○ 実機レビュー (2014年 春モデル、デスクトップPC)
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パソコンの概要 |
HP(ヒューレット・パッカード)のデスクトップパソコンは、一般型の Pavilion(パビリオン)、スリム型の Slimline(スリムライン)、上位型の ENVY(エンヴィ)、ゲーミング水冷モデルの Phoenix(フェニックス)の4つのブランドに分かれています。
今回取り上げるモデルは上位型の ENVY(エンヴィ)です。
Pavilion(パビリオン)と ENVY(エンヴィ)の違いはケースにあります。
ENVY の方が一回り大きく、デザインが凝っていて、天井をスマホやヘッドホンなどの周辺機器置き場に使えるなど、外観と利便性を追求した設計になっています。
サイズが一回り大きいため ENVY の方が搭載できるパーツも多く、前述したように ビデオカードの GeForce GTX 760 を搭載できるのですが、CPU
は Pavilion でも Core i7 を搭載できるので、今回の検証機のように GeForce GT 640 を選んだ場合(もしくはビデオカードをなしにした場合)は、パーツ構成的には
Pavilion と変わりません。
最上位のゲーミングモデル Phoenix は GeForce GTX 770 を搭載できますが、サイズはさらに一回り大きくなります。
と言っても HP はパーツのサイズに合わせたスリムなケースを作っているため、同クラスの他社の製品と比べると幅と高さは
アメリカが本社のメーカーですが、実は HP のパソコンはサイズ的に日本向きです。
今回試用したモデルの構成は、CPU に「第4世代 Core プロセッサ」と呼ばれる新型 Core i7 の上位型 Core i7-4770 を搭載し、ビデオカードには価格の安いモデルの GeForce GT 640 が使われていました。
さらに新型の高速データ記録装置である「SSD」が搭載されています。
一応ビデオカードを積んでいるので、ゲーム用途もある程度考えられている構成と言えますが、どちらかと言うと一般用途での処理速度を重視した構成ですね。
具体的には、以下の様になっていました。
【 HP ENVY 700-260jp 】
OS | Windows 8.1 64bit |
CPU | Core i7-4770 (Haswell、3.4GHz〜3.9GHz、4コア/8スレッド) |
メモリ | DDR3 PC-12800 (1600MHz) 16GB |
HDD / SSD | SSD 128GB (サムスン製 840 PRO、MZ7PD128HAFV) + HDD 2GB (シーゲイト製 Barracuda 7200、ST2000DM001) |
グラフィックカード | GeForce GT 640 |
電源ユニット | 460W 電源 (DELTA 製、HP オリジナル) |
マザーボード | Z87 チップセット |
構成価格 | 139,650 円 (2013年2月現在。 税込み、送料別、モニタ別) |
CPU は Core i5-4570 と Core i7-4770 のモデルがあります。
それ以外のパーツは注文時のカスタマイズ(BTO)で変更可能で、HDD / SSD は合計3台まで搭載できます。
モニター(ディスプレイ)は別ですが、一緒に注文することも可能で、HP はモニターの最大手メーカーでもあります。
コストパフォーマンスに優れた製品が多いので、それを合わせて注文できるのは利点とも言えますね。
テレビチューナーを搭載することも可能です。
なお、やや専門的な話になりますが、マザーボードのチップセットが「Z87」なので、SSD と HDD を連動させて HDD の速度を少し高める「SRT」という技術に対応しています。
今回の構成は SSD と HDD を併用していますが、これはこのマザーボードの機能を活かせる構成です。
SSD は高価なので、そこが価格を跳ね上げていますが・・・
同じ構成でビデオカードを GeForce GTX 760 にした場合、価格は 158,550 円になります。
一番安い構成を選んで、カスタマイズで CPU を Core i7-4770 にして、メモリを 8GB に、SSD はやめて HDD の 2GB
にして、ビデオカードに GeForce GTX 760 を選ぶと、価格は 125,580 円になります。 私的にオススメなのは、この構成ですね。
余裕があるなら SSD は搭載したいところではありますが。
パソコンの外観 (HP ENVY 700) |
ここではパソコンの外観と中身をチェックしてみたいと思います。
まずは外側の様子。
前面パネルには光沢があります。 デザインも重視しているのが HP の特徴。 カードリーダーと USB は内部に格納。 |
前面パネルを下にスライドしたところ。 USB の配置はやや密集しています。 イヤホンジャックは天井部に。 |
背面部の様子。 内部が通常の上下逆になっているため コネクタ類は右下にあるので注意。 |
光沢のあるピアノブラックの前面パネルに白い縁取りが付いた、高級感のあるデザインです。
オシャレな外観で、これが ENVY の長所の1つと言えますね。
サイズは高さが 41.5 cm、幅は 17.5 cm、奥行きは約 41 cm。
前述したように同クラスの一般的な PC ケースよりも、一回り小さめになっています。
デザインを優先しているためか、前面には通気口がなく、前面パネルの左右にあるすき間から空気を取り込むようになっています。
前面パネルを下にスライドさせると中央が空き、そこにカードリーダーと USB が配置されています。
しかしマイクやイヤホンのコネクタはそこにはなく、USB 端子もこれがメインではありません。
メインとなるコネクタはどこにあるかというと・・・ なんと天井に、後ろ向きに付いています。
天井部の前面。 電源ボタンもここにあります。 画像では解りにくいのですが、天井は中央が凹んでいて ここに物を載せられる設計です。 |
このパソコンの大きな特徴である天井部コネクタ。 USB 3.0(青い USB)が2つと、イヤホン&マイク。 付けっぱなしにする機器の接続に向いていますね。 |
天井の前部には膨らみがあり、そこに後ろ向きに USB 3.0(高速USB)とイヤホン、マイクのコネクタが付いています。
どうしてこういう設計になっているかと言うと、このパソコンは天井を周辺機器を置くためのスペースと考えていて、そこにスマートフォンのドックや USB ハブ、ヘッドフォンなどを置いた時、端子が後方を向いていた方が自然であるためです。
また上に置いたものが落ちにくいよう、天井は中央が少し凹んでいます。
このような設計のため、このパソコンは床置きか、上部が広く空いている場所で使う方が良いでしょう。
天井に付いているコネクタは前からだと使いにくいので(上からのぞき込まないといけない)、コンセプトを理解した上で活用する設計だと言えます。
内部の様子は以下の様になっています。
ケース内部の全景。 マザーボードが上下逆向き。 このため側面パネルは左ではなく、右側が開きます。 CD/DVDと電源が両方上にあり、下を空けているのが特徴。 |
HDD ベイの周辺。 側面からナナメ向きに収納する形です。 HDD や SSD の着脱はやりやすいようになってますね。 コードは上部で結束し、下部の通気を確保しています。 |
まず大きな特徴として、HP のデスクトップパソコンはマザーボードが上下逆に付いています。
ですから CPU が下の方にあり、電源ボックスは上部に配置されています。
これはこの形の方が冷却効率が良いためだそうで、HP のケースは少し小型のため、CPU を下にして電源ボックスを上に置いた方が、CPU 周辺のスペースを確保できるためだと思われます。
この構造はエアフロー(通気性)と小型化を両立させるためなのでしょうね。
HDD や SSD は側面から差し込む形になっています。 この方が着脱が簡単なので、最近のケースの流行りです。
本体が小さめなので密集している感はありますが、メモリや HDD などの着脱は容易に行えそうです。
拡張スロット(PCI-Express x1 スロット)は一応2つ空いていますが、この密集具合とビデオカードの冷却を考えると1つしか使えないと思った方が良いでしょう。
そのうちの1つもテレビチューナーカードを搭載した場合はなくなります。
ちなみにこのテレビチューナーカードは HP でカスタマイズした製品のようで、サイズが小さく、邪魔にならずに取り付けられるようです。
性能の検証 (Core i7-4770、GeForce GT 640) |
ここからはベンチマークソフト(性能測定ソフト)を使った、性能の検証結果を報告します。
今回の検証機の CPU は Core i7-4770。 Haswell(ハスウェル)と呼ばれる 2013 年型の CPU です。
クロック数は 3.4GHz〜3.9GHz で、4コア8スレッドで動作。
現行の(一般的な価格の)最高クラスの CPU と言えますね。
メモリは 16 GB という大容量が積まれていて、現在の標準的な PC3-12800(DDR3-1600)というタイプ。
データ記録装置は HDD と SSD の併用で、OS(Windows)が高速な SSD 側にインストールされているため、起動速度が速いです。
サムスンの 840 PRO という製品が使われており、SSD としては定番かつ評判の良い製品ですね。
では、この構成でどのぐらいの速度が出るのか・・・
以下は性能測定ソフト「PCmark 05」で各パーツの速度を計測した結果です。
今回の検証機は一番右で、比較対象として他のパソコンも併記しています。
マウス G-Tune NEXTGEAR-MICRO im520 |
HP Pavilion h8-1080jp |
グッドウィル REGALIA Enforcer-i7k |
HP ENVY 700-260jp |
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時期 | 2013年 夏モデル | 2011年 夏モデル | 2013年 春モデル | 2014年 春モデル |
価格 | 69,930 円 | 170,000 円 | 174,900 円 | 139,650 円 |
CPU | Core i3-3240 (3.4GHz、2コア) |
Core i7-2600 (3.4GHz、4コア) |
Core i7-3770K (3.5GHz、4コア) |
Core i7-4770 (3.4GHz、4コア) |
メモリ | DDR3-1600 8GB | DDR3-1333 12GB | DDR3-1600 16GB | DDR3-1600 16GB |
VGA | GeForce GTX 650 | GeForce GT 550Ti | GeForce GTX 680 | GeForce GT 640 |
記録 | HDD | SSD (Intel X25-M) | HDD | SSD (SM840 PRO) |
結果 | ||||
CPU | 10753 | 12727 | 14312 | 14955 |
メモリ | 7700 | 10935 | 14958 | 13090 |
グラフィック | -- | 17450 | 35314 | 4563 |
HDD/SSD | 7156 | 29870 | 9123 | 60624 |
(CINE) | (3.32) | (6.80) | (7.50) | (8.04) |
CPU の速度は 2012 年型(Ivy-Bridge、第3世代 Core)の Core i7-3770K よりも一回り高いですね。
Haswell (2013 年発売の第4世代 Core プロセッサ)は消費電力と発熱の軽減、内蔵グラフィック機能の強化が中心ですが、スコアに現れるぐらいの処理能力の向上も行われているのが見て取れます。
メモリの速度は、2013 年の他社製モデルより少し低いのが気になります。
十分な速度は出ているのですが、誤差と言うにはちょっとスコア差が大きいので・・・ マザーボードの影響かも知れません。
でも2年前のモデルと比べると大きく向上していますし、高速と言って良いスコアです。
この速度の向上も、新型 CPU の恩恵(CPU のメモリコントローラーの改善)だと思われます。
そして SSD のスコアは、もう圧倒的です。 さすがは一般流通の製品で現在最速と言われている「840 PRO」。
なんとスコア 60000 越え! 2年ほど前の定番 SSD 「Intel X25-M」 の2倍以上!
HDD や SSD の速度を計る CrystalDiskMark で計測した結果は以下の様になりました。
今回の検証機に搭載されていたものは一番右です。
2011年型 SSD Intel X25-M |
東芝 2013年型 SSD (THNSNF256GMCS) |
本機搭載 SSD (Samsung 840 PRO) |
一部の速度(大ファイルの書き込み速度)で 2013 年型の東芝の SSD に劣っていますが、それ以外の部分では 840 PRO が上位です。
もはや 2011 年に定番だった Intel X25-M は話になりません。
特に「ランダムアクセス」と呼ばれる下二段の測定結果で、他より大きく勝っています。
実際の使用時に大きく影響するのはこの部分なので、ここが高速なのが 840 PRO の評判が良い理由です。
こうして実際に測定すると、それを実感することができますね。
まあ SSD はかなり高額で、128 GB の SSD 搭載で 15000 円ほど高くなります。(でもこれでも数年前よりかなり安くなりました)
安く抑えたい方や、そこまで速度にこだわらない方は HDD でもいいでしょう。
ただ CPU が昨今の Core i7 クラスになると、HDD ではそこが処理速度のボトルネック(足かせ)になってしまいます。
出来れば上位の CPU を使うのなら、SSD も搭載しておきたいところですね。
一方、グラフィック性能は・・・ 今回の検証機はビデオカードが下位モデルの「GeForce GT 640」であるため、スコアは低めです。
一応、各ゲームのベンチマーク(動作速度測定)をしてみましたが・・・ 以下のような結果になりました。
一番右が今回の検証機です。
GeForce GTX 650 搭載機 |
GeForce GTX 680 搭載機 |
HP ENVY 700-260jp GeForce GT 640 |
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CPU | Core i3-3240 | Core i7-3770 | Core i7-4770 |
3Dmark 06 | 16120 | 29450 | 12480 |
3Dmark 11 通常測定 | P 2820 | P 9675 | P 2185 |
3Dmark 11 高解像度測定 | X 960 | X 3495 | X 658 |
モンスターハンター | 9500 | 31250 | 5710 |
新生 FF14 標準画質 | 9080 | 18720 | 7250 |
新生 FF14 高画質 | 4950 | 6930 | 3350 |
ドラゴンクエストX 最高画質 | 8110 | -- | エラーで測定不可 |
見ての通り、GeForce GT 640 ではあまり高いスコアは出ていません。
※新生 FF XIV ベンチマーク結果 |
ただ、モンスターハンターはスコア 3500 以上、新生 FF14 は 4000 以上で快適にプレイ出来るので、今回の検証機の構成でもあまり高画質にしなければ、3D グラフィックのゲームも十分に楽しむことはできます。
ビデオカードを搭載している分、CPU 内蔵のグラフィック機能よりは遥かにマシですね。
しかし高負荷なゲームや高画質でのプレイは、動作速度に影響が出ることもあるでしょう。
ドラゴンクエストX はベンチマーク中にエラーが出て、どうしても最後まで測定することが出来ませんでした。
今回は使用できる時間が短かったため、原因の究明まで手が回らなかったのですが、画質を落とすとエラーが出にくくなったので、やはり負荷の影響はありそうです。
いずれにせよ、ゲーミングモデルではありませんし、下位のビデオカードですから、こういうこともあると言うことでしょうか。
ただ前述したように、HP ENVY 700-260jp にはもっと性能の良い GeForce GTX 760 も搭載可能です。
ゲームの事も考慮する方はこちらを選ぶべきでしょう。
消費電力はアイドル状態だと 40〜50W、ベンチマーク測定中は 100W 前後でした。
ビデオカードの性能が抑えられている分、消費電力は低く、そのため高負荷時のファンの騒音も小さめです。
・HP ENVY 700-260jp (HP ダイレクト デスクトップPC)
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