○ 実機レビュー (2015年 春、Windows タブレット)
  ドスパラ Diginnos DG-D09IW

2014 年の年末に公開された、ドスパラの Windows タブレット「Diginnos(デジノス) DG-D09IW」を試用する機会があったので、そのレビューをお届けします。

ドスパラ Diginnos DG-D09IWこの製品は、いわゆる「格安 Windows タブレット」です。
2014 年の秋頃、OS(Windows)を販売しているマイクロソフト社が「Windows 8 with Bing」というものを公開しました。
これは「無料の Windows」であり、標準の検索エンジンがマイクロソフト社が運営する「Bing」になっていること以外、普通の Windows 8 と変わりません。

利用率が伸びない Windows 8 と Bing の促進のための方策だと思われますが、これによって数万円していた Windows がタダになりました
それは製品の大幅なコストダウンに繋がります

このため 2014 年の秋から冬にかけて、Windows の廉価型ノートパソコンやタブレットの価格は大幅に下落。
新技術の影響もあり、それまで7万円とか6万円していたタブレットが、5万円や4万円になり、今や3万円や2万円台の製品も増えています。
そのため最近は、「普段は使わないけど旅行・出張用に買っておこう」「スマホのファイル処理に使いたいから購入しておこう」といった、メインとしては使わないけど、あったら便利だから買っておく、といった理由で Windows タブレットを購入される方が増えています。

タブレットでも Windows ですから、キーボードとマウスを接続すれば普通にノートパソコンとして使えますし、最近はモバイル用 CPU の技術革新が早いので、性能もそこまで悪くありません。
以前流行ったネットブックのような「安かろう悪かろう」ではありません。

今回試用した DG-D09IW は価格 27,760 円(税抜)で、価格が2万円台の格安 8.9 インチタブレットです。
果たしてこれでどこまでの事が出来るのか、機能性はどうなのか、検証していきたいと思います。

実機レビュー
















 パソコンの概要

ドスパラが販売している Windows タブレット「DG シリーズ」は、2015年3月時点で計4種類。
OS(Windows)が「Windows 8.1 Pro」になっているモデルも含めると7種類になりますが、この価格のタブレットで Pro 版の Windows が必要になる方は少ないと思います。

ドスパラ Diginnos DG シリーズ価格がなんと1万円台の 18500 円(税抜)で、8インチサイズ、データ容量が 16GB の「DG-D08IWB」。
そのデータ容量が 32 GBになった 23130 円の「DG-D08IWB 32GB」。
さらに 8.9 インチで 27760 円の「DG-D09IW」、10.1 インチで 33320 円の「DG-D10IW2」があります。
今回検証するのは 8.9 インチのモデルになります。

ちなみに8インチだと、iPad mini とほぼ同じで、10 インチだと iPad と同じぐらいになります。
今回の9インチモデルはその中間ですね。 やや小型ですが、小さ過ぎず、持ち運びしやすく、取り回しの良いサイズです。

この価格とサイズでも、立派な Windows 機。
普通の USB と micro USB 端子があり、マウスやキーボード、DVD ドライブなどを有線で接続可能です。
また Bluetooth 4.0 を搭載しているため、無線のキーボード等も使用できます。

ちなみにオプションとして、「Bluetooth キーボード一体型保護ケース」も売られています。
価格は約 5000 円で、これを使えば見た目も小型のノートパソコンと変わりません。

本体のデータ保存容量は 32 GB、実容量 25 GB 程で、パソコンとしては少なめですが、タブレットとしては一般的なサイズ。
また micro SD カードスロットがあるため、SD カードで容量を増やすことも出来ます。
もちろん外付け HDD を接続することも可能です。

無線 LAN は IEEE802.11 b/g/n に対応。 バッテリーはフル充電で公称 6.1 時間持続
本体重量は 480 g で、タブレットとしてはかなり軽量。 iPad Air(初代)と同じぐらいで、初期 iPad より軽いです。
当たり前ですが「タッチパネル」であり、画面を直接触って操作できます。

画面解像度は 1920x1200。 十分な高画質で、正直このレベルのタブレットが2万円台とか、もう驚きでしかありませんね。


今回試用したマシンの構成は以下の通りです。

【 ドスパラ Diginnos(デジノス) DG-D09IW (2015 年春) 】

OS  Windows 8.1 with Bing (32bit)
CPU  Atom Z3735F
(Bay Trail Refresh、1.33GHz〜1.83GHz、4コア/4スレッド)
メモリ  2GB
データ記録量  32GB eMMC(Toshiba 032GE4)
画面  8.9 インチ液晶、解像度 1920x1200、10点マルチタッチ 
通信  IEEE802.11 b/g/n、Bluetooth 4.0 + HS
カメラ  500 万画素、フロントカメラ 200 万画素
構成価格  27,760 円 (2015年3月現在。 税別)

タブレットなのでカスタマイズ可能な部分は、SD カードや専用ケースなど、付属品の有無のみになります。
Microsoft Office はカスタマイズで加えるのではなく、Office 搭載モデルとして別に販売されています。


 タブレットの外観と端子 (DG-D09IW)

外観は全面黒のデザイン。 ただ、背面には少しザラザラのつや消し加工が施されています。
背面中央には「Diginnos」(ドスパラの開発部門の名称)のマークがあり、シックなデザインですね。
背面の左上には 500 万画素のリアカメラが付いています。

ドスパラ Diginnos DG-D09IW 外観
全面はガラスが入っているため光沢があり、角はナナメに面取られています。 フロントカメラもあり。
ドスパラ Diginnos DG-D09IW 裏面
後部にはザラザラの加工とロゴが。 なかなか高級感を感じるデザインですね。

正確なサイズは横 234 mm、縦 156 mm。 厚さは 9.4 mm。 バッグにも入る大きさです。
外枠に付いている Windows マークはボタンになっていて、押すことで Windows 8 のホーム画面に戻ります。

画面のサイズは 横 192 mm、縦 120 mm。 外枠の幅は 17〜20 mm。
この大きさなら電子書籍を読んでも、読み辛さはありません
7インチや8インチのタブレットだと画面が文庫本ぐらいになるので、小さく感じるのは否めませんが、9インチだと一般的な書籍サイズで、小説でもコミックでも不便は感じません。

画面も鮮やかで、解像度が 1920x1200 もあり、それを9インチで表示しているのですからドット細かさは肉眼では解らないレベルです。

タブレットですから、画面は持っている方向に合わせて自動的に回転します。 当然、縦でも横でも使えます
Windows ボタンが下にある状態を基準として、向かって右側面に USB 端子、micro USB 端子、micro SD カードスロット、イヤホンジャック、mini HDMI 端子が付いています。

ドスパラ Diginnos DG-D09IW 側面
右側面。 USB と micro USB の間に HDMI があるため、USB 同士が干渉しにくいのがポイント。
充電もこの micro USB から行います。
ドスパラ Diginnos DG-D09IW 端子部
端子部をナナメから撮影。 全ての端子とボタンが同じ方向に集まっているのが特徴です。

このサイズのタブレットで USB 端子が2つあるのは特筆すべき点でしょう。
USB ハブなしで、micro USB をコンセントに繋げて充電しながら、USB 端子にマウスを繋げて使うことができます。
左側面にはスピーカー以外何もなく、2つの USB が左右に振り分けられていない点もポイントでしょうか。

なお、micro USB を普通の USB に変換するアダプタが標準で付属されています。
この辺はパソコンの周辺機器を売っているドスパラっぽさを感じますね。

下側面(Windows ボタン側)には何もなく、上側面には電源ボタンとボリュームボタンがあります。
欲を言えば画面回転の ON/OFF スイッチが欲しかったところですが、Windows タブレットとして不足している点はありません。

mini HDMI 端子もあるので、ディスプレイやテレビに画面を出力することもでき、タブレットとしては拡張性の高いモデルと言えます。


 性能の検証 (Atom Z3735F、東芝製 SSD)

格安タブレットで気になるのは、やはり性能。
「ここまで安いんだから、処理が重いんじゃないか」という懸念ですね。
ここではベンチマークソフト(性能計測ソフト)で測定した結果を報告します。

まず、今回の検証機のパーツ構成について。

CPUAtom Z3735F。 「Atom」は Intel 社が販売している小型機器用の CPU です。
タブレットに使われることを想定した CPU で、消費電力と発熱の軽減が重視されており、モバイル用(ノート用)やデスクトップ用の CPU より性能は低めです。
しかし小型機器用の CPU としては上位の製品で、さらに Z3735F は Bay Trail Refresh(ベイトレイル リフレッシュ)と呼ばれる、2014 年に公開された最新型です。

細かい性能としては、クロック数は 1.33 GHz で、最大 1.83 GHz で動作。
コアは4つ、ただしハイパースレッディングは使用されておらず、最大4スレッド。 2次キャッシュの容量は 2MB。
Bay Trail Refresh の Atom の中では下位になります。

メモリは 2GB 搭載。 使用されている種類は明記されていませんが、Atom Z3735F で使うメモリは DDR3L-1333 のようです。

データ記録装置は東芝製 32 GB の eMMC
eMMC は USB メモリにも使われている「フラッシュメモリ」を利用したデータ記録装置で、要するに USB メモリの内蔵型のやつです。
SSD よりも遅いのですが、パーツのサイズが小さく、HDD よりは速く、そして何より消費電力が低いです。

では、この構成でどんな測定になったのか、結果は以下の通り。
今回の検証機は一番右で、比較対象として他のタブレットやノートパソコンも併記しています。

東芝
Dynabook R822
富士通
ARROWS Tab WQ1
ドスパラ
Diginnos DG-D09IW
タイプ ウルトラブック Windows タブレット Windows タブレット
時期 2013年 春モデル 2014年 春モデル 2014年 年末モデル
価格 100,000 円 110,000 円 27,760 円
CPU Core i5-3317U
(1.7GHz - 2.6GHz)
(2コア / 4スレッド)
Atom Z3770
(1.46GHz - 2.40GHz)
(4コア / 4スレッド)
Atom Z3735F
(1.33GHz - 1.83GHz)
(4コア / 4スレッド)
メモリ 8GB 4GB 2GB
記録装置 SSD 256 GB SSD 128 GB eMMC 32 GB
画面と解像度 12.5 インチ
解像度 1366 x 768
10.1 インチ
解像度 2560 x 1600
8.9 インチ
解像度 1920 x 1200
PCmark05
CPU 測定 4スレッド
7943 4535 3433
PCmark05
メモリ 測定
8530 3841 3825
CINE BENCH 11.5
CPU 測定 最大スレッド
2.41 1.43 1.07
PCmark05
HDD/SSD 総合測定
41873 10024 11990
PCmark7 Lightweight
軽処理能力総合
2831 1484 1328
PCmark7 Productivity
ファイル/ページ表示
2034 1104 934
PCmark7 Storage Suite
読込/書込速度
5231 3668 3856
グラフィック
3Dmark11
通常画質 P579 P212 P211
グラフィック
3Dmark
Ice Storm -- 13107
(VGA 12111 / CPU 18405)
13142
(VGA 13485 / CPU 12070)
Cloud Gate -- 1239
(VGA 1176 / CPU 1527)
1115
(VGA 1151 / CPU 1007)
モンハンオンライン 大討伐
1280x1024
1895 548 595
ドラゴンクエストX
標準画質
-- -- 1081

※データ記録装置(SSD と eMMC)の測定結果
DG-D09IW と ARROWS TAB の SSD / eMMC 比較

やはり格安タブレットなので、こうしてノートパソコンや上位の高額タブレットと比べてしまうと、測定数値では見劣りします。
ただ、使用感は昨年初頭のタブレットとほとんど変わりません。
さすがに普通のノートパソコンと比べると動作やアプリの起動速度などに遅延がありますが、ウェブサイトを見たり書類 / メールをチェックする程度なら問題はありません。

DG-D09IW に搭載されている CPUAtom Z3735F は、新型とは言え下位製品でクロック数が低いので、1つ前の世代の上位製品 Atom Z3770 と比べると、やはり CPU のスコアは低めになっています。

ただ、SSD より遅いはずの記録装置 eMMC は、今回比較対象とした富士通の SSD 搭載タブレットと比べても、大きな差はありません。 むしろ書き込み速度は上回っています
eMMC も改良が進んでいると言うことでしょうか?
これだとタブレットにおいては「eMMC だから SSD より・・・」みたいなことは考えなくても良さそうですね。

この読み書きの速度でカバーされているためか、PCmark7 で計測した軽作業の処理速度などについては、上位タブレットと比べても大差ない結果になっています。

表の下半分のグラフィック関連のテストは・・・ タブレットであり、3D グラフィックの能力に期待できるようなものではないので、「とりあえず測ってみた」という感じだと思って下さい。
さすがに 3D グラフィックの表示能力は低いと言わざるを得ません。
ただ、タブレット用の測定である 3Dmark の Ice Storm は快適に動作しており、スコアも高いですね。

また、新型 Atom はグラフィック性能が旧型より少し向上しているようで、それは 3Dmark のスコアにも現れています。
公称では、動画再生能力なども新型の方が良くなっているとのこと。

3D グラフィックのゲームは流石にカクカクで、まともにプレイ出来る状態ではありませんでしたが、ドラクエオンラインやモンスターハンターのベンチマークは、一応動作はしていました。

ドスパラ Diginnos DG-D09IW 3Dmark Ice Storm
3Dmark の Ice Storm の測定結果。 ベンチ中の CPU の温度は 60 度から 65 度あたりで推移。
ファンがないので駆動音は一切ありません。 発熱は Atom なのでそれほど高くはないです。
ドスパラ Diginnos DG-D09IW ドラクエXベンチ
ドラクエX の測定結果は、さすがに「重い」。 でも「ゲームプレイは可能」の評価にはなってます。
生産ぐらいなら何とかなる? ちなみに FF14 も測定してみましたが、やっぱりガクガクでした。

最近の Windows タブレットは「艦これ」(艦隊これくしょん)が快適に動くかどうかが、1つの性能の目安になっていたりしますが・・・
試してみたところ、予想外にスムーズに動作しました

艦これは Flash で作成されており、Flash というのものは CPU の処理速度「のみ」が影響します。(PC のグラフィック性能が影響しない)
今回の検証機は CPU の処理性能は低めで、グラフィック性能は新型 Atom になって少しアップしていますが、それは Flash では無関係のはず。
また、以前に富士通のタブレット(Atom Z3770、1.46GHz 〜 2.40GHz)で試した際は、起動時に「実行速度が 遅くなっています」という警告がでて、無視して動かしても動作は「もっさり」でした。
動かないことはないけど、私的にはそれで遊ぼうとは思えなかったレベル。

だから DG-D09IW(Atom Z3735F、1.33GHz 〜 1.83 GHz)では、当然快適に動くはずがないと思っていたのですが・・・
やってみると、警告は出ないし、起動も問題なく、動作も十分に遊べるレベル。 新型の Atom は Flash の動作が改善されているのでしょうか?
ともかく、普通に「艦これタブレット」として使える性能ですね。

ドスパラ Diginnos DG-D09IW 艦これ
艦これは予想以上に動作します。 巷には「艦これタブレット」と言いながら、まともに動かない製品が出回ってますが・・・
これなら艦これタブレットと呼んでも大げさではないと思います。

全体としては、昨年初頭に5〜6万円ぐらいで売られていたタブレットと同等の性能があると思って良さそうです。
つまり、この1年でコストパフォーマンスは2倍になったと言うことですね・・・ 技術の進歩は早いものです。




以上、ドスパラ Diginnos(デジノス) DG-D09IW のレビューでした。

とにかく、コスパフォーマンスの高さがハンパないです。 この Windows タブレットが2万円台とか、どれだけ安くなってるんだと。
iPhone を持っているけどパソコンを手放してしまった友人がいたのですが、たまたま遊びに来たので試用機を見せたら気に入ってしまい、数日後には買っていました。
ノートパソコンやスマートフォンよりも手軽に買える値段で、スマホの「母艦」にするのにも便利です。

容量 32 GB というのがパソコンとして長く使うにはネックになりそうですが、Dropbox などのクラウドストレージを使えば補うことが可能です
まあタブレットですから、外出時やベッドでセカンド PC として使う人の方が多いでしょう。

iPad や Android タブレットも便利なのですが、Windows には PC の周辺機器が使えるなど、Windows 機ならではの利点があります。
安くてもしっかり使える、オススメできるタブレットですね。

(実売価格はキャンペーンや時期・構成などで変動します。 下記メーカーページでご確認下さい)

ドスパラ Diginnos DG-D09IW ドスパラ Windows タブレット「Diginnos DG」シリーズ

上記のリンクはドスパラの Windows タブレットページに移動します。
今回レビューした DG-D09IW は、その中のモデルの1つです。
各モデルの構成は、在庫等により変わる場合があります。
Office 搭載モデルや、キーボード一体型ケースのセットもあります。
OS は 32 bit です。 標準の検索エンジンが Bing ですが、これは後で変更できます。
ページに記載している内容は 2015 年 3 月時点のものです。



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