○ 実機レビュー (2013年 夏モデル、超高解像度ウルトラブック)
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パソコンの概要 |
冒頭で述べたように、このパソコンは高解像度の画面を搭載した、東芝の高精細液晶ノートパソコンです。
これまでの東芝のパソコンとは違う、新しいタイプのモデルです。
ウルトラブック(新規格の軽量ノートパソコン)であるため、本体は 1.35 Kg と非常に軽く、厚さも非常に薄いです。
東芝は日本で初めてウルトラブック開発したメーカーであり、この分野については一日の長があります。
本体の設計は流石と言え、非常に携帯しやすいパソコンですね。
V832 の外観。下位モデルの V632 も同じ。 KIRA でノートパソコンだから、 デス○ート・・・ |
Windows 8 搭載機であり、画面はタッチパネルになっています。
ノートパソコンはタッチパネルであることの利点が大きく、マウスを接続せず、タッチパッドを使わなくても、画面を直接触って操作することができます。
CPU にはノート PC 用の Core i7 や Core i5 が使われていて、ウルトラブックとしては最上位クラスの性能を持ちます。
記録装置にも速度に定評のある東芝製の新型 SSD が使われています。
東芝のウルトラブックは総じて性能重視で、そのぶん他社より価格は高めなのですが、処理速度は優れていますね。
なお dynabook KIRA には V832 の他に、解像度が低くてタッチパネルではない下位モデル V632 も存在します。
ただ、超高解像度がこのパソコンのウリなので、それがなくなったら利点や特徴はなくなります。
V632 は「普通のウルトラブック」であり、V832 とは全く性質が異なるものなのでご注意下さい。
このページの解説はあくまで V832 のものです。
店頭販売モデルは SSD(データ記録容量)が 128 GB のみですが、50 GB ほどを Windows や基本システムが使うため、自由に使える容量は
80 GB ほどになります。
少なすぎる訳ではありませんが、画像や写真などの加工をメインとするパソコンとしては、やや心許ないのが本音です。
Web 限定モデルなら 256 GB の SSD が搭載されているので、私的にはこちらの方をオススメします。
CPU も Web 限定モデルは上位型の Core i7 ですが、店頭モデルは中間型の Core i5 で、少し処理速度が落ちます。
ただ、Web 限定モデルは東芝の通販サイト「東芝ダイレクト」で注文しなければ購入できません。
dynabook KIRA V832 の各モデルの価格と基本スペックは以下の様になっています。
【 Dynabook KIRA V832 (個人向けウルトラブック、13.3 型のワイド液晶モデル) 】
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パソコンの外観 (dynabook KIRA V832) |
前述したように外観はかなりシンプルで、あまり装飾はありません。 色はメタリックシルバーのみで、キーボードは黒。
ちょっとオシャレな箱に入っていて、その様子はまさに「東芝の MacBook」といったイメージです。
本体はシルバー、モニター回りとキーは黒のモノトーン。 シックなデザインで、地味といえば地味です。 |
天板もメタリックシルバーで、少し光沢があります。 角が丸くなっている以外はシンプルなデザインですね。 |
他のウルトラブックに付いていた音量ボタンや節電ボタンなどはなく、キーボード以外のボタンはあえて廃されているようです。
キーボードの横に張られているシールも他の機種とは違い、目立たない色になっていて、天板の dynabook のロゴも隅にあります。
東芝のウルトラブックは総じてシックなデザインなのですが、これは特に派手さを抑えたシンプルなデザインですね。
サイズは横幅が 31.6 cm、縦幅は 20.7 cm。 従来の東芝製ウルトラブックより縦幅が 2 cm ほど短くなっています。
これはこの機種の特徴で、A4 サイズの雑誌と縦幅が同じになりました。
バッグなどに一緒に入れてもはみ出なくなっています。
厚さも約 1〜2 cm で非常に薄く、ウルトラブックを知らない方は、持った時の薄さと軽さに驚くこと間違いありません。
ここまで軽くて薄いと耐久性が心配になるのですが、東芝製のウルトラブックは「マグネシウム合金」や「バスタブ構造」「ハニカムリブ構造」といった技術により、非常に耐久性の高いものになっています。
こうした本体の堅牢性については、やはり東芝のような日本の大手メーカーが優れていて、「堅牢性が高い素材と技術がある=薄くて軽く作れる」という事でもあります。(その分、海外メーカー製のものより割高になっていますが)
高解像度であるため映画などを楽しむことも重視しているのか、かなり高性能なスピーカーも搭載されているようです。
スピーカーは底面に配置されていて、机からの反響を利用して音を広げる構造になっています。
キーボードとタッチパッドの周辺。 キーは押した時にポチポチという触感があります。 キー以外のボタンは右上の電源ボタンしかありません。 |
背面の様子。 丸い部分は CPU ファンの通気口です。 通気口は小さく、負荷をかけた時のファンの音は大きめ。 側面にある小さい2つの開口部はスピーカーです。 |
キーボードは東芝の他のウルトラブックと大差ないようです。
やや角張ったキーボードで、キーストローク(キーの深さ)は 1.5 mm。
従来のモデルより少し(0.3 mm)ほど深くなったようですが、まだストロークは浅いと言え、打鍵感はあまり良くありません。
ただ、キーストロークが浅くなるのは本体が薄いウルトラブックの宿命なので、ここは仕方がない部分でもあります。
キーピッチ(キーの幅)は 19mm とノートパソコンとしては大きめで、この点には打ち辛さはありません。
タッチパッドは単なる四角になっていて、ボタンに相当する部分に見た目や色の区別がありません。
シンプルなデザインを優先しているようですが、前述したようにこのパソコンは Windows 8 +タッチパネルを搭載しており、画面を直接触って操作することもできるので、タッチパッドを使わなくてもカーソルは動かせます。
タッチパッドはキー入力の邪魔になるためオフにしている人も多いので、あまり重視していないのかもしれません。
タッチ対応の画面には「対指紋コーティング」が施されており、普通よりも指紋が付きにくくなっているようです。
ただ、使ってみた感じでは、グレア(光沢)液晶であることもあり、指紋は相応に付く印象です。
指紋を拭き取りやすくなっているようですが、やはり汚れは気になるので、できればタッチパネル用のペンなどを使った方が良いでしょうね。
側面や背面から見た様子は以下の通りです。
右側面の様子。 USB 端子が1つとイヤホンジャック、SD カードスロットがあります。 ウルトラブックとしては、がんばって拡張性を高めている印象です。 |
左側面の様子。 左から電源ポート、HDMI 端子、USB 端子2つ。 側面端子の数を確保するためか、他の東芝のウルトラブックより若干厚さがあります。 |
USB 端子は左右合計で3つ。 背面には何もありません。
東芝のウルトラブックは背面に端子があるものもありますが、背面の端子は使い辛さがありました。
dyanbook KIRA はそれを改めていて、端子はすべて側面のみに配置されています。
左右に USB ポートが3つというのは、ウルトラブックとしては多めですね。
ただ問題は、有線 LAN 端子がないこと。
無線環境での使用が前提になっているようですが、状況によっては有線接続ができないと困る場合もあります。
ここは本機の難点と言え、出張先のホテルなどで使う場合は、小型無線ルーターがないと通信できなくなるので注意して下さい。
WiMAX を内蔵していない、D-Sub(古いモニター出力)がない、と言った点も難点と言えそうです。
独自機能の解説/検証 (dynabook KIRA V832) |
dynabook KIRA V832 は 2560×1440 の高解像度がウリですが、ドットが細かいと言うことは、そのままだと表示が全体的に小さくなります。
パソコンで解像度を変えたことがある方ならご承知だと思いますが、解像度が高くなるほど字が小さくなり、見辛くなります。
このため dynabook KIRA V832 には、高解像度でも字を大きく表示するための東芝の独自ソフトウェア(画面設定ユーティリティ)が内蔵されています。
これにより美しく細密な高解像度でも、字は見やすい普通の大きさで表示されるようになっています。
dynabook KIRA V832 の重要なポイント「画面設定ユーティリティ」。 文字の大きさを4段階から設定でき、「詳細設定」にすればさらに細かい文字サイズの調整を行えます。 |
ただ、この東芝独自のソフトウェアによる文字サイズ、及び解像度の調整が、このパソコンの難点にもなっています。
独自のサイズ調整に対応していないソフトウェアを起動した時に、画面のサイズが乱れたり、画像や文字の大きさがまちまちになったりするのです。
当方で調べた時も、いくつかのソフトウェアでウィンドウごとに文字がサイズがバラバラになったり、画面が正常に表示されない場合がありました。
特に解像度を独自に変更するゲームなどの場合、正常に動作しないことがあります。
このパソコンはあまり色々なソフトウェアを動かすのには向いていない印象です。
画像や写真の加工、文書編集などを行う一般的な作業用ソフトウェアを使ったり、映像などを見る分にはあまり問題ないと思いますが、多用なソフトをインストールして使おうとした場合は、ややトラブルが多くなることは承知しておいた方が良いでしょう。
東芝のウルトラブックに備わっている便利な機能は、このパソコンにも搭載されています。
フル HD 画質ではない映像をフル HD 相当で表示する「レゾリューションプラス」、起動時間を高速化する「東芝高速スタート」、省電力機能の「エコモード」などは、このパソコンにも内蔵されています。
ユニークな機能として、パソコンの前に人がいるかどうかを Web カメラで検知し、電源の ON/OFF を行う「Active Display」なども備わっています。
PC の各パーツの状態を検査する「あんしん点検ユーティリティ」、本体温度やファンの回転数をチェックできる「ヘルスモニタ」なども搭載されており、パソコンに詳しい人向けの各種診断ツールも用意されています。
サポートや解説用のソフトウェアも入っていて、この辺は国産メーカーのノート PC の利点と言えますね。
メーカー製のノートパソコンには余計な宣伝ソフトが入っていることも多いのですが、今回はウィルスバスターぐらいしか見当たらず、そうした初期ソフトの数もできるだけ絞っている印象です。
性能の検証 (dynabook KIRA V832、Core i7-3537U、東芝 SSD) |
ここからはベンチマークソフト(パソコンの性能測定ソフト)を使った、性能の検証と報告を行っています。
今回検証している dynabook KIRA V832/W2UHS は Web 限定モデルであり、CPU には上位型の Core i7 が搭載されています。
店頭販売モデルは1ランク下の Core i5 が搭載されていて、つまり Web モデルよりも性能が低めになります。
モデルの違いによって性能に差があることを予めご了承下さい。
さて、では実際に V832(Web 限定モデル)がどのぐらいの処理能力を持っているのか?
以下は性能測定ソフト「PCmark 05」で各パーツの速度を計測した結果です。
以下の表には比較として他の機種の結果も表記していますが、「Dynabook R632」は 2012 年のモデルです。
2013 年のモデルより CPU などが古いのでご注意下さい。 また、R632 には上位モデルと下位モデルがありますが、表のものは下位モデルです。
今回の検証機である V832 は一番右です。
Dynabook Satellite T571 / W4MD (2011年 モデル) |
Dynabook Satellite R632 / W1RF (2012年 モデル) |
Dynabook Satellite V832 / W1RF (2013年 春モデル) |
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タイプ | 17インチ大型ノート | ウルトラブック | ウルトラブック |
CPU | Core i5 2430M (2.4〜3GHz、コア2) |
Core i5 3317U (1.7〜2.6GHz、コア2) |
Core i7 3537U (2.0〜3.1GHz、コア2) |
メモリ | 4GB | DDR3 4GB | DDR3 8GB |
HDD | HDD 500 GB | SSD 256 GB | SSD 256 GB |
測定結果 | |||
CPU スコア | 7161 | 7844 | 9565 |
メモリスコア | 7277 | 9314 | 10246 |
グラフィックスコア | 3949 | 5759 | 2556 |
HDD/SSD スコア | 5128 | 62655 | 50553 |
CPU はさすが最新の Core i7 だけあって、9000 以上のスコアが出ています。
ウルトラブックとしてはもちろん、ノートパソコン全体で見ても最上位クラスの処理能力と言えますね。 CPU 自体の性能は。
メモリのスコアも、CPU が最新だからか 10000 以上になっており、メモリ回りの速度の最適化が進んでいることが見て取れます。
一方、他よりも明らかに低いのはグラフィックスコア。
これは超高解像度であるため、描画処理の負担が大きいためです。
解像度が高いにもかかわらず、グラフィック機能は CPU 内蔵のものなので、ここが足を引っ張っている部分と言えます。
SSD のスコアは、さすが圧巻の 50000 越え。 東芝の SSD の高性能さを表していると言えますが・・・
ただ、昨年の R632 の HDD/SSD スコアよりも下回っているのが気になります・・・
と言う訳で、この部分を HDD や SSD の速度を計る専門ソフト Crystal Diskmark でチェックしてみました。
結果は以下の通りです。
R632 搭載 SSD (東芝 2012年型 SSD) (THNSNS256GMCP) |
V832 搭載 SSD (東芝 2013年型 SSD) (THNSNF256GMCS) |
左半分(Read)は読み込み、右半分(Write)は書き込みの速度です。
上2つは大きなファイルを読み書きした時、下2つは小さなファイルを連続で読み書きした時の速度です。
下から2番目、小さなファイルを読み書きした時の速度は 2012 年型の SSD より明らかに落ちています。
ただ、一番下の「4K QD32」のスコア(NCQ という技術を使って読み書きを高速化した時の速度)は、読み込みにおいては 2013 年型の方が大幅に速いです。
(書き込み速度は落ちています)
これがどういうことなのかの判断は難しいのですが、NCQ 技術を最適化しつつ、SSD の速度自体は落として、実際の使用時における速度をあまり下げずに省電力化を行っているのではないかと思います。
以下はパソコンの用途別の速度を計測するソフト PCmark7 の結果です。
データの読み込みや保存に関する作業の速度(一番上)は、昨年型の R632 とほとんど変わりません。
SSD の速度だけを計測すると前より落ちている部分が見られましたが、やはり実際の用途では、前と変わっていないようですね。
ただし軽作業の処理速度、一般業務関連の処理速度などは、総じて低下しています。
これは性能が低い訳ではなく、前述したように超高解像度であるため、画面の表示や切り替えに関する負荷が高く、それが処理の遅延を招いているためです。
ただ、それでも十分な速度は出ているので、遅いという訳ではないですけどね。(2年前の最上位型ウルトラブックと同等です)
なお、このパソコンはグラフィックの処理速度が弱く、多用なソフトを使うのにも向いていないため、ゲームはダメです。
一応、 3D グラフィックのゲームの実行速度を測るテストも行ってみましたが・・・
V832 / W1RF | |
CPU | Core i7-3537U |
内蔵グラフィック機能 | Intel HD Graphics 4000 |
3Dmark 06 | 4933 |
FFXI ベンチ High 測定 | 4306 |
モンスターハンター | 3300 |
大航海時代 Online | (解像度の問題で起動不可) |
バイオハザード5 | (動かない) |
数値だけではよく解らないと思いますが・・・ 10 年ぐらい前のゲームである FFXI でも高画質にするとコマ送り状態になってしまいます。
モンスターハンターの計測だとそれなりに動いていたのですが、快適にプレイできるかどうかは微妙なレベルですね。
そしていくつかのゲームのベンチマークは、このパソコン独自の拡大機能やサイズ調整機能がうまく働かず、画面が乱れる不具合により動かすことができませんでした。
改めてになりますが、あまりマイナーなソフトを動かすのは止めた方が良いでしょう。
それに放熱があまり良くないパソコンなので、グラフィックを酷使するとファンがすごい音を立て始め、キーボード側にもかなり熱が伝わって来ます。
このパソコンで高負荷のゲームをやるような事は考えない方が無難でしょうね。
ゲームに必要な性能に関しては、3Dグラフィックのゲームをやるためのパソコンアドバイス のページも参考にして下さい。
なお、普段の使用においては、消費電力の低さと SSD のおかげで、ほとんど動作音は聞こえません。
・東芝 dynabook KIRA V832 (Ultrabook) ・Web 販売モデルと一般店頭用モデルは CPU や SSD が異なります。 (Web 販売モデルの方が上位です) ・当ページの検証は WEB モデルの方で行っていますのでご注意下さい。 ・Microsoft Office 搭載モデルと未搭載モデルがあります。 ・dynabook KIRA V632 は通常解像度でタッチパネルのないモデルです。 |
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