○ 実機レビュー (2011年 夏モデル、デスクトップPC)
    HP Pavilion Desktop PC h8-1080jp

日本 HP (ヒューレット・パッカード)様より、やや小型のサイズでありながら高い性能を持つ夏モデルのパソコン「h8-1080jp」の貸出をして頂きました。

HP Pavilion Desktop PC h8-1080jpHP(ヒューレット・パッカード)の昨年のパソコンは処理能力が高い一方で、グラフィック性能はやや低めなものが多く、どちらかと言うと一般ビジネス向けのパソコンが中心となっていました。
しかし 2011 年の夏モデルからは性能の高い「ビデオカード」を搭載することも可能になり、グラフィック機能が向上、3D グラフィックを使用するゲームや設計の分野でも活用できるものになっています

今回お借りした「h8」というモデルは中間サイズのパソコンで、一般的なパソコンメーカーのデスクトップ PC より一回り小さいモデルです。
しかしかなり高性能なパーツを搭載することが可能で、これは自社でケース開発をしており、パーツのサイズに合わせた本体を独自に作っている HP の利点と言えます。
なお、HP はアメリカを本社とするメーカーですが日本国内のものは全て東京で組み立てられています。

「第二世代 Core i」と呼ばれる最新型の CPU と、新型のビデオカードを搭載するこのパソコンが実際にどのぐらいの性能を持つのか? 今回はその辺りを中心に検証しています。
また、今回お借りしたモデルには SSD (新型の高速データ記録装置)が搭載されていたため、その速度もチェックしています。

※最初に検証した実機はビデオカード(グラフィック性能)が GeForce GTX 550Ti という中間クラスのものでした。
しかし後日、現在最高クラスのビデオカード
GeForce GTX 580 を搭載したモデルを検証する機会を頂きました。
そこでページには、この
GeForce GTX580 の検証結果も追記しています。
また
消費電力や動作音についても詳しく測定しましたので、その結果も追記しています。


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 パソコンの概要

HP Pavilion Desktop PC h8-1080jpHP のパソコンは 2011 年の夏モデルから、性能が大きく変わりました。
理由の1つは CPU が新型の「第二世代 Core i」(Core i 2000 シリーズ、Sandy Bridge)になったことで、これにより処理速度が以前より向上しています
ただ第二世代 Core i の CPU は他社も使い始めているため、HP だけの特徴という訳ではありません。

もう1つの理由は「電源ユニット」の出力が向上したためです。
電源ユニットはパソコンが使う電気を送るためのパーツですが、2010 年度の HP のパソコンはこの部分の出力がやや低く、そのため電気を多く使う高性能なビデオカード(グラフィックカード)搭載出来ない難点がありました。
(HP の電源ユニットは市販品を使わず、自社でカスタマイズしたものを使用しているため、高品質ではあるのですが、モデルチェンジに時間がかかるようです)
よって昨年のモデルは「高性能型のデスクトップパソコン」としてはグラフィックの性能が劣り、ゲームや設計などに使うにはやや不利で、グラフィックが弱くても問題ないビジネス向けのパソコンだと言えました。

しかし 2011 年の夏から上位モデルの電源ユニットの出力がアップし(460W → 600W)、これにより高性能なビデオカードも使えるようになって、パーツ構成の幅が広がっています
BTO (受注発注。 ユーザーでパーツを選択して注文できる方式)のため、実際にどのような構成にするかはユーザー次第ですが、もうビジネスでもゲームでも、どの分野でも十分な性能のパソコンにすることが可能です。

なお、h8 シリーズには h8-1060jph8-1090jp というタイプもありますが、1060jp は AMD という会社の CPU (Phenom II)を使ったモデルで、価格は安めですがマニア向けです。 パソコンに詳しくない方にはお勧めできません。
h8-1090jp は上位の CPU (Core i7 960/970/990 EX)を使うモデルですが、これは1世代前のタイプとなります。

今回お借りした「h8-1080jp」のパーツ構成は、ゲーム向けのカスタマイズと言える以下の様な構成でした。

OS Windows 7 Home Premium 64bit 版
CPU Core i7-2600
(第2世代 Core i 、3.4 GHz(最大 3.8 GHz)、4コア/8スレッド)
メモリ DDR3 PC-10600 (1333MHz) 8GB
ビデオカード GeForce GTX 550Ti (VRAM 1GB) と
GeForce GTX 580
HDD SSD 160 GB (Intel X25-M) +
HDD 1TB (Seagate Barracuda、7200 RPM、キャッシュ 32MB)
マザーボード Pegatron 2AB5 (H67 チップセット)
電源ユニット HP オリジナル (DELTA 製、600 W)

価格としては GeForce GTX 550Ti 搭載で税込み約 17 万円の、かなり高価な構成です。
GeForce GTX 580 搭載だと約 20 万円になります。
ただ、これは価格が高い SSD が搭載されているためというのもあります。

SSD をなしで GeForce GTX 550Ti にすると、価格は約 14 万円になります。 ただ、詳しくは後述しますが・・・ 最新の SSD はマジで速かったです。

なお、地デジのテレビを視聴出来る「ダブル地デジモデル」も用意されています。
この場合、価格は 15000 円ほど高くなります。

今回は上記の構成で検証を行っています。


実機レビュー






























 パソコンの外観

HP のパソコンの大きな特徴は、その外見・サイズ・内部構造です。
まずは外観から解説しましょう。

最初に述べたように HP は自社でケースの設計開発を行っていて、一般規格(ATX規格)のパソコンではありますが、他社の同タイプのパソコンより一回り小さい本体を作り上げています。
これは市販のケースにパーツを組み込んでいる一般のパソコンショップのモデルとは異なる点で、大手企業である HP ならではの特徴と言えます。

本体のサイズは幅が 17.5 cm、高さが 41.5 cm、奥行きは約 41 cm です。
一般的なデスクトップパソコンは幅 20〜23 cm、高さが 40〜45 cm、奥行きは 45〜50 cmなので、スリムタイプという訳ではありませんが、全体的に一回り小型なのが解りますね。
重量も軽めで置きやすいサイズだと言えます。

HP h8-1080jp 外観 HP h8-1080jp 前面パネル

形状はほぼ真四角で凹凸の少ないシンプルなデザインなのですが、前面にはピアノブラックの光沢処理が施されており、高級感のある本体となっています。
また、電源を入れると前面中央に赤いラインが灯り、控えめなライトアップも行われます。

前面下部のパネルは下にスライドすることができ、その中には SD カードなどを入れられる各種のメディアスロットと、USB 端子が4つ用意されています。

ケースのもっとも大きな特徴は天井部分でしょう。
上部前面が少し膨らんでいて、そこにヘッドホンとマイクの端子、そして USB のポートが2つ並んでいます。
この端子は後ろ向きに付いているため、前からだとやや差し込み辛いのですが、天井部がやや凹んでいて、物を置いても落ちにくくなっています
そのため後ろ向きの端子と落ちにくい形状を利用して、天井部に USB ハブやイヤホン、スマートフォンのスタンドなどを設置しやすくなっています。

また、天井部の2つの USB 端子は「USB 3.0」です。
これは従来の USB (USB 2.0)よりも高速で、対応した機種を繋げればより速くデータのやり取りを行う事が出来ます。
端子の横に USB マークと「SS」と書いてありますが、これは「Super Speed USB」という意味で USB 3.0 の通称です。

HP h8-1080jp 天井部分 HP h8-1080jp with iPhone スタンド HP h8-1080jp 側面
USB3.0 は端子が青くなっています。
天井は凹んでいて物を乗せやすい構造。
端子が後ろ向きなので着脱し辛いですが
付けっぱなしにしておくのには便利。
側面には外周にも吸気口が。
底面の前部にも吸気口があります。

一方、背面部の端子の数は少なめで、インターネットの LAN ポートと、USB (2.0)が4つ。 あとはスピーカーなどを繋げるオーディオ端子のみです
ビデオカメラなどに使う IEEE 1394 や、外付けハードディスクに使う eSATA などの端子はありません。
USB 3.0 が普及したため eSATA はもはや用済みになりつつあり、IEEE 1394 が使われているビデオカメラも少なくなっています。
これらの端子がなくなるのも、時代の流れと言えそうですね。

側面には開口部がかなり多いです。
左右の両面に2つの開口部があり、さらに外周付近にも小さな開口部が並べられています
本体が小さいと内部が密集し、エアフロー(通気性・冷却性)は確保しにくくなるので、少しでも空気を取り入れられるよう多めの開口部が用意されているのだと思われます。


 パソコンの内部構造

続いて本体の内部構造について。 内部構造が特徴的なのも HP のパソコンの特徴です
ただ、この部分はパソコンに詳しい人でないと解らない部分でもありますので、初心者の方は読み飛ばして下さい。

内部の様子は以下の通りです。

HP h8-1080jp 内部 HP h8-1080jp 内部のアップ
コードは上部にまとめられ、下部はスペースが空いています。
これで HDD と CPU のエアフローを確保しているようです。
拡張カードを付ける PCI Express スロットの周辺は窮屈。
メモリスロットのツメを開く時にビデオカードが邪魔に。

HP のデスクトップパソコンはマザーボードが上下逆に取り付けられています
よって通常は CPU やメモリが上部にあるのですが、HP のパソコンは CPU が下に配置されています。
この方が省スペースでもエアフロー(通気性)を効率化できるとのことで、この形式は数年前から続いています。
マザーボードが逆向きのため、側面パネルも通常の左側ではなく右側が開きます。

また、このモデルでは中央にビデオカードを固定するバーが設置されていました。
これは今までの HP のパソコンにはなかったもので、大型のビデオカードを設置できるように、新たに追加されたもののようですね。

正直、この内部設計は拡張性が高いとは言えません
HDD が上向きに付けられていて、コードを上部にまとめやすくなっていますが、着脱/交換するには HDD が入っているケースをまるごと取り外さないと困難です。
またビデオカードとメモリスロットの止め具が干渉していて、メモリの着脱をするにはビデオカードを外さないといけません。(メモリの止め具を開けない)
拡張カードを取り付ける PCI-Express x1 スロットは2つ空いていますが、1つはビデオカードの排気の問題で使用しない方が良く、また内部が密集しているため、大きなカードを付けるのは難しいです。

ただ、パーツの追加や交換を考えるのは、パソコンの中級者以上の方でしょう。
大半の方は自分で内部のパーツを追加/交換することは考えていないと思いますので、そうした方には本体がコンパクトな方が利点があると言えます。
もちろん「拡張できない」という訳ではなく、ノートパソコンやスリムタイプのパソコンよりは拡張性はありますが、全体的に拡張性(パーツの着脱しやすさ)よりも、サイズとエアフロー(通気性)の確保を優先した設計になっている印象です。


 動作音と消費電力の検証

性能の測定・検証の際に気付いたのですが、このパソコンは高負荷をかけても動作音がかなり静かです

通常、パソコンの性能測定を行っている時は冷却用のファンが高速で回り、その騒音がうるさくなります。
高性能なパーツほど発熱や消費電力が高くなりますが、熱はパソコンにとって大敵なので、そのぶんファンの回転を早めて冷やさなければならないからです。
しかし h8-1080jp はその性能の高さの割にはファンの音があまり大きくなりません。

この点について HP に問い合わせてみたところ、以下の様な回答を頂きました。

「HPのハイエンドマシンで使用されるグラフィックスのほとんどは、一般に市販されているグラフィックスカードとは別のHPオリジナルのカードを使用しています。
(いわゆるOEMベンダー用(一般流通はしないグラフィックカード)です)
HPオリジナルのグラフィックスカードを使用し、その内部的な設定により、高負荷時もいわゆるファンが「うなる」状況を回避させ、PCが持つ総合的な冷却性能を MicroATX 筺体の中で効率化しています」

どうやら HP が独自に調整したビデオカードによって高負荷時の発熱とファンの高回転を抑えているため、動作音が静かなようです。


そこで実際にどのぐらいの騒音レベルなのか、騒音測定器で計ってみました。
測定に使用した h8-1080jp の構成は CPU が Core i7-2600、ビデオカードは GeForce GTX580 という最高性能のものです。

結果はアイドル時(通常運転時)で 40 db 前後、ベンチマーク中(高負荷での性能測定中)で 41〜43 db 前後となりました。
測定している部屋の平常時の騒音レベルは 35db です。

通常のパソコンの騒音レベルは 50db 〜 55db 、最高クラスの性能のパソコンならもっと大きくなります。
(実際、私が普段使っているパソコンの騒音は 60 db 前後です)
しかしこの h8-1080jp は「最高性能の構成で高負荷で動かしていても」 45 db を越えません
これは特筆すべき静音性と言えます。


また消費電力も測定してみたところ、アイドル時(通常運転時)で 80W〜85W 前後、ベンチマーク中(高負荷での性能測定中)で 230W〜300W、最高で 320W となりました。
これもこのクラスの性能のパソコンとしては非常に低く、例えば3年ほど前のパソコン(Core 2 Duo 後期型と GeForce 9600)で消費電力はアイドル時で 140W、負荷時は 200W〜250W 前後です。
2年ほど前の高性能型のパソコン(Core 2 Quad と GeForce GTX280)だと消費電力はアイドル時で 150 W、負荷時で 300 W前後です。

今回検証したパソコンはそれらよりも大幅に高い性能を持つにも関わらず、消費電力は低めで、特にアイドル時の消費電力は従来の半分近くになっています
アイドル時の消費電力が低いのは新型の CPU の影響で、ピーク時の消費電力が抑えられているのは調整された GeForce GTX 580 が影響しているものと思われます。
消費電力が低ければ発熱も低いので、ファンもあまり高回転にならず、動作音も少なくなります。

この辺りはカタログスペックに現れにくい点ですが、実際の利用時には気になる部分なので、こうした点で優れているのは注目だと言えますね

(ちなみに私が普段使っているパソコンは Core i7 950 と GeForce GTX 295 という高電力な構成なので、アイドル時で 200 W、ピーク時では 400 W を越えます。 この測定結果を見るとちょっと泣けます・・・)


 性能の検証(Core i7-2600、GeForce GTX 550Ti、GeForce GTX 580、SSD Intel X25-M)

ここからは性能の検証・解説を行いたいと思います。

HP h8-1080jp は俗に「第二世代 Core i」や「Sandy Bridge」(サンディ ブリッジ)と呼ばれる新型 CPU を使用できるモデルで、Core i5 という中間価格のものと、Core i7 という上位型のもののどちらかを選択出来ます。
メモリは 4GB 〜 16GB まで搭載可能、グラフィック能力を高める「ビデオカード」(グラフィックカード)も低価格の GeForce GT 530 から最上位型の GeForce GTX 580 まで、幅広く選択することが出来ます。
ただしもちろん、性能の良いものほど価格も高くなります。

このパソコンで選べるパーツの価格と性能の目安は以下の通りです。

CPU
Core i5-2400
第二世代 Core i の中間型の CPU 。 コアは4つ、CPU クロックは 3.1 GHz、最大で 3.4GHz。 価格は 17000 円前後。
Core i5-2405s
Core i5-2400 の消費電力を軽減した新型。 コアは4つ。 CPU クロックは 2.5 GHz だが最大で 3.3GHz まで上昇。 価格は 22000 円前後。
消費電力と発熱が低い。 さらに内蔵グラフィック機能の性能も向上している。(でもビデオカードを別に付けるなら意味はない)
Core i7-2600
第二世代 Core i の上位型 CPU 。 コアは4つだが、8つの処理を同時に可能。 CPU クロックは 3.4 GHz、最大で 3.8 GHz。 価格は 30000 円前後。
上位型の CPU としては現在もっとも人気があるタイプ。

VGA (ビデオカード、グラフィックカード) 】
インテル HD グラフィックス(CPU内蔵)
ビデオカードなし。 だから価格はタダ。 性能値 1500〜3000 で、CPU により変わる。
GeForce GT 420
一般販売のない業者向け。 性能値 8000。 HP では現在、在庫を無料で付けてくれる。
GeForce GT 530
一般販売がある中では一番下のモデル。 性能値 9000。 価格は約 8400 円。
GeForce GT 440
中間型のモデル。 性能値は 10000〜12000。 価格は約 10500 円。
電源の出力が低いパソコンの場合、この辺りのクラスまでしか使用できない。
Radeon HD 6850
安価ながら高性能な製品。 平面画像のスクロールが遅いなどの欠点があるが、モニターを3つ接続できる特徴も。
3D の性能値は 18000。 価格は 17850 円。 どちらかと言うとゲームなどより映像向け。
GeForce GTX 460
中の上と言えるモデル。 人気の製品。 性能値は 18000。 価格は 23100 円。
この辺りの性能なら最新の 3D グラフィックのゲームも快適に動作する。 h8-1080jp では VRAM が 1GB と 2GB の2種類がある。
GeForce GTX 550Ti
中クラスの新型ビデオカード。 性能値は 17000。 価格は 23100 円。
今回の検証機に搭載されていたものの1つです。
GeForce GTX 580
現在最高クラスのビデオカード。 性能値は 22000。 価格は 56700 円。
今回の検証機に搭載されていたものの1つです。
※「性能値」は、3D グラフィック測定ソフト 3Dmark 06 でのスコアを目安にしたものです。
※価格は HP での 2011年7月 現在のものです。

注文時にどういうパーツ構成にしたかで性能と価格は全く違ってくる訳ですが、今回の検証機には CPU は Core i7-2600 という上位型が使われていました。
ビデオカードは GeForce GTX 550Ti という中クラスのものと、GeForce GTX 580 という最高クラスのものの2つで測定を行っています。
以下の検証結果はこの構成で行っていますのでご了承下さい。

では、実際にどの程度の処理能力を持っているのか? 以下はパソコンの性能を測定するソフト PCmark 05 で調べた結果です。
比較対象として他のパソコンの性能も掲載しています。

ツクモ G-GEAR GA7J-B23
2010年 夏モデル
ドスパラ Galleria XG
2010年 夏モデル
G-Tune NEXTGEAR i800SA6
2010年 秋モデル
HP Pavilion h8-1080jp
2011年 夏モデル
CPU Core i5 760
(2.8GHz、コア4つ)
Core i7 860
(2.8GHz、コア4つ)
Core i7 970
(3.2GHz、コア6つ)
Core i7-2600
(3.4GHz、コア4つ)
メモリ DDR3 4GB DDR3 4GB DDR3 12GB DDR3 12GB
VGA GeForce GTS 250 GeForce GTX 480 GeForce GTX 470 GeForce GT 550Ti
ツクモ G-GEAR GA7J-B23/S ドスパラ Galleria XG G-Tune NEXTGEAR i800SA6 HP Pavilion h8-1080jp

CPU の性能値(CPU Score)に注目です。
なんと Core i7-2600 は高価格の上位型の CPU 「Core i7 970」 よりも高いスコアを出しています。
Core i7 970 は5万円もする CPU ですから、それを2万円以下の Core i7-2600 が上回ると言うのは、いかに第二世代 Core i (Sandy Bridge)のコストパフォーマンスが高いかを示していると言えますね。

ただこの結果は、この測定が Core i7-2600 に有利な状態で行われているから、と言うのもあります。
上記の測定は最大4つの処理を行って計測していますが、Core i7 970 という CPU は 12 の処理を同時に行える CPU なので、4つ以下しか同時処理をしない場合はその真価を発揮できません。

以下はその CPU で行える最大処理数で計測を行う CINEBENCH(R11.5) というソフトで測定した結果です。

Core i7 970 3.2GHz x 6 (12) 8.24
Core i7-2600 3.4GHz x 4 (8) 6.80
Core i7 960 3.2GHz x 4 (8) 5.48
Core i7 870 2.9GHz x 4 (8) 5.49
Core i5-2400 3.1GHz x 4 5.09
Core i5 760 2.8GHz x 4 3.71
Core 2 Quad Q9650 3.0GHz x 4 3.65
※ x2 や x4 はコア数、(4)や(8)は同時に可能な処理数です。

この結果では Core i7 970 の方が上ですね。
しかしそれでも上位型の Core i7 960 より、Core i7-2600 の方が上回っています。 やはりここでも Core i7-2600 のコストパフォーマンスの高さが伺えます。
ちなみに h8-1080jp で使えるもう1つの CPU 「Core i5-2400」も、Core i5 なのに Core i7 の1つ前のタイプに匹敵するスコアを出しています

実際の使用時の速度は用途によって異なりますが、前述した PCmark 05 の結果と、上記の CINEBENCH の結果の中間ぐらいだと思えば良いでしょう。
いずれにせよ、Core i7-2600 の性能の高さ、コストパフォーマンスの良さが解りますね。


また、PCmark 05 による測定の HDD Score (HDD の速度)が圧倒的に高い点も注目です。
これは SSD と呼ばれる新型のデータ記録装置が使われているからで、実際に使っていてもデータの読み込みが非常に早いのを体感できました。

以下は HDD / SSD の速度を調べる「CrystalDiskMark」というソフトで測定した、HDD / SSD の速度です。

HP Pavilion h8-1080jp SSD / HDD

今回検証したパソコンには SSD と HDD が双方搭載されていたので、それを個別に計測した結果です。
全体的に SSD の方が早く、特に「ランダムアクセス」(細かいファイルを次々と読み書きする速度)では圧倒的な速度差が出ています。
このランダムアクセスが Windows の起動や普段のパソコンの使用時などにもっとも影響する部分なので、これが SSD の体感できるほどの速さに繋がっています。

実は最初、このパソコンに SSD が搭載されているのを知らなかったので、Windows があまりにも速く立ち上がって「え? なにコレ?」となりました。
計ってみたところ、スイッチを入れて Windows のロゴが出るまで約 10 秒、そこから「ようこそ」が表示されるまで約 10 秒、約 20 秒後にはデスクトップが表示されます
これはまだパソコンに入っているソフトウェアが少ないからと言うのもあるのですが、それでもかなりの速度ですね。
Windows 7 は SSD を効率よく使えるシステムが導入されているため、その影響もあるのだと思われます。

ただ SSD は価格が非常に高く、容量も少なめです
HP は注文時に SSD を安く追加することが出来るのですが(HP と Intel に企業提携があるためか、市場価格4万円前後の SSD 160 GB を3万円ほどで追加できます)、それでも 160 GB で3万円ですから、かなり高額と言えます。
最近の HDD は 1TB(1000GB)でも1万円しませんから、ここは予算がないと辛い部分ですね。

SSD を使う場合は、このパソコンのように Windows を入れて使う SSD と、データを保存するための HDD を双方搭載し、併用するのが一般的です。


続いてグラフィックの性能
具体的には、「3D グラフィックを使うゲームやソフトを動かした時に、どれだけ快適に動くか」を調べたものです。
こちらも比較対象として他のパソコンを併記しています。

今回検証している HP h8-1080jp は右の2つで、右から2番目が GeForce GTX 550Ti を使ったもの、一番右が GeForce GTX 580 を使ったものです。

HP Pavilion h8-1080jp ベンチマーク表

※3D mark 06 は世界標準と言える 3D グラフィック性能の測定ソフトです。 3D Mark Vantage も世界標準ですがブレが大きいので参考程度にして下さい。
大航海時代 Online は 2D(平面)グラフィックの描画速度もスコアに影響する特徴があります。
目安として、大航海時代 Online は 300 以上、FFXI は 4000 以上、モンスターハンターは 3500 以上、バイオハザード5は 60 以上で快適です。
FFXIV は 1500 以上が最低限のラインで、2500 以上で標準動作、4500 以上で快適動作です。

グラフィックの性能はビデオカード(グラフィックカード)でほぼ決まり、CPU の性能が補助的に影響します。

今回の検証機に搭載されているものの1つ GeForce GTX 550Ti は2011年の3月に発表された製品で、GeForce GTS 250GTS 450 と言った中クラスの製品の後継にあたるものですが、その特徴が見て取れる計測結果となりました。
世界標準と言える 3Dmark 06 の測定結果は GeForce GTS 250 以上で、GeForce GTX 460 よりやや下という、カタログスペック通りの結果です。

一方、GeForce GTX 580 は現在最高クラスの新型ビデオカードです。
値段も非常に高いのですが、その性能は表の数値を見ても圧倒的ですね。

ソフトごとに見てみると、CPU のパワーや平面グラフィックの処理能力が影響する「大航海時代 Online」では、どちらも非常に高いスコアが出ています。
これはビデオカードの性能もさることながら、CPU の Core i7-2600 のパワーが発揮されているのだと思われます。

一方、モンスターハンターや FFXI と言ったやや古いグラフィック技術を使うソフトでは、ビデオカードの性能が直接影響するためか、GeForce GTX 550Ti だと上位型のビデオカードよりは下のスコアになっています。
つまり GeForce GTX 550Ti は、あくまで上位型ではなく「中クラスのビデオカード」だと言えますね。

HP Pavilion h8-1080jp FFIVX ベンチしかし新しいグラフィックの技術を使う FFXIV の測定においては、旧型の GeForce 200 シリーズに大きな差を付け、上位型の GeForce GTX 460 に近いスコアを出しています。
これはつまり、中クラスのビデオカードだけど「新型」なので、新技術に対応したソフトを動かす場合は高い性能を発揮できる、ということだと言えそうです。

GeForce GTX 580 は、さすが現在最高のビデオカードだけあって非常に高い数値です。
負荷が低い「大航海時代 Online」や「FFXI」だと中クラスのビデオカードと大差ありませんが、モンスターハンターや FFXIV などの負荷が高い最新のゲームではスコア差が圧倒的で、特にモンスターハンターの 26200 というスコアには驚きました。
2万を超えたパソコンを今まで見たことがなかったのですが、2万6千に達するとは・・・
FFXIV も高負荷の測定でも快適に動いていて、もう流石としか言いようがないですね。

実用的には、GeForce GTX 550Ti でもハイスペックが必要になる FFXIV で「快適動作」に近いスコアを出しているため、現存するほとんどのゲームやソフトウェアを不自由なく動かせます。
もちろん GeForce GTX 580 の方がさらに快適ですが、こちらは値段が2万円以上も高くなるので、予算や用途次第でしょう。
とにかく h8-1080jp は下位から上位まで豊富なビデオカードを選べるので、ユーザーの好みの構成にすることが出来ますね。

ゲームの動作に関して詳しく知りたい方は、3D グラフィックのゲームをやるためのパソコンアドバイス のページもご覧下さい。



以上、HP Pavilion Desktop PC h8-1080jp のレビューでした。

日本 HP さんは 2008 年からゲーム向け・個人向けの高性能モデルの販売を開始しました。
そしてその当時としては最先端の CPU とビデオカードを搭載し、高性能パソコンとして遜色ない、私的にもオススメできるモデルの販売を行われていました。
しかしコンピューターの技術の進歩は早く、2009 年の後半には更に高性能なパーツが登場し、HP のパソコンの電源出力ではそれらを搭載出来なくなり始めます。
そのため 2010 年の HP の上位モデルは、CPU は最先端だけどビデオカードは中クラスまでというアンバランスな構成となり、私も「上位型はビジネス向け」「HP でお勧めなのはスリムタイプ」という扱い方をしていました。

しかし 2011 年の夏モデルで電源の出力が向上、再び上位のビデオカードを搭載出来るようになり、またビジネスでもゲームでも、どんな用途でもオススメできるパソコンとして紹介できる性能になりました
特に HP は性能の割に本体が小さめなのが利点なので、大型の物より、やや小型の h8 の方が私的にもオススメできます。

拡張性はお世辞にも高いとは言えないので、自分で内部パーツの交換を行う上級者の方には勧められませんが、大手メーカーだけあって品質やサポート、周辺機器などが充実していて静音性も高いため、特に初心者の方に向いていると言えますね。

(販売価格はキャンペーンや時期・構成などで変動しますので、HP のページでご確認下さい)

HP Pavilion Desktop PC h8-1080jp 日本HP Pavilion Desktop PC シリーズ
※すでに後継モデルが登場しているため、リンクは HP Pavilion シリーズのトップページに移動します。

・1080jp は第二世代 Core i(Sandy Bridge)の CPU を使うモデルです
・メモリは 4GB〜16GB、HDD は2台搭載可能、SSD も選択可能です
・地デジチューナーが欲しい場合「ダブル地デジモデル」にする必要があります
・地デジやブルーレイを選択する場合、モニターも対応のものが必要です
 詳しくは HDCP 対応 をご覧下さい。(なお HP のモニターは対応品です)
・新型 CPU の欠陥問題は修正されています

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