CPU の 性能とは

解説文の最終更新 2020年8月

CPU 性能解説 メニュー

CPU ってなに?

CPU とは「セントラル・プロセッシング・ユニット」の略で「中央処理装置」という意味です。
パソコンの中心となり、全体の処理や計算を行う、まさに「頭脳」と言える部分です。
ですからこのパーツの良し悪しが、パソコンの性能に直結すると言っても過言ではありません。

CPU が良いものであるほど、そのコンピュータは複雑で多くの処理を、速く、安定して行えるわけですね。

CPU

CPU は平べったいタイルのような形をしています。
右の画像ものは銀と緑色ですが、種類によっては黒などもあります。

CPU の裏面にはたくさんのツブツブがあります。
CPU をはめるマザーボード(基盤)側にはトゲトゲの突起があって、このトゲトゲとツブツブを合わせてはめ込みます。
(種類によってはトゲトゲが CPU 側にあります)
CPU は非常にデリケートなので、不用意にツブツブや突起に触れたりしてはいけません。

CPU と ファン

通常、CPU の上には「ファン」(CPU クーラー)と呼ばれるものを取り付けます。
これは要するに扇風機で、色や形は様々ですが、黒い物が多いです。
CPU は高い電力を集中して使うため、使用中は高熱を発し、そのままでは焼けてしまいます。
そこでこの CPU ファンで風を送り、冷やしてやるのです。
最近は空冷ではなく、水冷式の CPU クーラーも増えてきました。

この「熱」の問題は、パソコンにとって非常に重要です。

CPU の名前と大雑把な性能

近年の CPU は名前で高性能なタイプか、安いタイプかが解るようになっています。
よく使われている「インテル(Intel)社」の CPU は以下のようになっています。

具体的には、Core i7クロック数が高く、コア数も多く、ハイパースレッディングターボブーストテクノロジーで性能が強化されていて、キャッシュも豊富にあります。
Core i5 の多くはハイパースレッディングがなく、Core i3 はターボブーストがなくてコアも少なめ、といった違いがあるのですが・・・
初心者の方には解り辛いですね。

ですから最初は、Core i7 が高性能、Core i3 は安い、Pentium や Celeron はもっと安い、といった大雑把な見方でも良いでしょう。

CPU は「AMD 社」というメーカーも開発しており、以下のような種類があります。

ただ、AMD 社の CPU は性能を十分に発揮できないケースが多かったため、インテル社のものより普及していません。
初心者の方はあまり気にする必要ありませんが、ややマニア向けですね。

高すぎて一般向けではありませんが、Core i9Ryzen Threadripper といった最上位の CPU もあります。

CPU の性能とは?

パソコンの性能を見る時は、まず CPU の性能が見られます。
そのぐらい重要ですので、CPU 性能の見方はきちんと覚えておきましょう。

クロック数

CPU の名前の後ろに「1.8GHz」とか「2.4GHz」とか書いてある数字の事です。
単純にこの数字が大きいほど、処理が速く、性能が良いと思って構いません。
CPU の性能を、もっとも簡単にチェックできる数値です。

クロック数の単位は、1000MHz(メガヘルツ)以上は 1GHz(ギガヘルツ)になります。
3GHz だと 3000MHz です。
最近は GHz 以上が当たり前なので、MHz の単位はあまり使われません。

少し難しいことを言うと・・・ クロックとは1秒間に信号を送っている回数です。
この信号のタイミングに合わせて、パソコンの内部では電気の波でデータがやり取りされており、そのため単位は周波数を表す「Hz」が使われています。
1GHz なら1秒間に10億個のデータの波が送られています。

現在は「ターボブーストテクノロジー」という機能により、CPU のクロック数が変動するようになっています。
例えば 3GHz の CPU でも、作業が少ない時は 2GHz で動き、逆に忙しい時は 3.6GHz で動いたりします。
よって性能表には「定格 3GHz、最大 3.6GHz」といった感じで、上限性能が併記されるのが一般的です。

コアの数(デュアルコア、クアッドコア)

コア」とは CPU の中心となる部分であり、実際に処理を行うところです。
つまりこのコアが、コンピューターの頭脳と言えますね。

もともとコアは、1つの CPU に1つしかありませんでした。
しかし 2006 年頃から1つの CPU の中に、2つのコアがあるものが登場してきます。
これを「デュアルコア」と呼びます。
2007 年以降はコアが4つある「クアッドコア」も登場。
2017 年以降は6コアや8コアの CPU も一般化しています。

コアが多いと、コンピューターが多くのソフトを同時に動かす時に、複数のコアで作業を分担することが出来ます。
4つのコアがあれば、4つの作業を平行して行える訳ですね。
ハイパースレッディング という機能があれば、さらに倍の作業を実行できます。
ソフト側が対応していれば、1つのソフトを複数のコアで効率的に動かす事もできます。

こうした複数のコアがある事を「マルチコア」と言います。
マルチコアの CPU は性能の表記に「3Ghz x2」や「2.6Ghz x4」など、「x2」「x4」というコアの数を表わす表記が付くことが多いです。

ただ、中心部となる「コア」がたくさんあるのですから・・・
フルパワーで動いたときの消費電力は通常よりも多くなり、発熱も高くなってしまいます。
そのためコアが多い CPU は、コア1つあたりの能力を抑えていることも多いです。

しかし最近は発熱を抑える技術が進歩したため、マルチコアでもコアごとの性能は上がっています。
また、使用状況に合わせてコアの速度を調節する技術(ターボブーストテクノロジー)も登場しており、徐々にコアがたくさんあることのデメリットは解消されつつあります。
最近のウィンドウズ(Windows 7 以降)も、複数のコアでの動作に最適化されています。

性能としては、コアが多い方が高性能だと思っていいでしょう。

なお、6コアには「ヘキサコア」、8コアには「オクタコア」という呼び名がありますが、これらはあまり使われず、普通はそのまま「6コア」「8コア」と呼ばれます。
近年、10コア以上の CPU(メニーコア)が登場していますが、そこまでのコアが必要かどうかは用途によりますね。

CPU の種類(銘柄)

CPU には「Core i7」や「Core i5」、「Celeron」や「Ryzen」など、色々な種類があります。
CPU の種類が違えば、性能や特徴も異なります。
高価で高性能なもの、消費電力が低いもの、性能は低いけど安いものなど、様々です。

CPU は「Intel(インテル)」という会社のものと、「AMD」という会社のものに分けられます。
取付け部の形状や必要な機能が違うため、インテルの CPU を使うパソコンに、AMD の CPU を付けることは出来ません。
もちろんその逆もダメです。

以下で一般的な CPU の種類をご紹介しましょう。

【 Intel(インテル)社の一般的な CPU 】

intel Core 10000番台(Comet Lake)
Intel 社が 2020 年の春に公開した「第10世代 Core」の CPU です。
第10世代の Core には「Ice Lake」と「Comet Lake」の2種類があり、Comet Lake は処理能力を重視したタイプ
多くのコアを持ち(Core i7 なら最大で8コア、Core i5 は6コア、Core i3 は4コア。Core i9 だと10コア)、クロック数キャッシュターボブーストテクノロジーといった基本性能の上限も高くなっています。
そして第9世代で一時的に取り除かれていたハイパースレッディングが復活、Core i5 や Core i3 にも導入されており、コアの多さもあってスレッド数(同時処理数)は大きく増加しました。
ライバルの Ryzen にスレッド数で差を付けられていたため、それに対抗したと言われています。
ただ、旧来の設計を引き継いでおり、製造プロセスも従来と同じ14nmで、新技術の導入は少なく、性能の引き上げに伴って発熱は増加しました。
第8世代の頃に発覚し、第9世代で対策されたセキュリティの問題は、さらに修正が施されています。
当初は Ice Lake はノート用、Comet Lake はデスクトップ用と言われていたのですが、ノートパソコン用の Comet Lake も登場しており、そうした使い分けはされなくなっています。
intel Core 1000番台(Ice Lake)
Intel 社が 2019 年の夏に公開、その年の冬から使われ始めた「第10世代 Core」のノートパソコン用 CPU です。
高めの内蔵グラフィック機能と、AI による動作の最適化機能を持ち、製造プロセスも10nmと従来より上位、消費電力も軽減されている新設計の CPU なのですが…… 新型だけに、まだ本領発揮と言えないところもあります。
ノート用に設計されているためコアは少なめで、Core i7 と Core i5 はどちらも4コア、Core i3 は2コア。
ただ、ハイパースレッディングにより同時処理数はコア数の2倍。i7 と i5 はキャッシュの量で差が付けられています。
大して普及しないうちに Comet Lake のノート用が登場したため、あまり利用されていません。
G7 / G4 / G1 の3種類がありますが、内蔵グラフィック機能の性能を表しています。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(9000番台)
Intel 社が 2018 年 11 月に発売した CPU で「第9世代 Core」や「Coffee Lake Refresh」とも呼ばれます。
デスクトップ用 Core i7 のコアが8つになりましたが、1つのコアで2つの作業を行えるハイパースレッディングが取り除かれたため、8000 型より同時処理数で劣ります。
(デスクトップ用の Core i5 と Core i3 は元からハイパースレッディングがなかったので変化なし)
ただ、2018年の初頭に発見された「Meltdown」(メルトダウン)と呼ばれる CPU の脆弱性(データが盗まれる可能性がある問題)が修正されています。つまりセキュリティ対策版であり、他は第8世代と大差ありません。
この修正の影響で速度(クロック数)が若干下がっていますが、ターボブーストテクノロジーによる速度アップの上限を少し引き上げて、それを補っています。
第8世代と同じく、デスクトップ用は「Coffee Lake-S Refresh」と呼ばれ、ノート用は「H」、薄型ノート向けは「U」、タブレット向けには「Y」が付いています。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(8000番台)
Intel 社が 2017 年 10 月に発売した CPU で「第8世代 Core」や「Coffee Lake」とも呼ばれます。
これまでの一般向けの CPU は最大4コアでしたが、Core i7 に6コアが登場、より多くの同時処理が可能です。
2コアだった Core i3 も4コアになり、代わりに1コアで2つの作業を行うハイパースレッディングはなくなりました。
内部の細かさ(製造プロセス)も向上し、キャッシュ(CPU 内のデータ保存場所)も増えるなど、様々な改良も行われていて、基本設計は第7世代を引き継いでいますが、速度や電力効率が向上しています。
CPU ソケット(取付部)の形状は変わっていませんが、従来のマザーボードでは使用できません。
ライバルの AMD 社が「Ryzen」を公開したため、対抗するために慌てて出した、とも言われています。
この製品から、デスクトップ用は「Coffee Lake-S」、ノート用は「Coffee Lake-H」と呼ばれるようになっています。
薄型ノート向けは「U」、タブレット向けは「Y」です。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(7000番台)
Intel 社の CPU で「第7世代 Core」や「Kaby Lake」とも呼ばれます。
ノートパソコン用は 2016 年の夏に、デスクトップ用は 2017 年の初頭に発売されました。
内部の配線を太くして、消費電力と発熱の軽減を行っています。
ただ、基本設計は 6000 番台(Skylake)と大差なく、マイナーアップデートと言われています。
内蔵のグラフィック機能が少し強化され、特に映像関連の処理が向上しています。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(6000番台)
Intel 社が 2015 年8月に発売した CPU で「第6世代 Core」や「Skylake」と呼ばれます。
処理速度はそれほど大きく向上していませんが、内部の設計が一新され、様々な新技術と、新型のメモリ「DDR4」に対応しました。
新しいデータ記録装置「SSD」への最適化も行われ、消費電力や発熱も軽減しています。
CPU ソケット(取付部)の変更が行われたため、従来のマザーボードでは使用できません。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(5000番台)
Broadwell」や「第5世代 Core」と呼ばれる CPU で、内部の細かさ(製造プロセス)が向上しました。
省電力化と発熱の軽減、内蔵グラフィック機能の強化がメインで、ノートパソコンに向いた性質を持っていました。
そのためモバイル(ノートパソコン)用の方が発売が早く、2015 年1月から出回り始めています。
一方、デスクトップ向けは発売が遅れ、2015 年6月に販売されましたが、8月には新型(第6世代)が登場したため、ほとんど出回っていません。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(4000番台)
Intel 社が 2013 年6月に発売した CPU で「Haswell」や「第4世代 Core」と呼ばれます。
処理性能の向上よりも、消費電力と発熱の更なる軽減と、内蔵グラフィック機能の強化が中心となっています。
そのため当初はノートパソコンや、薄型軽量ノートの「ウルトラブック」に適した CPU と言われていました。
しかしその後、2年以上も主流の CPU を務めたため、デスクトップ用としても広く使われています。
CPU ソケット(取付部)の変更が行われ、従来のマザーボードでは使用できません。
2014 年7月、後期型の「Haswell Refresh」が登場しましたが、中身はほとんど変わっておらず、Refresh の表記を行っていない場合も多いです。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(3000番台)
Intel 社が 2012 年4月に発売した CPU で「Ivy Bridge」や「第3世代 Core」と呼ばれます。
Sandy Bridge(第2世代)と大きく変わっていないのですが、内部の細かさ(製造プロセス)が向上しており、性能が一回り良くなっていて、低負荷時の消費電力と発熱も少なくなっています。
この頃から CPU の改良は、処理速度の向上よりも、電力と発熱の軽減が中心になっていきます。
intel Core i7 / Core i5 / Core i3(2000番台)
Intel 社が 2011 年1月に発売した、近年の CPU の基礎となったモデルです。
Sandy Bridge」や「第2世代 Core」とも呼ばれます。
購入しやすい値段でありながら、用途によっては従来の最上位型よりも高い性能を発揮する、とてもコストパフォーマンスに優れた CPU でした。
さらに消費電力が大きく軽減され、すべての CPU に新型の内蔵グラフィック機能も搭載されています。
この製品の登場以後、長らく CPU 市場は Intel の一強となりました。
intel Core i7(初期型、及び i7 の傾向)
上位型の CPU で、最初の Core i7 は Intel 社が 2008 年11月に発表しました。
「コア」(処理を行う中心部分)が4つある「クアッドコア」の CPU で、多くの作業を同時に行う事ができます。
他のパーツとデータをやり取りする速度(バススピード)も大幅に向上し、新型メモリの性能を引き出す事ができました。
また、コアの動作速度を調節するターボブーストテクノロジーの導入により、発熱や消費電力が軽減され、複数のコアを効率的に使えるようになっています。
1つのコアで2つの作業を行うハイパースレッディングにより、同時に行える作業数も増えました。
当時としては画期的な性能を持っており、以後 Core が CPU の定番となります。
※第8世代以降は6コアや8コアになっています。
intel Core i5(初期型、及び i5 の傾向)
Intel 社が 2009 年10月から発売している中間性能型の CPU です。
コアが4つの CPU で、Core i7 の新技術を応用して作られました。
2010 年にはコアを2つ(デュアルコア)に減らすかわりに、コア1つあたりの性能を上げたタイプも登場しています。
Core i7 との差別化もあり、1つのコアで2つの処理を行うハイパースレッディングは使用されていませんが、そのぶん消費電力と発熱が抑えられています。(ターボブーストはある)
一部の例外を除き、この Core i5 の傾向は、その後もずっと引き継がれています。
※第8世代以降は6コアになっています。
intel Core i3(初期型、及び i3 の傾向)
Intel 社が 2010 年1月から発売している、Core i7 や Core i5 の技術を応用して作られた廉価版 CPU です。
デュアルコア(コアが2つ)ですが、ハイパースレッディング(1つのコアで2つの作業を行う技術)によって、4つの同時作業(4スレッド処理)を行えます。
しかし使用状況に応じてコアの性能を調整するターボブーストテクノロジーは導入されていません。
一部の例外を除き、コアが少なめで、ハイパースレッディングはあるが、ターボブーストはないという傾向は、その後の Core i3 でも引き継がれています。
※第8世代以降は4コアになっています。
intel Celeron
Intel 社の低価格な CPU です。最大の特徴はコストパフォーマンスで、値段が安いのが長所です。
能力は他の CPU に劣りますが、ホームページを見たり、メールや書類の閲覧/作成といった軽作業しか行わないのであれば、そこまで大きな差は出ません。
しかし高負荷な処理や、ソフトの同時使用をする時は、他よりも速度が落ちます。
初心者向けや、低価格優先のパソコンで多用されていて、コアは1つか2つ、内蔵グラフィック機能を持ちます。
ハイパースレッディングやターボブーストテクノロジーは使用されていませんが、発熱や消費電力は低いです。
intel Pentium(現行型)
Intel 社の低価格な CPU です。性能的には Celeron よりも上、Core i3 よりも下になります。
かつて主流だった Pentium という CPU のブランドイメージが強いため、「Pentium Dual-Core」という Pentium と Core が両方が入った名前になりましたが、今は「Pentium」のみになっています。
2011 年以降のモデルには CPU 内蔵グラフィック機能が備わっていますが、Celeron と同じくハイパースレッディングとターボブーストは一部を除き使用されていません。
2017 年、小型機器用 CPU の Atom の名前が「Pentium Silver」になったため、従来型は「Pentium Gold」と呼ばれるようになっています。
※近年は Celeron との差別化のためかハイパースレッディングが備わっています。
intel Core m3
Intel 社の新しいノートパソコン / タブレット用の CPU で、サイズが小さめです。
Core i3 や Pentium、Celeron よりも発熱と消費電力が低く、基本の処理速度(クロック数)は劣るのですが、ハイパースレッディングとターボブーストが両方とも適用されており、それで性能を補っています。
登場は 2015 年で、2017 年頃からタブレット兼用ノート(2in1)で採用されるようになっています。
Coffee Lake 世代(2018年頃)のものは「Amber Lake」とも呼ばれます。

【 AMD 社の一般的な CPU 】

intel Ryzen 9 / Ryzen 7 / Ryzen 5(3000番台)
AMD 社が 2019 年の夏に発売した、Ryzen の第3世代です。
内部の設計の名前が「Zen」から「Zen2」になり、通称は「Matisse」。
内部の細かさ(製造プロセス)がさらに向上し、単一処理(シングルスレッド)と複数同時処理(マルチスレッド)の双方で同世代の Core に勝るとも劣らない性能を見せ、消費電力や発熱も軽減、他のパーツとの相性も改善されています。
インテルの CPU の供給不足もあり、一時は Core シリーズを出荷数で上回りました。
内蔵グラフィック機能はなく、この世代から最上位型の Ryzen Threadripper と Ryzen 7 の間に、新しいグレードの「Ryzen 9」が追加されています。
型番が 3400 と 3200 は、3000 番台ですが第三世代ではなく、第二世代の後期型です。
また、モバイル用は 4000 番台になっていて紛らわしいです。
intel Ryzen 7 / Ryzen 5 / Ryzen 3(2000番台)
AMD 社が 2018 年の4月に発売した、Ryzen の第2世代です。
内部の設計の名前が「Zen」から「Zen+」になり、開発名は「Pinnacle Ridge」で、これが通称になっています。
第一世代と同じく Ryzen 7 は8コア、Ryzen 5 は6コア、Ryzen 3 は4コア。
Ryzen 7 は内蔵グラフィック機能を持ちませんが、Ryzen 5 と Ryzen 3 の後期型にはグラフィック機能があります。
内部の細かさ(製造プロセス)が向上し、処理速度が改善されていて、単一処理(シングルスレッド)でも第8世代 Core に迫る性能を持ちます。ただ、それに伴う発熱の上昇も見られます。
基本設計は第一世代と大差なく、処理速度を向上させたマイナーチェンジと言えますが、コアの速度を調整するプレシジョンブーストが第二世代(Precision Boost 2)になっています。
2019 年に第二世代の Ryzen 5 と Ryzen 3 の後期型、及びモバイル(ノート)用である「Picasso」が登場したのですが、第二世代なのに型番が 3000 番台であるため、わかり辛くて混乱を招いています。
intel Ryzen 7 / Ryzen 5 / Ryzen 3
AMD 社が 2017 年3月から発売している CPU です。
Ryzen 7、Ryzen 5、Ryzen 3 の3種類があり、それぞれ Intel 社の Core i7、Core i5、Core i3 に相当します。
Core シリーズに対抗する性能を持ち、発売当初は Core(第7世代)を越える能力を発揮しました。
Intel 社が対抗して第8世代 Core を出したため、ほぼ互角となり、同世代で比較すると単一処理(シングルスレッド)なら Core が、複数同時処理(マルチスレッド)なら Ryzen が勝ると言われています。
AMD 社は Intel 社に大きな差を付けられていましたが、この製品でようやく(性能的には)追い付くことになりました。

Ryzen 7 は8コア、Ryzen 5 には6コアと4コアの製品があり、Ryzen 3 は4コアと2コアです。
Ryzen 7 と Ryzen 5 は Intel 社のハイパースレッディングに相当する SMT 技術に対応していて、1つのコアで複数の処理を行えますが、Ryzen 3 には適用されていません。
ターボブーストテクノロジーに相当する、コアの速度を調整するプレシジョンブースト(Precision Boost)はすべて対応しています。
内蔵グラフィック機能がないためビデオカードが必須で、消費電力や発熱は Core(第8世代)の方が優れます。
intel A12 / A10 / A8 / A6(AMD Aシリーズ)
AMD 社が 2011 年末から発売している製品です。元々は小型機器用でした。
CPU とグラフィック機能(GPU)を融合しており、AMD はこれを「APU」と呼んでいました。
同時期に Intel 社もグラフィック機能を CPU に内蔵するようになったため、CPU とグラフィック機能の融合は大きなインパクトにならなかったのですが、内蔵グラフィック機能がインテル社のものより良かったため、安価なパソコンやタブレット、ゲーム機などの CPU として使われるようになります。
処理性能は Core i3 / Pentium / Celeron ぐらいで、廉価型の CPU です。
上位型の A10 や A8 には動画を滑らかに表示する「Fluid Motion」と呼ばれる機能が内蔵されています。
SMT技術(ハイパースレッディングに相当)はありませんが、新型ならターボコア(ターボブースト)に対応しています。
intel FX(AMD FX)
AMD 社が 2011 年末、Aシリーズと同時に公開した上位型の製品でした。
FX という名前ですが、解りにくいので一般的に「AMD FX」と呼ばれます。
Phenom の失敗で差を付けられてしまった AMD 社が挽回策として発表した CPU で、世界初の8コア CPU(オクタコア)として注目されました。
しかし6コアはもちろん、4コアの Core i7 や Core i5 に負けてしまう性能で、8コアを生かせるようなソフトウェアも存在せず、初代 Phenom を越える大失敗作と言われるようになってしまいました。
結局、AMD は廉価型の CPU として普及し始めたAシリーズを主力とし、FX は尻すぼみになります。
intel Athlon / Sempron(現行型)
AMD 社の廉価版 CPU で、性能は他の CPU に劣りますが、価格が安いのが大きな特徴です。
Athlon はかつての AMD の主力 CPU の名前で、Aシリーズや Ryzen の下位モデルにその名が残されています。
現在は AMD の Celeron(廉価型)といった位置付けで、2コアでターボコア(ターボブーストに相当)はなし、SMT技術(ハイパースレッディングに相当)には対応しています。
Sempron はかつての最安値 CPU で、こちらもAシリーズの一部に名前が残っています。

【 高級な CPU / サーバー用の CPU 】

intel Core i9 / Extreme Edition
Intel(インテル)社が発売している、最上位型の CPU です。
単体で 10 万円とか 20 万円とかする超高額な製品で、一般的なものではありません。
こうした製品は「フラグシップモデル」と呼ばれ、メーカーの技術アピールや広告塔の側面があります。
新技術実験機の役割もあり、これで得られたデータが一般モデルの開発に役立てられています。
Intel 社のこうした CPU には「Extreme Edition」(EE)の名が付けられていましたが、2017 年から「Core i9」と呼ばれるようになりました。
ただ、Core i9 の一般向けモデルが登場したため、また EE や X が付き始め、今の最上位は「Core i9 XE EE」です。
intel Xeon
Intel 社が販売しているサーバー / ワークステーション用の CPU です。
サーバーとは多くのパソコンが通信を行う際に中心となって処理を行うコンピューターのこと、ワークステーションは業務の中心となるコンピューターで、一般のパソコンよりも高い処理能力が必要とされます。
主に企業で利用されるものであり、一般向けではありませんが、高性能なのでパソコンのマニアだと欲しがる人もいます。
非常に高額ですが、企業向けのサポートを受けられます。
intel Ryzen Threadripper
AMD 社が発売している最上位型の CPU で、つまり「フラグシップモデル」です。
コアの多さをウリにしていて、Intel 社の Core i9 に同時作業数(マルチスレッド)の多さで対抗しています。
やはり技術アピールや先行試作型の側面が強く、コスト度外視の性能を持ち、一般向けの製品の開発前に投入されます。
なお、2019年から AMD の CPU に「Ryzen 9」が追加されていますが、これは Threadripper と Ryzen 7 の中間に位置するグレードで、Intel 社の最上位型である Core i9 とは位置付けが少し異なります。
intel Opteron
こちらは AMD 社が販売しているサーバー / ワークステーション用の CPU です。
やはり企業の大型コンピューター向けのものであり、一般の人が使うものではありません。
コアが数十ある、超マルチコア(メニーコア)な CPU も存在します。

【 小型機器用の CPU 】

intel Atom
Intel 社の小型機器用の CPU です。2008 年の4月から登場しました。
低価格と低消費電力、低発熱を目指して開発されたもので、性能は限られていますが、携帯電話や小型機器の CPU に適しており、タブレットや安価なノートパソコンで使われていました。
しかし 2015 年以降、一般向けの名称が Pentium SilverCeleron J、Celeron N になったため、Atom の名は使われなくなっています。
ただ、これらの製品を「Atom 系 CPU」と呼ぶことはあります。
コアが少なく、ターボブーストはありますが、ハイパースレッディングはありません。
近年、低消費電力を活かした、サーバー向けの業務用バージョンも登場しています。
ARM 系 CPU
ARM という会社が開発した CPU の基本設計(アーキテクチャ)を使い、各メーカーがライセンス生産を行ったものを、まとめて「ARM プロセッサ」と呼びます。
Apple の iPhone や、サムスンの Galaxy などに使われている CPU も、ARM プロセッサの1つです。
ARM 系の CPU は一般販売されておらず、個人で手に入れる事は普通できません。
その設計の特徴は性能よりも、小型化と消費電力の軽減を重視していることで、様々な機器に使用されています。
例えば、スマートフォンやゲーム機、電卓やカーナビ、家電製品などです。
これまではパソコンの CPU とは市場が異なっていたのですが、タブレットやスマートフォンの登場で競合し、ARM も Intel や AMD のライバルになりつつあります。
Tegra シリーズ
ビデオカードのメーカーとして有名な NVIDIA 社が、前述の「ARM アーキテクチャ」と、自社のビデオカード GeForce のグラフィック技術を使って開発した、小型機器用の CPU です。
ARM プロセッサの1つですが、内蔵グラフィック能力に優れるのが特徴です。
メモリやサウンドなども含む、コンピューターの動作に必要なものを1つにまとめた「SoC」(システム・オン・チップ)と呼ばれるタイプの製品で、タブレットやスマートフォン、自動車などで使われています。
ゲーム機の Nintendo Switch も使用機の1つです。

【 昔の CPU 】

intel Pentium II、III(1997年頃)
Intel 社の CPU で、かつて最も普及していた一般的な CPU でした。
その後、後継の Pentium4 にその座を譲っています。
intel Pentium 4(2000年頃)
長年にわたり最も普及していた Intel 社の CPU です。
安定性が高く、余力もあり、トラブルも少ない、使いやすい CPU でした。
intel Pentium M(2003年頃)
ノートパソコン用の Pentium です。
冷却が弱いノートパソコンのために発熱を抑え、バッテリーを長持ちさせるため消費電力も低くしています。
新技術によって処理速度も通常の Pentium より高くなっていました。
intel Pentium D(2005年頃)
コア(処理を行う中心部分)が2つある「デュアルコア」の CPU として、最初に登場したものです。
同時に2つの処理を行う事ができ、動作が効率化されました。
ただ、すぐにデュアルコアの主流は Core 2 Duo に移ったため、短期間で旧式化しています。
intel Core Soro / Duo(2006年頃)
Intel 社のノートパソコン用 CPU で、2006 年に登場しました。
コア1つの Core Soro と、コア2つの Core Duo の2種類がありました。
様々な新技術によって処理速度が向上、消費電力と発熱も低くなっています。
この CPU の技術を応用した新型「Core 2 Duo」がすぐに登場したため、短期間で生産は終了しましたが、その後の CPU の礎になったモデルです。
intel Core 2 Duo(2006年頃)
Intel 社が 2006 年の7月に発表した、かつて主流だった CPU です。
コア(処理を行う中心部分)が2つあるデュアルコアの CPU でした。
処理が速く、消費電力と発熱が低く、価格も一般的という、とても優れた CPU で、広く普及しました。
Core i7 が登場し、Core 2 Quad の値段が下がると旧式化しましたが、その後もノート用として長く使われました。
intel Core 2 Quad(2007年頃)
Intel 社が 2007 年に入って発表した、初めてのクアッドコア(コア4つ)の CPU です。
2009 年の春までは最上位クラスの CPU でしたが、Core i7 の登場によって中間型の性能になりました。
優秀な性能を持ち、長く主力を務めた CPU です。
intel K6、Athlon(1997~2000年頃)
AMD 社の昔の CPU で、K6 が Pentium II、Athlon が Pentium III のライバルでした。
K6-2 は値段が安めで、初期の Celeron のライバルと言えました。
intel Athlon XP(2001年頃)
AMD 社の CPU で、Pentium4 のライバルでした。
高性能な割に値段が安めという、お得な CPU として普及しました。
ただ Pentium 4 の方が安定していたため、この頃からすでに AMD にはマニア向けなイメージがありました。
intel Athlon 64(2004年頃)
Athlon XP の上位版の CPU で、Pentium4 の後期型のライバルでした。
Intel 社の Pentium4 と AMD 社の Athlon XP は激しい開発競争を続けていましたが、常に Pentium4 が一歩リードしていたため、64bit という新システムで設計し直し、巻き返しを図った製品です。
AMD 社の CPU の中では、特に普及していたものの1つです
intel Athlon 64 X2(2005年頃)
デュアルコア(コア2つ)の CPU で、Pentium D のライバルと言えました。
しかし Intel 社が Core 2 Duo を発売してからは性能で見劣りし、価格を安くして対抗しようとしました。
結果的に、コストパフォーマンスで勝負する CPU になっています。
intel Athlon X2(2007年頃)
AMD 社のデュアルコア CPU で、Intel 社の Core 2 Duo に対抗した製品です。
しかし Athlon 64 X2 とあまり変わらず、それほど注目されませんでした。
消費電力が低く価格も安かったため、主に安価なパソコンで使用されました。
intel Phenom / Phenom II(2008 / 2009年頃)
AMD 社のクアッドコア(コア4つ)の CPU で、Intel 社の Core 2 Quad に対抗して開発されたものです。
しかし初期型に欠陥があって性能を発揮できず、史上最大の失敗作と言われました。
のちに改良された Phenom X4 が登場し、ようやく評価されましたが、Core 2 Quad には敵わず苦戦。
そこで 2009 年に Phonom II が開発されますが、今度は Core i7 や Core i5 に敗北。
AMD は FX とAシリーズに移行することになりますが、FX が更なる大失敗で、長い低迷に陥ることになります。
intel Athlon II X2(2009年頃)
AMD 社の廉価型 CPU で、2コアの Phenom II のキャッシュ(CPU 内のデータ保存場所)を減らしたものです。
発熱や消費電力が低く、安価なパソコンをターゲットにしていましたが、A シリーズに移行することになります。

廉価版の CPU(Celeron や Athlon)と、上位の CPU(Core や Ryzen)ではどのぐらい性能が違うかですが・・・
これは用途によります。

ホームページを見たりメールをする程度なら、あまり変わりません。
しかし美しい映像のゲームをやったり、ビデオ編集をするのであれば、高い処理能力がないと動きが遅くなったり、ガクガクしてしまいます。

例えば、もし 3D グラフィックのゲームをやるのであれば、Celeron の 3GHz よりも、Core i5 の 2GHz の方がスムーズで、かつ高速に動くでしょう。
クロック数は CPU の性能の目安になりますが、CPU の種類と世代はそれ以上の影響を持つので注意して下さい。
パソコンをいろんな用途で使いたいのであれば、やはり廉価版の CPU よりも上位型を選びたいですね。

プロセッサナンバー、モデルナンバー

最初に CPU の性能を現す数値として「クロック数」を上げました。
でも現在の CPU は名前にクロック数を表す「MHz」や「GHz」の表記がなく、「Core i7-4770」や「Core i5-7500」といった、4000 や 7000 などの4桁の数字が書かれています。
今の CPU は特殊技術によってクロック数以上の性能を発揮するようになったため、従来のクロック数表示では性能をアピールできないという事で、別の表記になったためです。

この数字をプロセッサナンバーやモデルナンバーと呼び、要するに製品の「型番」です。

「プロセッサナンバー」は Intel 社(Core や Celeron など)での呼称です。
「モデルナンバー」は AMD 社(Ryzen や A10 など)での呼び方です。
どちらも同じものだと思って構いません。

基本的に、ナンバーが高いほど高性能な新しいタイプで、4桁目が「世代」を、3桁目が Core i5 や Core i3 などの「種類」を、2桁目は初期型や後期型などのバージョンを表わします。
例えば、8700 なら第8世代の Core i7、8500 なら第8世代の Core i5、7350 なら第7世代の Core i3 の後期型、といった具合です。
ただし例外も多いので、一概には言えません。

最近の CPU のナンバーの付け方は、各社で以下のようになっています。

Intel 社のプロセッサナンバー
AMD 社のモデルナンバー

同じ CPU でも複数の種類がある場合、通常、2桁目の数字が大きいものが上位です。
Core i3-7300 と Core i3-7320 と Core i3-7350 があった場合、7350 が最上位、7300 は下位となります。
もちろん上位の方が値段は高いです。

サフィックス(型番のアルファベット)

上記の「プロセッサナンバー / モデルナンバー」(型番)には、数字の後にアルファベットが付いている場合があります。
「Core i7-7700K」とか、「Core i5-7200U」と言った具合ですね。

これは CPU の特徴を表わしていて、「K」は CPU の能力を調整でき、さらに上位型であることを表わします。
「U」は消費電力を抑えたもので、ノートパソコン用(モバイル用)の CPU です。

これらは「サフィックス」と呼ばれ、CPU の能力を調べるときの目安になり、以下のようなものがあります。

なお、AMD の最上位型 CPU「Ryzen Threadripper」は、名前が長いのでよく Ryzen TH と略されますが、これはサフィックスではなく単なる略称なのでお間違えないように。

ターボブースト テクノロジー

「コア」がたくさんある CPU は消費電力や発熱が大きくなるため、それぞれのコアの性能を抑える必要がありました。
しかしそれでは、あまり性能アップは望めません。

この問題を解消するため、Intel(インテル)社は「電力や発熱が許す範囲で、よく使っているコアの性能を引き上げる技術」を開発しました。
これが「ターボブースト・テクノロジー」(Turbo Boost Technology)です。

ちょっと難しい話になりますが・・・
CPU のクロック数は、「ベースクロック」と呼ばれる速度を何倍かして、実際に動作するクロック数にしています。
例えばクロック数が 2.66GHz(2660MHz)の CPU があったとして、ベースクロックが 133MHz だった場合、この CPU は 133MHz のベースクロックを 20 倍にして実際の動作クロックにしています。(133×20=2660)

ターボブーストテクノロジーは CPU の温度に余裕がある時に、この「倍率」を引き上げます。
ベースクロック 133MHz の CPU で、倍率を 20 倍から 23 倍にすると、133×23 で 3059、つまり約 3GHz の性能になる訳です。

性能を引き上げると発熱が増すため、CPU が焼け付く危険があるのですが、ターボブーストテクノロジーは CPU の温度をチェックして、安全な範囲でコアの性能を引き上げてくれます。
ただし際限なく引き上げていると危険なため、CPU ごとに引き上げられるクロック数の上限が設けられています。
この上限が、現在は CPU の重要な性能の1つとなっています。

例えば「定格 3GHz、最大 3.6GHz」という CPU があったら、ターボブーストの引き上げ上限は 3.6GHz ということですね。

現在の CPU は、負荷が低いときには能力を抑えて消費電力や発熱を低くしています。
3GHz の CPU でも、2GHz の処理速度で問題ないときは、2GHz の性能で動きます。
(これをアンダークロックと言います)

標準のクロック数が 3GHz でも、負荷が低いときはそれよりゆっくり、負荷が高いときはもっと高速に動くので、ターボブーストテクノロジーのある CPU は、もう「標準のクロック数」(定格クロック)にはあまり意味がないとも言えます。

CPU の性能としては、ターボブーストテクノロジーが導入されていて、最大クロック数(最大倍率)も高い方が、性能が良いと言えますね。
最近は最大倍率をユーザーが設定できる「倍率ロックフリー」と呼ばれる CPU も登場するようになりました。
(倍率を変えて CPU の速度を引き上げることはオーバークロックと呼ばれます。ただし熱対策が必要になるため、素人が手を出すのは危険です)

AMD 社の CPU でも、ほぼ同等の技術である「ターボコア」や「プレシジョンブースト」(Precision Boost)が使われ始めています。
AMD の上位の CPU にはさらに、特定の条件でクロック数をより引き上げる「XFR」という機能が盛り込まれていますが、CPU を強力に冷やしていないと発動しないマニア向けの機能です。

ハイパースレッディング / スレッド

これは CPU(の中にあるコア)がその時に使っていない部分を利用して、もう1つの処理を行うものです。

例えば、何かの作業を CPU(のコア)が行っていて、それがフルパワーを出すほどじゃない簡単な作業だったとします。
この場合、余力がもったいないですね。
この余力を利用して、もう1つ別の作業もやってしまおうというのが「ハイパースレッディング(HT、Hyper Threading)」です。

この技術が導入されていると、1つのコアで最大2つの作業を行う事が出来ます。
よってコアが2つの CPU なら同時に4つの作業が、コアが4つの CPU なら同時に8つの作業が行える訳です。

この同時に行える作業の数を「スレッド」と言い、「最大8スレッドの処理が可能」などと言われます。
CPU の性能表記には「4コア 8スレッド」といった感じで書かれていて、スレッドがコアの2倍ならこの技術が使われているのが解ります。

ただ、ハイパースレッディングがあると、CPU(のコア)が常にフル活用される状態になります。
よって発熱も消費電力も通常より多くなってしまいます。
加えて、2つ目の作業は言わば「余力のある部分で行う追加の作業」ですから、1つ目の作業より処理速度が落ちます。

これらの問題のため、ハイパースレッディングは 2002 年に Pentium4 という CPU で最初に導入されましたが、次のタイプの Core 2 Duo や Core 2 Quad では使用されませんでした。

現在は Core i7 などの上位型 CPU で、改良されたハイパースレッディングが使われています。
しかし Core i7 との差別化のためか、中間型の Core i5 は使われていないものが多く、発熱や消費電力を抑えなければならないノートパソコン用の CPU でも使われていない場合が多いです。
下位型の Core i3 や Core m3 では、低い性能を補うために使われている場合があります。

CPU の性能としては、用途やパソコンのタイプにもよりますが、ハイパースレッディングが使われているものの方が高性能だと思って良いでしょう。

なお、AMD 社の CPU にはハイパースレッディングはありませんでしたが、Intel に遅れること15年、2017年にようやく利用されるようになりました。
AMD での呼称は「同時マルチスレッディング機能」(SMT機能)で、固有の名前は付いていません。

キャッシュ

キャッシュとは、データを一時的に保存しておく場所の事です。
データを一時的に保存しておく場所には他に「メモリ」がありますが、「メモリとやり取りするよりも、CPU 自体に必要なデータを置いてしまえば、もっと高速になるじゃないか」という考えがあって、そのため CPU 内にもデータの保存場所が設けられるようになりました。

キャッシュには「1次キャッシュ(L1キャッシュ)」と「2次キャッシュ(L2キャッシュ)」がありますが、同じようなものだと思って構いません。
最近は3次キャッシュ(L3キャッシュ)のある CPU も一般化しています。

コアが複数の CPU は、コアごとに個別のキャッシュが設けられていたり、逆に共用のキャッシュが用意されていたりします。
例えば、4コアの CPU で L1 キャッシュが「64KB x4」という表記になっていれば、コア1つごとに 64KB の1次キャッシュが用意されていることになります。
また、L3 キャッシュが「6MB」と書かれている場合、x4 の表記がないので、これは共用のキャッシュという事になります。
単位は 1000KB で 1MB になります。

とにかくキャッシュがたくさんあって、サイズも大きいほど、多くのデータを早く出し入れできるので CPU は高速化します。

キャッシュは負荷の大きい作業、例えば画像加工ソフトの使用や、高度なグラフィックのゲーム、動画のエンコード(動画データの変換作業)などの時に大きく影響します。
データを多くやり取りする作業ほど、データを一時的に置いておける場所が大きいことは有利に働きます。
逆に簡単な作業の時は、それほどキャッシュは影響しません。

基本的にキャッシュは、Celeron や Core i3 などの安い CPU は少なく、Core i7 などの上位 CPU は多めです。

FSB / QPI / DMI(データバス / バススピード)

これは現在、あまり気にする必要なくなっているのですが… 参考として表記いたします。

FSB とは「フロント・サイド・バス」の略で、CPU がそれ以外のパーツとデータをやり取りするスピードを表します。
ですので同じクロック数でも、この FSB が高い CPU の方が性能が良くなります。

以前はマザーボード(基板)には「FSB 200MHz までの CPU が動作可能」といった制限がありました。
マザーボードが FSB 533MHz までだと、FSB 800 の CPU を付けても、まったく動いてくれません。

メモリ(というパーツ)にも FSB があって、昔はマザーボードと CPU とメモリの FSB は全部同じにしないといけませんでした。
しかし最近は CPU とメモリの FSB は別になっていて、メモリ側の FSB は「メモリーバス」と呼びます。

最新型の CPU は、FSB の代わりに「QPI」や「DMI」というものが使われています。
QPI(クイック・パス・インターコネクト)は FSB を改良して4倍のデータを送れるようにしたもの、DMI(ダイレクト・メディア・インターフェイス)は CPU とマザーボードの接続をもっと直接的にしてデータを速く送れるようにしたものです。

ただ、この辺は難しい話になりますし、全部同じようなものだという認識で構いません。
どれも「CPU とそれ以外のパーツがデータをやり取りするもの」であることは変わらないからです。
こうした CPU がデータをやり取りするもの(経路)を、最近はひとまとめに「データバス」や「システムバス」と呼び、その速度は「バススピード」と呼ばれることが多いです。

バススピードは単純に、数値が大きいほど高性能と思えばいいでしょう。
(4GT/s や 5GT/s、8GT/s といった数値で表わされます)

ただ、今は使用できる CPU を FSB で判別する必要はないし(後述するソケットが合っていれば使えます)、データバスの種類が増えて複雑化したため、これらが性能表に表記されていることは少ないです。
また、通常の使い方では、昔(FSB 時代)ほど大きな速度差にはなりません。

32bit / 64bit

CPU の特徴としては、もう気にする必要はなくなっているのですが…
OS(Windows)の選択で重要なのが、この 34bit と 64bit です。

CPU には、32bit(ビット)のものと、64bit のものがあります。
64bit の方が新型であり、性能も高いのですが、具体的には次の3つに関係します。
使えるOS(Windows などの種類)、メモリの最大量、記録データの最大量です。

OS(Windows)にも 32bit 版と 64bit 版があって、どちらも 64bit である方が、性能を十分に発揮できます。

もし CPU が 32bit なのに 64bit 版の Windows を使った場合、動いてくれません。
逆に Windows が 32bit 版で、CPU が 64bit の場合、Windows は問題なく動きますが、64bit CPU の性能をフル活用できません。

CPU が 32bit なのか 64bit なのか(もしくは 64bit 動作に対応しているか)は、その種類(銘柄)で決まっており、以下のようになっています。

64bit の CPU

Core i7、Core i5、Core i3、Celeron(現行型)、Pentium(現行型)、Atom、Core 2 Duo、Dore 2 Quad
Ryzen、AMD A シリーズ、AMD FX、Phenom、Phenom II、Athlon(現行型)、Athlon II、Athlon X2
Pentium4 後期型、Celeron D 後期型、Sempron 後期型

32bit の CPU

Pentium II、Pentium III、Pentium M、Celeron(旧型)、Core Solo / Duo、それ以前の旧型
Athlon(初期型)、Athlon XP、Duron
Pentium4 初期型、Celeron D 初期型、Sempron 初期型

要するに、近年の CPU は全部 64bit に対応しています。(2006 年頃が境目です)

64bit の CPU + 64bit 版の Windows を使う最大の利点は、メモリの最大量が増える事です。
32bit 版の Windows だと、メモリの最大量は 4GB(実質 3.12GBまで)です。
どんなにメモリを積んでも、3.12GB 以上は使ってくれません。

しかし 64bit 版の CPU+Windows なら、メモリの最大量は 8GB 以上まで対応可能です。
(Windows Vista だと Home Basic で 8GB、Home Premium で 16GB、Ultimate で 128GB まで対応します)
(Windows 7 は Home Premium で 16GB、Professional と Ultimate で 192GB まで対応可能です)
(Windwos 8 以降はもうメモリの最大量を気にする必要はありません)

仕事でフル活用している人や、ヘビーにゲームをする人、画像や映像の加工ソフトを駆使している人でないと、そこまで大量のメモリは必要ないのですが、最近はメモリ 8GB 以上のパソコンも一般化しています。
その場合は 64bit にしなければなりません。

32bit だとデータの記録量も最大 2TB(2000GB)までなので、HDD(ハードディスク)の大容量化が進んでいる昨今、これも問題になります。

また CPU と Windows の双方が 64bit 版である方が、パソコンの処理能力が向上すると言われています。
(具体的には CPU の計算速度や、メモリのデータ転送速度が 32bit 版より良くなるようです)
よって Windows 7 の登場以後、急速に 64bit 版の普及が始まっています。

今から新しくパソコンを買う人は、64bit の Windows を選びましょう。

ただし古い周辺機器を使っている人は、64bit 版の Windows だと不具合が出たり、動かない可能性があります。
会社に古いコピー機やプリンターがあってそれを使わないといけない、もしくは昔作られたシステムや機器に合わせなければ仕事や発注ができない…
こうした理由で、特に企業ではまだ 32bit の Windows が使われるケースは多いです。

また、64bit 版の方が Windows の動作に必要なデータ量が大きく、メモリが 2~3GB しかない場合は 32bit 版の方が動きが良いため、タブレットではあえて 32bit 版 Windows が選択されていることもあります。

ソケット

これは性能ではないですが・・・
CPU の取り付け口の事を「ソケット」と言い、その形や種類のことです。
これがマザーボード(基盤)と合ってないと、当然付けられません。

LGA1151、LGA1150、Socket AM4、Socket FM2+ など、色々な種類があります。
これは使えない CPU を間違えて取り付けないようにしているためで、当然 Intel 社の CPU と、AMD 社の CPU はソケットの形が異なります。

近年はソケットが合っていれば、その CPU は(一部の例外を除き)そのマザーボードで使えるはずです。
昔はソケットが同じでも、FSB の違いにより使える CPU と使えない CPU があったのですが、今はもう FSB などで使える CPU を判別しなければならないことはありません。
(マザーボードが古い場合、BIOS を更新しなければならないケースはあります)

性能に関わるものではないので、パソコンの自作や CPU の交換を考えている人以外は気にする必要はありません。
ノートパソコンだと CPU の交換はそもそも困難ですし、最近は CPU が世代交代したら、CPU ソケットもすぐ新しくなって、パソコン(マザーボード)自体を買い換えないといけないケースが多いです。
一応、使われているソケットがわかれば、いつ頃のパソコンなのかの「世代」がわかるでしょう。

製造プロセス(プロセスルール)

これは CPU の内部の細かさの事です。
内部が細かいほど、CPU の中にたくさんの回路を詰め込むことができ、電気が通る距離も短くなるので、消費電力や発熱の低減に繋がります。
近年「リソグラフィー」という呼び方もされています。

0.13μm(マイクロメートル)とか、90nm(ナノメートル)とかいう、もはや想像もつかないほどミクロの世界です。
(ちなみに 1nm は 0.000001 ミリです)

製造プロセス(プロセスルール)を新しくするには、工場の生産ラインを新しいものにしなければなりません。
よって簡単に変更はできないのですが、製造工場の改善や技術の改革によって CPU の中身はどんどん細かくなっています。

とにかく数値が小さいほど、新型で高性能だと言えますね。
代表的な CPU とその製造プロセスは以下のようになっています。

※第7世代 Core(Kaby Lake)は改良された 14nm で、Intel は「14nm+」と呼んでいます。
※第8・第9世代 Core と第10世代 Core の "Comet Lake"は 12nm 相当と公称しており、Intel は「14nm++」と呼んでいます。

その他

それ以外に CPU の性能でよく言われている事を説明します。

まずは「コアの名称」。 俗に「石」とも呼ばれます。
CPU の核となる「コア」には、それぞれに名称があります。

初心者の方は気にしなくても構いませんが、最近の CPU は名前の変化が乏しいので、コアを言わないとその CPU がいつ頃のタイプなのか判別し辛かったりします。

例えば Core i7 だけでも、Lynnfield(リンフィールド。初期型下位)、Bloomfield(ブルームフィールド。初期型上位)、Sandy Bridge(サンディブリッジ。第二世代)、Ivy Bridge(アイビーブリッジ。第三世代)、Haswell(ハスウェル。第四世代)、Broadwell(ブロードウェル。第五世代)、Skylake(スカイレイク。第六世代)、Kaby Lake(カービーレイク。第七世代)、Coffee Lake(コーヒーレイク。第八世代)などがあります。

パソコンの上級者は、このコア名で CPU の話をします。
「Core i7 です」だけだと「いつの?」という話になってしまいますが、「Skylake の Core i7 です」と言えば「ああ、2015 年頃のやつね」とわかる訳です。

最近よく注目されているのは「TDP」というもの。
熱設計電力(サーモ・デザイン・パワー)の略で、CPU が発する最大熱量を表しています。

これが高いほど消費電力と発熱が高く、低ければ省エネになります。
特にバッテリーで駆動し、冷却も難しいノートパソコンにとっては重要です。
また、電気を供給する電源ユニットは、必要な電力量に見合ったものを使わなければなりません。
CPU の場合、最大消費電力はその 1.3 倍ほどが目安で、TDP が 100W なら、最大消費電力は 130W 前後になります。

SIMD拡張命令とか、SSE拡張命令など、色々な「拡張命令」が CPU の性能表に記載されている場合もあります。
これは対応しているソフトを使った場合に高速化する技術なのですが、あまり気にする必要はないでしょう。

他にも CPU の負荷に応じて処理能力を下げ(アンダークロック)電力消費を抑える「エンハンスド・スピードステップ(EIST)」や「クールンクワイエット(C'n'Q)」、複数の OS を同時に動かす「バーチャライゼーション・テクノロジー(VT)」、「ウィルス保護機能」などの新技術があります。
今後も様々な技術が登場して CPU の性能を高めていくことでしょう。

でも、初心者の方はここまで気にする必要はありません。
CPU の種類とナンバー、クロック数やコア数で、性能はほぼ解ります。

CPU の取り付け

参考までに、簡単に CPU の取り付けについて説明します。

CPU は「CPUソケット」と呼ばれる、マザーボードにある台座に取りつけられます。
ソケットにはいくつか種類があって、それに合った CPU しか付きません。
もし CPU の交換をする場合は、自分のマザーボードのソケットタイプを調べておく必要があります。

CPUソケットソケットの形状は色々ありますが、画像のものは CPU を固定するフタが付いていて、脇にあるレバーを引いて開くタイプ。
取り外す時は、フタを開けたら CPU を手で取るだけ。

装着するときは、CPU の一部に切り欠きがあるので、それをソケット側の形に合わせて、ゆっくり置きます。
向きが合っていない場合ははまりません。
後はレバーをゆっくり倒してフックに引っかければ、フタが閉まって固定されます。

このように CPU の着脱は簡単なのですが・・・
問題なのが「CPU ファン(CPU クーラー)」です。

CPU ファンは、まず「グリス」と呼ばれる油を CPU の上部に薄く塗ってから、その上に静かに乗せます。
グリスは CPU とファンを密着させるために塗るのですが、最近はファン側にグリスに相当する薬剤が最初から付いているものも多く、その場合は塗る必要はありません。 塗りすぎは逆効果です。

そして取り付けを行うのですが・・・ CPU ファンによって、取り付け方はそれぞれ異なります。
一昔前の CPU ファンは着脱が大変なものが多かったのですが、最近は取り付けしやすいようレバーがついていたり、ネジ止めするタイプが増えていて、前より付けやすくなっています。
特殊な器具ではめ込むものや、専用の金具を使うものもあります。

いずれにせよ、ファンによって付け方・外し方が違うので、説明書で確認しながら行わなければなりません。

例:CPU とファンの取り付け

CPU ファンの付け方・外し方1
向きに注意して CPU を置きます
先に CPU 専用器具を付ける場合も
CPU ファンの付け方・外し方2
必要なら CPU グリスを少量塗ります
そして薄く広げておきます
CPU ファンの付け方・外し方3
CPU クーラーをゆっくり置きます
再設置時は古いグリスは拭き取ります
CPU ファンの付け方・外し方1
付属の純正ファンに多いタイプ
四隅にある突起が固定部分です
CPU ファンの付け方・外し方2
マイナスドライバーを差し、
反時計回りで緩み、時計回りで固定
CPU ファンの付け方・外し方3
これは専用金具を使うタイプ
金具で引っかけて固定します

どの方法を取るにせよ、マザーボードに傷を付けないよう慎重に行いましょう。
邪魔なパーツがある時は外した方が無難ですね。

取りつけたら、CPU ファンについている電源コードを、マザーボードのファン用のコネクタに付けます。
これは CPU ソケットの近くにあるはずで、3~4つのピンが出ているのでそこに刺し込みます。
マザーボード上に小さく「CPUFAN」という字が書いてあるはず。
当然、電源コードがついてないとファンも動かないので注意して下さい。

付けたらパソコンの電源を入れてみて、ファンが回っているか確認しましょう。
もしファンが回っていないと、CPU が焼け付きます!
(通常、安全回路が働いて、許容温度以上になったら勝手に電源が切れます

CPU はパソコンの中心部ですから、うまく付いていなければパソコンは動かないので、パソコンが起動したら、その時点で取り付けは成功ですね。

ただ近年は、CPU を交換する機会は減っています。
技術の革新が早く、新型の CPU を使うには、マザーボードも新しいものにしなければならないからです。
それはつまり、ほぼ「パソコンの買い換え」となります。
昔のように同じマザーボードで、様々な CPU を使えた時代ではなくなりましたね・・・。

実際にパソコンパーツを交換する時は書籍などを見ながら行うのをお勧めします。

CPU ファンと熱について

ここで、CPU ファンと熱について少し説明しておきましょう。

「CPU ファン」は CPU にくっつける扇風機であり、風を送って CPU を冷却するもので、回転数が速いほど冷やす力も高いと考えて構いません。
ただし回転が速いと音がうるさかったりするので注意です。もちろんモノにもよりますが。

ヒートシンクとファンCPU ファンは「ヒートシンク」と「ファン」と呼ばれる部分に分かれています。
「ファン」は扇風機の事ですね。
「ヒートシンク」は鉄の板がたくさん並んでいる部分で、ファンの下にあります。
伝導してきた熱がヒートシンクから放熱され、ファンの風で冷やされる訳です。

CPU ファンは風を送って冷やすものですが、他に水冷式のものもあり、こうした物を含めて CPU を冷やすもの全般を「CPUクーラー」と呼びます。
CPU ファンも CPU クーラーの1つという事ですね。
特殊な状況でない限り、普通はファン(送風式)のもの使うと思って構いません。

CPU は熱に弱く、通常 80℃ を越えると危険と言われています。
この温度はマザーボードによっては測定可能ですが、対応していない場合は解りません。
温度には室温、ケース内の換気、ケース自体の大きさも関係してきます。
もちろん CPU の種類によっても異なります。

普通に使う限りあまり気にする必要はないのですが、熱に弱いことは頭に入れておいて、通気孔を塞ぐとか、暑い中で長時間使うとか、そういう事をすると誤動作の元になることぐらいは覚えておくべきです。
特に夏は注意ですね。

最近は「TDP」という数値が CPU の性能説明に付いている場合もあります。
これは「Thermal Design Power(サーモ・デザイン・パワー)」の略で、直訳すると「熱設計電力」です。
この数値が高いほど熱くなる事を意味するので、CPU ファンを選ぶ際の目安になります。

取り外し方はファンによって異なりますのでご注意を。CPU ファンは扇風機ですから、長期間使っているとホコリが付着していきます。
部屋のクーラーのフィルターがホコリで目詰まりして行くように、ファンの下にあるヒートシンクにもホコリが貯まっていき、それが冷却能力の妨げになっていきます

もし CPU ファンの騒音が大きくなってきたら、それはホコリなどの影響で冷却能力が下がり、それをカバーするために扇風機が必要以上に回っている可能性が高いです。
もちろんそのままでは CPU が焼け付いたり、パソコンが止まる原因になります。

たまには CPU ファンの掃除もしておきましょう。
細いブラシと掃除機を併用すれば、かなり取り除くことができます。
ただし掃除機をぶつけて中のパーツを壊したりしないよう注意して下さい。
静電気にも注意で、最近のパソコンはそこまでヤワではありませんが、静電気の起こりやすい服で掃除をするのは避けた方が無難です。

エアスプレー」を買ってきて、シューっと吹き付けてもかなりのホコリを取ることが出来ます。
最近はホームセンターなどに「パソコンお掃除セット」が売られていたりするので、それを使うのも良いですね。
パソコン掃除用のブラシは 100 円ショップでも見つかります。

CPU ファンはネジを外せば、扇風機の部分だけを取り外すことも出来ます。
丸ごと外すと着脱が大変なのですが、羽を外すだけなら簡単な場合も多いので、出来れば年に1度ぐらいは外して、ヒートシンクに付いたホコリの掃除をしたいところです。


○ おまけコメント(オーバークロック)

CPU の性能を表す「クロック数」は買った時に決まっていますが、これをムリヤリ引き上げる方法があります。
それを「クロックアップ」や「オーバークロック」と言います。

その名の通り、クロック数をアップさせて通常以上の性能を発揮させる事で、よくパソコンの説明にも出てきます。
なぜこんな事が出来るかというと、2GHz の CPU は本当は 2.5GHz で動作する事も可能だったりするのですが、限界ギリギリで動かしていると安定性に問題が出たり、トラブルが発生しやすくなるため、安全のために少しパワーを落として使うようにしているからです。

しかし「本当はもっと高いパワーを出せるのなら、限界まで出してやろう」という考えもある訳で、マシンの性能を追い求める人の中には、クロックアップを積極的にやっている人もいます。
最近はソフトで簡単にクロックアップでき、マザーボードやパーツの中にもクロックアップを考えて作られた製品があったりします。

ですが安全のためにセーブしているパワーを限界まで出す訳ですから、それはメーカー保証外の行動ですし、トラブルも発生しやすく、それで壊れても自分の責任です。
パーツの寿命に影響し、熱対策も強化しなくてはなりません。

いずれにせよコンピューターの知識が豊富で、自分の行動に責任を持てる人だけがやるものであり、良い子は手を出さないようにしましょう。

良い子じゃない人は、インターネットの検索などで「クロックアップ」や「オーバークロック」という言葉を調べてみれば、説明しているページがたくさん見つかります。
ただし試すのは自己責任ですので悪しからず。こちら のレビューで若干解説しています)