームも得意としているのですが、旧来の 2D グラフィックのゲームは苦手とするなど、ゲームの面においてはやや得手不得手が存在する特徴を持ちます。

今回の測定では、やや古いグラフィック技術を使う「大航海時代 Online」や「ファイナルファンタジーXI」において、その辺りの影響が見えます。
最高クラスのビデオカードであるにもかかわらず、廉価型の GeForce にも劣るスコアが見られますね。
それでもさすがに上位型、十分と言えるスコアは叩き出してはいるのですが、RADEON は「2D グラフィックしか使わないゲーム」において速度が低下する難点があり、メジャーなところでは「ラグラロク オンライン」や「メイプルストーリー」などの韓国系オンラインゲームの多くで、速度低下が顕著に生じます。

2D グラフィック性能
GDI は平面画像の表示速度、D2D は平面画像を動かす早さです。
RADEON は D2D が昔からかなり低く、ここが足を引っ張るため、平面画像(2D)のゲームの
スクロールやキャラクターの移動を苦手とします。

逆に今回の検証結果を見ても解るように、最新の 3D グラフィックのゲームは得意です。
モンスターハンターやバイオハザード5のスコアはかなり優秀ですね。

そしてなんと言っても注目なのは、現在の 3D グラフィックのゲームの代表格 FFXIV のベンチマーク(性能測定)の結果でしょう。
通常測定(LOW)で 5830 、高画質測定でも 4700 という非常に高い結果を出しています。

FFXIV ベンチ

FFXIV のベンチマークのスコアの目安は以下の様になっています。

  • 8000 以上 : 非常に快適に動作します。
  • 5500 〜 7999 : とても快適に動作します。
  • 4500 〜 5499 : 快適な動作が見込めます。
  • 3000 〜 4499 : やや快適で、標準的な動作が見込めます。
  • 2500 〜 2999 : 標準的な動作が見込めます。
  • 2000 〜 2499 : ゲームプレイは可能ですが、負荷によってはやや重くなります。
  • 1500 〜 1999 : ゲームプレイは可能ですが、全体的に重くなります。
  • 1500 未満 : 動作困難です。 必要な性能を満たしていません。

とても快適に動作します」の範囲で、高画質設定にしても「快適な動作が見込めます」の範囲に入ります。
これは現在(2010年秋)のパソコンの最上位に位置すると言っても良い結果です。

実は FFXIV は、GeForce を開発している nVidia 社と提携があって、GeForce シリーズに最適化した開発が行われています。
しかしなぜか、ベンチマーク(動作測定)の結果は GeForce シリーズより RADEON シリーズの方が総じて上で、これはユーザーの間でも大きな話題となりました。
現時点(2010年秋時点)では、「FFXIV の事を考えるなら GeForce より RADEON の方が良い」というのは結果から見ても確かで、パーツ選びの1つのポイントでもあります。

また、今回の測定結果の注目点はもう一つ・・・ 「LOAD TIME」の部分でしょう。
ここはデータの読み込みの早さを示している部分なのですが、さすがに SSD を使っただけあって、約 18000 ms という高いスコアが出ています。
ここのスコアは普通の HDD だと一般的に 10000〜12000 ms ぐらいなのですが・・・ SSD だと 1.5 倍以上のスコアです。

SSD 測定結果 for FFXIV

オンラインゲームをやっていて、他の人と同時に町やフィールドに入ったのに、それぞれの動き出しの早さが違う、というのは実際にやったことのある方なら経験があるはずです。
これは町やフィールドの読み込みが終わった人から動き始めるためで、ここに HDDSSD の速度、前述の「LOAD TIME」の部分が影響します。
シーンが変わった後の動き出しが毎回遅れてしまう人は、(よほど回線が悪くない限り)パソコンのデータの読み込みが遅いです。
SSD は価格が高いので、そのためだけに SSD にするというのも考えものですが、測定結果から見ても明確に差が出るであろう事は解りますね。


と言う訳で、エプソン Endeavor Pro4700 の今回の構成は、ゲームにも非常に適していた訳ですが・・・
測定中の騒音、つまり「ファンの音の大きさ」はやや気になりました。

エプソンのデスクトップパソコンは以前から、動作音に関してはやや大きめです。
これはケースファンか電源のファンの回転数が早く、静音ファンでないためだと思われ、かつ側面に大きな開口部があるからだと思われます。
今回はビデオカードに最上位クラスの RADEON HD 5870 が搭載されていたため、その音はさらに大きめになっていました。
(ビデオカードが高性能であるほど消費電力と発熱が大きくなるため、ファンの回転数も上がり騒音は大きくなります)
まあ、これでも GeForce GTX 480 よりはマシなのですが・・・ (GTX 480 の騒音はホントに大きいです)

この辺りは高性能なビデオカードを使う場合、仕方がない部分でもありますね。


 EPSON Endeavor Pro4700 のパーツ構成 / パーツ選択アドバイス

最後に、EPSON Endeavor Pro4700 で選択出来るパーツの解説と、選択時のアドバイスを行いたいと思います。
購入を考えておられる方は参考にしてみて下さい。

エプソンは自社でパーツの設計や開発を行っており、そのため一般市場のパーツを流用できない部分もあります。
ただ、Endeavor Pro シリーズは「拡張性」が重視されているため、CPU や HDD、ビデオカードなどの基本的なパーツはすべて一般のものを使用可能です。
パーツの選択肢はやや狭めですが、無難で一般的なパーツが選ばれている印象です。

OS (Windows) ・Windows7 の 32bit / 64bit 版を選択可能
※最初に OS を選択し、それに合わせてメモリの選択肢などが変わります。
32bit 版ならメモリ 4GB まで、64bit 版ならメモリ 16GB まで選択可能です。
CPU CPU は Core i7 880 か 870、Core i5 680、Core i3 540 から選択。
選択肢は少なめですが、もっとも一般的で無難と言えるラインナップです。
ビデオカード、グラフィックカード VGA は Radeon HD 4350 / 4650 / 5770 / 5870 が選択可能。
GeForce は 8400GS と GTX 480 のみ。
業務用の Quadro や FirePro もあり。
Memory メモリの種類は PC3-10600(DDR3-1333、昨今の一般的なタイプ)。
デュアルチャネル(2枚組)で使用します。
2GB 〜 16GB を選択可能。
HDD 最大で4台まで搭載可能。 RAID にも対応可。
80GB と 160GB の SSD (Intel X25-M)を搭載可能。
HDD は 250GB〜2TB。(今回使用されていたのは SAMSUNG 製)
電源 エプソン独自設計のものであるため選択は出来ません。
ケーブルの長さや数はケースサイズに合わせて調整されています。
出力は大きめに用意されています。
その他 CD/DVD ドライブはブルーレイに変更可能、2基目を搭載可能。
・地デジチューナーカードの選択が可能です。
サウンドカードの選択はなし。
・取っ手やキャスターなど、独自のオプションパーツあり。

CPU は 代表的なものしか選択出来ない形ですが、パーツに詳しくない初心者の方には、むしろこちらの方が良いと思います。
高価だけど高性能重視なら Core i7 880、一般的な高性能型は Core i7 870、中間型は Core i5、低価格型は Core i3 ですね。

引き出し型の特殊な HDD ベイを持つだけあって、HDD の搭載数については豊富です。
最初から4基も搭載できるパソコンはそうそうありません。
このパソコンは HDD の着脱が非常にラクなので、あとから自分で好みの HDD を買って付けるのも良いですけどね。
SSD も選択可能で、今回の場合 SSD は5インチベイ(CD/DVD ドライブなどを装着する個所)に固定されていました。

ビデオカード(VGA、グラフィックカード)はちょっと変則的です。
エプソンは以前から RADEON シリーズをメインとしていて、GeForce の選択肢は少なめです。
Endeavor Pro シリーズは「一般の高性能型モデル」なので、ゲーム向けの GeForce より、映像向けの RADEON が優先されているのかもしれません。
GeForce もいくつか用意されていますが、安価で低性能な GeForce 8400GS と非常に高価な GeForce GTX 480 のみなので、選択し辛いと言えます。
一般的なのは、やや高めですが RADEON HD 5770 でしょう。
RADEON HD 4650 は最近の 3D グラフィックのゲームをやるのは辛いレベルです。(ファイナルファンタジーXIV は無理、モンスターハンターでギリギリ快適の範囲です)

「ゲームはやらない」という人だと RADEON HD 4650 や 4350 でも良いかもしれませんが、そう言う人だと Pro4700 より、1つ下の MR6700 の方が良い気もしますね。
(MR6700 には引き出し型の HDD ベイはありませんが)

地デジチューナーカードを付けて貰い、地デジのテレビを見れる状態にして送ってもらうことも可能です。
エプソンの地デジチューナーカードは市販品ではなく、自社設計のものだと思われます。
(以前に見たエプソン製の地デジチューナーカードは自社設計のもので、テレビ閲覧用のソフトも独自開発のものでした)
なお、パソコンで地デジ画質でテレビを見るには、ディスプレイ側もそれに対応(HDCP対応)している必要があるので注意して下さい。

電源ユニットもエプソンが自社で設計しているものですが、サイズは一般のもの(ATX規格)と同様のようです。
電源ケーブルの種類と数、長さなどはケースに合わせてカスタマイズされていて、余ったケーブルでケース内が塞がれないようになっています。
市販品の電源ではありませんが、以前に担当者の方にお聞きした時、「電源は高出力品を用意し、生産にあたっても必ず日本製のコンデンサを使うよう厳命しています」と言うお答えを頂きました。 品質に関してはかなり気を使われているようです。
出力も大きめのものが使用されていて、Endeavor Pro4700 で 750W、Pro7000 だと 1000W の電源が使われています。

個人的にオススメの構成は、Windows7 Home Premium 64bit にして CPU は Core i7 870、ビデオカードは RADEON HD 5770、メモリは 8GB、HDD は 1TB という形ですね。
これだと約 18 万円、地デジチューナー搭載にすると約 19 万円です。 性能は何をやる場合でも十分と言えるでしょう。



以上、EPSON Endeavor Pro4700 のレビューでした。

「メーカー品なのに拡張性重視」、「ネジを使わずにパーツ交換」、「前面から内蔵型 HDD をカートリッジで着脱」という、他にはない特徴満載の本体。
使い勝手を重視したエプソンらしい、非常に独特なパソコンです。
このパソコンはどちらかと言うと、「これからパソコンをいじってみたい初心者の方」にオススメと言えるでしょうか。
カートリッジ式の HDD の着脱や簡単に開ける側面パネル、拡張カードの「留め具」が用意された設計は、初心者の方がパソコンの構造を見たり、パーツの交換を試してみるのにはピッタリです。
マニュアルも大きくてしっかりしたものが付いていて、拡張や手入れの仕方も詳しく載っているため、これを見ればあまり悩む事はないでしょう。
基本的なことを説明してくれる「PCお役立ちナビ」や「初期設定ツール」と言った、独自の初心者用ソフトも用意されています。
もちろん、相応にパソコンをいじれる人が使うのにも面白いケースですね。

解説が詳しい日本のメーカー品と、拡張性に勝るパソコンショップのブランドPC、その長所が融合したパソコンと言えます。
エプソンはサポートもしっかりしているので、この点もパソコンに慣れていない方には嬉しいところでしょう。

(販売価格はキャンペーンや時期・構成などで変動します。 下記リンク先で確認して下さい)

EPSON Endeavor Pro4700 エプソン Endeavor Pro4700 (エプソン デスクトップPC)
 ※上記リンクはエプソンのデスクトップ PC のトップページに移動します。

・エプソンのデスクトップパソコンの高性能型です
・CPU に Core i7 800 / Core i5 / Core i3 を使用するモデルです
・エプソンのパソコンはモデルごとにケースが異なります
・HDD 着脱カートリッジ採用、ドライバーを使わないツールフリー構造です

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