○ 実機レビュー (2015年 春、スティック型 PC)
  ドスパラ Diginnos Stick DG-STK1

2015 年の春に公開された、ドスパラのスティック型パソコン「Diginnos Stick DG-STK1」を試用する機会があったので、そのレビューをお届けします。

ドスパラ Diginnos Stick DG-STK1この製品は、超々小型のパソコン「スティックPC」の1つです。
スティックPC は 2014 年末から登場した、ポケットに入る、携帯電話よりも小さなサイズのパソコンのことで、それでも立派な Windows 機。
モニターに直接ザクっと刺すか、ケーブルで繋げて使用します。
価格も安く、1万円台から2万円台というお手頃価格で販売されています。

もの珍しさもあって大きな話題になっていますが、個人では用途の難しい品物でもあります。
手軽に持ち歩ける反面、使うにはモニターやキーボード、マウスが別途必要になるため、ノートパソコンのようにどこでも使える訳ではありません。
一般家庭ではテレビに刺して、動画や音楽の再生に使う用途が提唱されています。

実際には、ビジネスの現場で使われている事が多いようです。
オフィスで省スペース PC として活用する方法や、出向先でのプレゼンテーションなど。

そして特に注目されているのが、展示会や店頭でのデモ、及びサイネージとしての利用法。 サイネージとはデジタルの看板や案内板の事です。
特に展示会においては、大きなパソコンを持ち込まなくても、ノートパソコンよりも大きなモニターで簡単にデモムービーなどを流すことができるため、かなり重宝されているようです。

ここではそんなドスパラのスティック型 PC がどんな性質と性能を持つのか、検証していきたいと思います。

実機レビュー
















 パソコンの概要

ドスパラのスティック PC はやや後発で、2015 年の4月に登場しました。
税別で 16649 円、税込み 17980 円。 スティック PC としては安い方ですね。(2万円台のものが多いです)
安くても性能が低い訳ではありません。

ドスパラ Diginnos Stick DG-STK1モニターの HDMI 端子に直接刺して使用し、HDMI 端子があれば、パソコン用のディスプレイはもちろん、家庭用のテレビでも OK です。
付属のコードで繋げることも出来るので、端子の回りにスペースがなくても大丈夫です。

バッテリーは入っていないため、Micro USB 端子を通して有線で給電する必要があります。
キーボードやマウスは USB 端子で直接繋げることも出来ますが、Bluetooth 接続も可能
Wi-Fi も内蔵されているため、無線でネットに繋げることが出来ます。

データ記録量は 32 GB ですが、実質の空き容量は 20 GB
ただ Micro SD カードスロットがあるので、それを使って増やすことも可能です。
もちろん Windows 機なので、外付け HDD も利用できます。

OS は「Windows 8.1 with Bing」の 32 bit 版。 こうした格安 PC ではおなじみのものです。
通常の Windows 8 とほとんど変わりませんが、検索エンジンの初期設定が Bing になっているものです。
(任意に Google や Yahoo に変更可能です)

ハード構成は以下の様になっています。

【 ドスパラ Diginnos Stick DG-STK1 (2015 年春) 】

OS  Windows 8.1 with Bing (32bit)
CPU  Atom Z3735F
 (Bay Trail Refresh、1.33GHz、4コア/4スレッド)
 ※バースト機能は無効化されている。
メモリ  2GB
データ記録量  32GB eMMC(Toshiba 032GE4)
通信  IEEE802.11 b/g/n、Bluetooth 4.0
構成価格  16,649 円 (2015年5月現在。 税別)

この構成は、Windows タブレットとほぼ同等です。
実際、ドスパラの 8.9 インチ Windows タブレット「Diginnos DG-D091W」と変わりません。

ただ、CPU の「バースト機能」(ターボブーストテクノロジー の Atom 版)がオフになっているようです。
この機能は CPU の動作と温度に余裕がある時、CPU のパワーを引き上げるものなのですが、適用されていると高負荷時の発熱がアップします。
超小型で冷却ファン(扇風機)などが入っていないため、発熱は大敵。 よって高温にならないよう機能を切っているようですね。
その分、CPU のパワーは通常よりも少し落ちます。

でも、使用感に大きな差が出るほどの違いではありません。
書類やメールソフトの使用、動画の再生、簡単なブラウザゲームなどは、これでも十分に行えます。


 本体の外観と端子 (DG-STK1)

まずは入っていた外箱の写真から。
iPhone のケースのようなオシャレなものになっていて、小さいながら高級感がありますね

Diginnos Stick DG-STK1 外箱 Diginnos Stick DG-STK1 同梱品
開封の儀。 品の良いケースに入っています。 内封されている物の一覧。 AC アダプタもスマホ風。

同梱されているのは本体と HDMI のケーブル、四角い AC アダプタと給電用の Micro USB コード、さらに Micro USB と普通の USB の変換アダプタ。
Micro USB / USB の変換アダプタが付いているのは助かりますね。

サイズは USB メモリが一回り大きくなったぐらい。 携帯電話よりずっと小さいです
具体的なサイズは、横 109 mm、縦 37 mm、高さは 14 mm。

以下は iPhone(iPhone 6 Plus)と並べてみた写真。 小ささが解ると思います。

Diginnos Stick DG-STK1 スマホとの大きさ比較 Diginnos Stick DG-STK1 スマホとの厚さ比較
iPhone 6 Plus との大きさ比較。
スマホより全然小さい。 手軽に持ち運べますね。
上に乗せてみたところ。 厚さが解ると思います。
一回り大きい USB メモリと言った感じです。

前述したように、取り付けるときはモニターの HDMI 端子に直接ザクッと刺すか、付属の HDMI ケーブルで繋げます。

HDMI 端子はサウンドのデータも送れるため、モニターが音声出力可能なら、別途スピーカーを付ける必要はありません。
取り付けてモニターとスティック PC の電源を入れれば、そのまま Windows が立ち上がるはずです。

以下は取り付けたところの写真。 電源コードも繋げておく必要があります。

Diginnos Stick DG-STK1 HDMIに直接取り付け Diginnos Stick DG-STK1 HDMIにケーブルで取り付け
モニターの裏の HDMI 端子に直接刺したところ。
ファンレスなので駆動音は一切ありません。
付属の HDMI ケーブルで接続したところ。
充電式ではないので電源コードも必要です。

以下は本体を横から見た写真です。
電源ボタン、Micro USB 端子、USB 端子、Micro SD カードスロットなどが並んでいます。

給電用の Micro USB と、普通の Micro USB のポートは別になっています。

Diginnos Stick DG-STK1 右側面
Diginnos Stick DG-STK1 左側面
スティック PC なのに USB 端子が2つあり、Micro SD カードも使えるのは便利。
同梱の変換アダプタを使えば、普通の USB 機器を Micro USB に繋げることも出来ます。

特筆すべきは、こんなに小さなスティック PC であるにも関わらず、両側に USB ポートが1つずつあること。
しかもそのうちの一方は、フルサイズ USB(Micro ではない普通の USB)です。

Windows のスティック PC で USB 端子が2つ(給電用を含めると3つ)あるものは、(2015年5月時点において)この製品しかありません。
2つあれば USB ハブなしでマウスとキーボードを両方使えます。 他社製より利便性で勝っていると言えますね。

ドスパラは Windows タブレット(DG-D091W)でも USB ポートを2つ用意していたので、その辺にはこだわりがあるのかもしれません。

Diginnos Stick DG-STK1 使用中の画像
Micro USB 変換アダプタを使い、本体にマウスを接続。
HDMI ケーブルと給電コードを繋げ、USB ハブを通してキーボードや USB メモリも付けたところ。
こうするとパソコン本体より、付属品の方がスペースを取ってしまうのがちょっと笑えますね。
Bluetooth 内蔵なので、キーボードやマウスはそれを通して接続することも出来ます。


 性能の検証 (Atom Z3735F、東芝製 eMMC)

こんな小さな PC ですから、「処理性能は低いんじゃないか」と心配になりますが・・・
ここではベンチマークソフト(性能計測ソフト)で測定した結果を報告します。

まず、今回の検証機のパーツ構成について。

CPUAtom Z3735F。 「Atom」は Intel 社が販売している小型機器用の CPU です。
消費電力と発熱の軽減が重視されており、ノート用やデスクトップ用の CPU より性能は低めです。
しかし Z3735F は Bay Trail Refresh(ベイトレイル リフレッシュ)と呼ばれる 2014 年に公開された最新型で、一世代前よりかなり強化されています。

細かい性能としては、クロック数は 1.33 GHz、コアは4つ。
ハイパースレッディングは使用されておらず、最大4スレッド。 2次キャッシュの容量は 2MB。

ただ気になるのは前述した通り、余裕がある時に CPU の性能を引き上げる「バースト テクノロジー」が OFF になっていること。
ここが測定時にどう出るか、といったところです。

メモリは 2GB 搭載。 使用されている種類は明記されていませんが、Atom Z3735F で使うメモリは DDR3L-1333 のようです。

データ記録装置は東芝製 32 GB の eMMC
eMMC は USB メモリにも使われている「フラッシュメモリ」を利用したデータ記録装置で、SSD より遅いと言われていますが、パーツサイズが小さく、HDD より速く、そして何より消費電力が低いです。
主にタブレットやスマートフォンで使われている記録装置です。

では、この構成でどんな測定になったのか、結果は以下の通り。 今回の検証機は一番右です。
中央は先日検証したドスパラの Windows タブレット(DG-D091W)で、今回のスティック PC とパーツ構成がほぼ同じです。

東芝
Dynabook R822
ドスパラ
Diginnos DG-D09IW
ドスパラ
Diginnos DG-STK1
タイプ ウルトラブック Windows タブレット Windows スティックPC
時期 2013年 春モデル 2014年 年末モデル 2015年 春モデル
価格 100,000 円 27,760 円 16,649 円
CPU Core i5-3317U
(1.7GHz - 2.6GHz)
(2コア / 4スレッド)
Atom Z3735F
(1.33GHz - 1.83GHz)
(4コア / 4スレッド)
Atom Z3735F
(1.33GHz、バーストなし)
(4コア / 4スレッド)
メモリ 8GB 2GB 2GB
記録装置 SSD 256 GB eMMC 32 GB eMMC 32 GB
PCmark05
CPU 測定 4スレッド
7943 3433 2700
PCmark05
メモリ 測定
8530 3825 2455
CINE BENCH 11.5
CPU 測定 最大スレッド
2.41 1.07 0.91
PCmark05
HDD/SSD 総合測定
41873 11990 15181
PCmark7 Lightweight
軽処理能力総合
2831 1328 --
PCmark7 Productivity
ファイル/ページ表示
2034 934 --
PCmark7 Storage Suite
読込/書込速度
5231 3856 4037
グラフィック
3Dmark11
通常画質 P579 P211 P203
グラフィック
3Dmark
Ice Storm -- 13142
(VGA 13485 / CPU 12070)
13446
(VGA 14267 / CPU 11192)
Cloud Gate -- 1115
(VGA 1151 / CPU 1007)
1100
(VGA 1188 / CPU 875)
モンハンオンライン 大討伐
1280x1024
1895 595 586
ドラゴンクエストX
標準画質
-- 1081 1053

※データ記録装置(SSD と eMMC)の測定結果
DG-D09IW と DG-STK1 の eMMC 比較

やはりノートパソコンと比べてしまうと、測定数値では見劣りします。
しかしウェブサイトを見たり、オフィスなどの書類ソフトを使ったり、メールチェックをする程度なら使用感に大差はありません。

ただ、CPU のスコアはやはり低めになりました
まったく同じ CPU が使われている DG-D09IW と比べても、バースト機能が OFF になっているためか、一回り低くなっています。

Atom のバーストテクノロジーは、一般の CPU の ターボブーストテクノロジー とは違い、CPU に内蔵されている様々な機能をまとめて引き上げます。
それが働いていないためか、メモリ の速度も DG-D09IW より一回り低めになっています。
スティック PC なので、使われているメモリ自体も違うのかもしれません。

一方、予想外に高いスコアを出したのはデータ記録装置の eMMC
DG-D09IW と同じものが使われているにも関わらず、測定数値が大きく異なり、かなり高速化しています
速度を個別に測定した結果(表の下の画像)を見ても、全体的に早くなっているのが解ります。

誤差とは思えない、別物と言って良いぐらいの速度差なので、この半年の間に eMMC の内部ソフトウェアの改良が行われたか、何らかのマイナーチェンジが行われたか、もしくは CPU の速度を補うべく eMMC の速度を高める調整が行われているかだと思います。

結果、PCmark7 で測定した読み込み/書き込みに関する作業の速度は、DG-D09IW を上回っています。
他の作業速度の測定はエラーにより計れなかったのですが、おそらくこの eMMC の速度により、CPU の速度差はある程度補われていると思われます。
(念のため言っておきますが、DG-D09IW の eMMC も遅い訳ではなく、むしろ 2014 年前半のタブレットの SSD に匹敵する速度です)


グラフィック関連のテストは・・・ こんな小さな PC では 3D グラフィックの能力を期待できるはずがないので、参考データだと思って下さい
タブレット用の測定である 3Dmark の Ice Storm では相応のスコアを出していますが、やはり 3D グラフィックの表示性能は低いと言わざるを得ませんね。

また、ファンレス(冷却ファンのない PC)なので、高負荷をかけていると本体の温度がどんどん上がっていきます
ドラゴンクエストX のベンチマークを行った後はかなり熱くなり、測定してみると CPU の温度は 80 度を超えていました。
さすがに心配なので、これで高負荷なゲームをしようとは考えない方が良いでしょう。

本体を金属製にして放熱性を高めているとのことですが、やはりファンがあるタイプよりは熱が逃げにくい印象です。

ドスパラ Diginnos Stick DG-STK1 3Dmark Ice Storm
ドラクエX のベンチをした後に、3Dmark の Ice Storm の測定をした結果。
水色のグラフが温度ですが、ドラクエ終了時点で 80 度を超えていたため、最終的に 85 度ぐらいに。
冷ましてから再測定した時の温度は 50〜55 度だったので、高負荷をかけなければむしろ低めになる模様。
なお、バースト機能が OFF のため、温度が測定数値に影響を与えることはありませんでした。

ただ、Flash で作られたブラウザゲーム(艦これなど)は、それほど負荷がかかった様子もなく、普通にプレイできました
最新の Atom は Flash に強いようで、他のタブレットなどでも快適に動作しています。
本機は CPU の処理速度が抑えられているので若干心配でしたが、杞憂でしたね。

また動画の再生は、Atom の中に動画再生支援機能が盛り込まれているため、快適に行えます。




以上、ドスパラ Diginnos Stick DG-STK1 のレビューでした。

冒頭でも述べましたが、基本的にはスティック PC はビジネス向けだと思います。
少し前に東京でゲームやソフトウェアの展示会があったのですが、そこではもう多くのブースでスティック PC が使われていたそうです
そうした用途の PC として、今後普及していくことになりそうです。

個人で使う場合、まだ「面白グッズ」の域を出ない感もありますが、「格安 PC」という見方も出来ます
学生や新社会人の方が新たに1人暮らしをする時などに、出来るだけ安くパソコンが欲しいという場合、モニター込みで3万円以内で買えるのは魅力です。
すでにモニターがある人や、テレビで代用する場合、1万円台で PC を導入できます。
この値段なら「いつか高性能 PC を買う予定だけど、とりあえずこれで間に合わせる」ということも出来ますね。

他のスティック PC との比較では、やはり USB ポートが2つあるのが大きな長所です。 これで1万円台というのもお得。
とうとうパソコンは、ポケットに入る程に小型化されました。 新しい時代を感じられる製品ですね。

(実売価格はキャンペーンや時期・構成などで変動します。 下記メーカーページでご確認下さい)

ドスパラ Diginnos Stick DG-STK1 ドスパラ スティック型 PC「Diginnos Stick DG-STK1」

パーツ構成はモデルチェンジ等により変わる場合があります。
OS は Windows 8 です。 標準の検索エンジンが Bing ですが、後で変更できます。
ページに記載している内容は 2015 年5月時点のものです。



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