○ 実機レビュー (2009秋モデル)
   日本HP(ヒューレットパッカード) Pavilion s5150jp

HP Pavilion e9000 シリーズ日本HP(ヒューレット・パッカード)さんから、
2009年の秋モデルのスリムサイズのパソコンPavilion s5150 jp」の実機の貸し出しをして頂きました。
当ページでは、その s5150 の実機レビューを掲載いたします。

※現在、後継の Pavilion s5350jp が登場していますが、パソコンの性質はほぼ変わりません。
一部のパーツが新しくなっていますが、ケースは同じです。
s5350jp の詳細は こちらのページ で解説しています。


この s5150 はサイズが小さめの省スペース型のパソコンで、通常のパソコンと比べるとかなり小型です。
おかげで設置スペースにあまり困らず、机の上に置いても普通のパソコンほど邪魔になりません。

パソコンの本体が小さいと、そのぶん中に入れられるパーツには制限ができるため、性能は低くなりがちです。
しかしこの s5150 はスリムサイズであるにも関わらず、その性能は一般サイズのパソコンと比べても見劣りしません!
スリムサイズで極限まで性能を追求したモデルと言えます。

とは言え「スリムサイズ」である以上、拡張し辛いなどの問題もあります
また「小サイズで高性能」というのは、パソコンの一般的な考え方からは外れていると言えます。
ここではそんな s5150 の特徴と、その性能を検証してみたいと思います。

なお、s5150 はカスタマイズ(パーツ選択)によって低価格な一般向けモデルにも、高性能なゲーム向けモデルにも出来ます。
テレビやDVD、ブルーレイなどの視聴も考慮された「地デジモデル」も存在します。


HP Directplus オンラインストア

HP Pavilion e9160 外観HP Pavilion s5150 jp2009 年の秋モデル省スペース型パソコンです。
この s5000 シリーズには、インテル社の CPU (性能重視)を使ったものと、AMD 社の CPU (低価格重視)を使ったものの2タイプがあるのですが、今回レビューする s5150 はインテル社の CPU を使ったタイプです。

前述したようにこのパソコンは、「スリムサイズで出来る限りの高性能を目指したモデル」と言えます。
しかしスリムサイズのパソコンというのは、どちらかと言うとそれほど高い性能を要求しない・・・
つまり手ごろな価格と相応の性能で、インターネットや表計算などの一般的な用途で使うために購入する(もしくはパソコンの初心者の方が手頃なものを購入してみる)という場合に選ばれることが多いです。

そのためか、このモデルは初期設定では低価格な構成になっていて、CPU は低価格なもの(Core 2 Duo)、メモリはそこそこ(2GB)、ハードディスクは少なめ(320 GB)、グラフィック機能はオンボード(ビデオカードなし)となっています。
これだと価格は 75000 円ほど・・・ 確かに安くて手頃ですね。

しかし、CPU を高性能型(Core 2 Quad で 3GHz)、メモリ多め(4GB)、ハードディスクを大容量(1.5TB)、グラフィック機能を 3D グラフィックの使われたゲームも可能なタイプ(GeForce GT 220)にする事も可能で、スリムタイプとは思えない高性能を持たせる事も出来ます。
ただしこれだと、価格は 15万円 以上・・・ 2倍になります。

地デジ対応にしてテレビやブルーレイも見れる環境にすると 17万円 ほどになります。
性能に応じた価格になってしまいますね・・・ スリムだから安いという事はありませんので悪しからず。

ともかくこのモデルは、スリムタイプとしては、かなり性能の幅が広いモデルであるのが解ります。


パーツの性能面ですが・・・
CPU無難でコストパフォーマンスの良い Core 2 Duo や、一般的で高性能な Core 2 Quad が使えるため、文句なしと言えますね。

メモリDDR3 という新型メモリが使われています。
以前のタイプである DDR2 よりも高速にデータを処理可能です。

ハードディスク(HDD)スペースの都合上、1つしか搭載できません
しかし 1.5TB(1500GB) などの大容量のものも選択可能です。
最初は 320GB が選択されていますが、これでは少ないので、もっと多めのものを選んでおくのをお勧めします。

グラフィックカード(ビデオカード)は、なし、RADEON HD 4350、GeForce GT 210、GT 220 の4つから選択可能です。
性能としては、RADEON HD 4350 と GeForce 210 は低性能で低価格なタイプ
GeForce GT 220 は中間性能型です。

グラフィックカードに高性能なタイプは選べませんが、「スリムサイズ」という本体の大きさの都合上、ここは仕方がありません。
それに GeForce GT 220 でも、近年の 3D グラフィックのゲームを十分快適に動作させることが可能で、性能に対して価格も割安です。
(RADEON HD 4350 と GeForce GT 210 は GeForce 9400 というものと同クラス、GeForce GT 220 は GeForce 9600 というものと同等クラスです)


なお、地デジ搭載型の場合は GeForce GT 210 か 220 のどちらかとなります。


今回 HP 様から送って頂いた、検証に使用した実機は、もっとも性能が高い構成に近いものでした。

CPU Core 2 Quad Q9650 (3GHz、4コア)
メモリ 4GB (DDR3-1066)
HDD(ハードディスク) 320GB
グラフィック GeForce GT 220 (GeForce 9600 と同クラス)
テレビ 地デジチューナー付き

CPU の 「Core 2 Quad Q9650」 と言うのは、Core 2 シリーズの中では最高性能です。
選べるパーツの中で、ほぼ一番高い性能での検証だというのをご了承下さい。

この構成だと価格は 15万円 前後となります。
スリムサイズのパソコンとしては高い方ですが・・・ 性能からすると相応の価格と言えますね。
地デジがなければ 14万円 ぐらいになります。

Windows は Vista のみですが 32bit 版 と 64bit 版を選択可能で、Windows 7 が発売された後の無償アップグレードキャンペーンも行われています。

実機レビュー





























ASUS EeePC 901-X

さて、今回はケースの外観や使用感からコメントしましょう。
このパソコンの最大の特徴は「スリム」なこと。 本体の小ささですからね。

通常のパソコンと並べて大きさを比較してみると、以下のような感じです。

5000 シリーズが今回レビューする「スリムサイズ」の本体です。
となりの 9000 シリーズの本体は「ミニタワー」と呼ばれるサイズで、一般的なパソコンのサイズとしては、やや小さめの本体になります。
(さらに「ミドルタワー」という一般的なサイズがあり、これは高さ 420〜450 、幅 200〜220、奥行き 490〜530 ぐらいになります)

横幅は 9000 シリーズ(ミニタワー)の 2/3 以下、ミドルタワーと比較すると半分しかありません。 高さもかなり低めです。
奥行き幅は結構あるのですが、それでも通常サイズのものと比べると短めですね。

机の上にも置ける大きさで、置き場所に困らずに良さそうです。 見た目もスタイリッシュでいいですね。

ただ、側面や上面にはたくさん穴が開いています。

これはパソコンの熱を外に逃がすためのものです。
本体が小さくて中が密集しているため、内部の空気の流れ(エアフロー)を確保できないので、側面に穴を開けてそこから直接放熱するようになっている訳です。
この放熱の問題は、小サイズのパソコンやノートパソコンの大きな課題の1つです。

このパソコンの場合、左側の側面の穴から放熱を行っているため、そこから熱風が出てきます。
よって机の上に置いた場合、その左側に座ってると、熱風が出てきてちょっと暑いです・・・

また、ファン(パーツを冷やすための扇風機)の音が横の穴からダイレクトに聞こえるため、パソコンに負荷がかかっている時のファンの音はやや大きく聞こえます。
(負荷がかかっていない時は、常時回っているケースファンがないため非常に静かです)
上部にも通気用の穴が開いているため、そこを塞ぐようにものを乗せたり、レースやカバーを掛けてはいけません。

これらの点には注意しておく必要があります。


前面パネルは下の写真のようになっています。

e9000 シリーズ 前面パネル

USB ポートは前面には2つ、背面には4つあります。
他に SD カードなどを入れるメディアカードリーダーのスロットと、イヤホンの差し込み部。
CD/DVD(及びブルーレイ)のドライブは縦になっています。

最下部には「ポケットメディアドライブ」というものを差し込めるようになっています。
これは USB 接続も可能な 250 GB の「外付け HDD」で、外付け HDD を内蔵できるシステムになっているのは、HP さんのパソコンの大きな特徴です。
これはスリム型になっても変わらないようですね。

ただ HP の一般型のパソコンに付いている、自動で外付け HDD にデータをバックアップを出来る「イージーバックアップ」という機能はありません。

なお、秋モデルの HP さんのパソコンには全て、フロントに「東京生産」を示すシールが貼られているようです。
他の外資系メーカーのパソコンはほぼ全て中国生産であるため、日本生産である点を誇示しているようですね。



パソコン本体の中身の様子ですが・・・

e9160 ケース内部スリムサイズなだけあって、かなり密集しています。
左上に CPU、左下に電源ボックスがありますが、側面に付いている穴はこのすぐ横に位置しています。
これらの熱を側面から直接、放熱するシステムになっています。
また、右下にもファンがあり、ここで内部全体の換気を行っているようです。

右上の部分には、CD/DVD(及びブルーレイ)のドライブがあるのですが・・・
メモリやハードディスク(HDD)は、この裏側になっています。
よって、そこをいじるには CD/DVD ドライブを外さなければならず、ちょっと面倒です。

また、グラフィックカード(ビデオカード)は、「ロープロファイル」と呼ばれる小型パソコン用のものを使わなければ、中に入りません。

これらの点から、このパソコンは後からパーツを追加・交換することは出来るだけ避けた方が無難と言えます。
そもそも後からの拡張を考えるのであれば、本体が小さいパソコンを選ぶべきではありません。

最初に注文する時点で、後から後悔しないように、納得できる十分な性能のパーツを選んでおきたい所です。

また、拡張カードを取り付ける部分(PCI Express x1 スロット)も1つしか使えません。
テレビも見れる地デジモデルにした場合、そこに地デジ用の拡張カードが付くので、空きはありません。
この点にも注意して下さい。

まあ初心者の方の場合、「パソコンを後から拡張する」というのは難しいと思いますから、拡張性の事はあまり気にしなくてもいいかもしれません。
その意味でも、小型の省スペースパソコンは初心者向けだと言えますね。


さて、性能についてですが・・・
最初に述べたように検証に使った本体は s5150jp で選択可能なパーツの中で、もっとも性能が高いもので構成されている事を前提にご覧下さい。

以下のグラフは、パソコンの性能測定ソフト(ベンチマークソフト)「CrystalMark 2004」による結果です。
比較対象として他のパソコンの測定結果と並べて表記します。

東芝製 Qosmio F40W
 2007年秋に発売
・CPU: Core 2 Duo T7500
 (2.2GHz、デュアルコア)
・メモリ: DDR2-667 2GB
・VGA: GeForce 8600M GT
・HDD: 250GB、7200 rpm
※ノートパソコンです
※一世代前の高性能ノートです
HP製 Pavilion m9580 jp
 2009年春モデル
・CPU: Core 2 Quad Q9550
 (2.83GHz、クアッドコア)
・メモリ: DDR2-800 4GB
・VGA: GeForce 9800 GT
・HDD: 640GBx2、7200 rpm
※HDD が
RAID 0 です
こちら でレビューしています
HP製 Pavilion e9160 jp
 2009年秋モデル
・CPU: Phenom II X4 810
 (2.6GHz、クアッドコア)
・メモリ: DDR3-1066 4GB
・VGA: GeForce GT 220
・HDD: 320GB、7200 rpm
※今年の安価型の秋モデルです
こちら でレビューしています
HP製 Pavilion s5150 jp
 2009年秋モデル
・CPU: Core 2 Quad Q9650
 (3GHz、クアッドコア)
・メモリ: DDR3-1066 4GB
・VGA: GeForce GT 220
・HDD: 320GB、7200 rpm
※スリムタイプパソコンです
※今回検証しているモデルです
価格 20 万円以上 価格 13万円前後 価格 8万円前後 価格 15万円前後の構成
東芝 Qosmio F40W HP Pavilion e9580 jp HP Pavilion e9160 jp パソコン工房 GS9 2009モデル(を元にだいぶ変更)

一番右が今回検証しているパソコン(s5150jp)です。
他に今年春の一般型モデル(m9580)と、今年秋の安価型のモデル(e9160)も並べてみました。
一番左は2年前の東芝の高性能型ノートパソコンです。

CPU のスコアは Core 2 Quad のもっとも性能の高いものが使われているだけあって、s5150 が一番高いですね。

一方でメモリのスコアは、低価格型の e9160 に劣っています
メモリは全く同じもの(DDR3)なのに、なぜ速度に違いがあるのかというと・・・
e9160 に使われている Phenom II X4 という CPU には、メモリのデータ処理速度を高める技術(メモリーコントローラー)が内蔵されているからです。
ただ、CPU 自体の性能は e9160 の「Phenom II X4 810(Phenom II X4 の安価型)」より、s5150 の「Core 2 Quad Q9650(Core 2 Quad の上位型)」の方がだいぶ高いため、s5150 の方が全体的な速さは高速です。

グラフィック関連の性能(2D、3D)は、e9160 と s5150 は同じ「GeForce GT 220」というグラフィックカード(ビデオカード)を使っているのですが、にも関わらず s5150 の方が一回りスコアが高いです。
これはグラフィック関連の処理にはグラフィックカードだけでなく、CPU の性能も影響するからで、ここにも CPU の性能差が出ていると言えますね。

でも、グラフィックの性能に一番関係するのは、やはりグラフィックカード(ビデオカード)。
春モデルの m9580jp に使われている「GeForce 9800 GT」は、「GeForce GT 220」よりも性能が高いため、今回並べている中では m9580 がグラフィック関連のスコアは一番高いです。
(GeForce GT 220 は GeForce 9600 と同クラスなので、GeForce 9800 よりも下のグレードとなります)


また、実際にこのパソコンでゲームをやると、どのぐらい快適なのか・・・
各種のゲームのベンチマークソフト(速度・快適さの測定ソフト)で計測した結果は以下の通りです。

各ゲームのベンチマーク測定
(設定はデフォルトです)
HP製 Pavilion m9690
 2009年夏モデル
・CPU: Core i7 940
 (2.93GHz、クアッドコア)
・メモリ: DDR3-1066 6GB
・VGA: RADEON 4850
・HDD: RAID 0
今年夏の高性能型モデル
HP製 Pavilion e9160
 2009年秋モデル
・CPU: Phenom II X4 810
 (2.6GHz、クアッドコア)
・メモリ: DDR3-1066 4GB
・VGA: GeForce GT 220
・HDD: ふつう
今年秋の低価格型モデル
HP製 Pavilion s5150
 2009年秋モデル
・CPU: Core 2 Quad Q9650
 (3GHz、クアッドコア)
・メモリ: DDR3-1066 4GB
・VGA: GeForce GT 220
・HDD: ふつう
今年秋のスリム型モデル
大航海時代 Online 2030 2210 2600
FFXI(ファイナルファンタジーXI) LOW 10800 10200 10850
HIGH -- 8050 8600
モンスターハンター・フロンティア 12200 3500 5800
ベンチマークソフト 3D mark 06 総合 12800 6950 6200
CPU -- 3450 4350
(信長の野望 Online) -- (352) (359)

※3D mark 06 はゲームではありませんが、最も一般的に使われる測定ソフトなのでリストに含めています。
大航海時代 Online はノーマル、FFXI やモンスターハンターも初期設定のままでの測定を行っています。
目安として、大航海時代 Online は 300 以上で快適、FFXI は 4000 以上で快適、モンスターハンターは 3500 以上で快適です。

信長の野望 Online のベンチソフトはもう古いので、最近の性能を十分に測定できません。 あくまで参考程度にして下さい。

今年夏の高価格モデル m9690秋の低価格モデル e9160 とも比較してみましたが・・・
性能としては、一部で高価格モデルにも匹敵、しかし一部では低価格モデルと同程度という、バラツキのある結果になりました・・・

バラついた原因としては、「モンスターハンターフロンティア」のスコアがあまり高くないのは、このゲームは最新の高度なグラフィック表現が使われているため、中間性能型である「GeForce GT 220」では十分な処理速度が出なかったためのようです。
「3D mark 06」という測定ソフトのスコアが低いのも、その辺りが原因のようです。
(あくまで比較してスコアが低かったという話で、実際にゲームをやる分には十分なスコアです)

逆に最新の高度なグラフィック表現が使われていない、大航海時代 Online や FFXI といったゲームにおいては、GeForce GT 220 でも十分な対応が可能で、かつ s5150 は CPU やメモリは高性能であるため、高価格モデルに匹敵するスコアが出ています。


s5150 はスリム型です。 本体がスリムでも、CPU や メモリ は高性能なものを搭載できます。
しかし高性能なグラフィックカード(ビデオカード)というものは、サイズが大きいため、小さな本体には入りません。

小さな本体の場合、それに合ったサイズのグラフィックカードしか装着できません。

つまり s5150 の今回の測定結果は、「スリムサイズならではの結果が出た」と言えるでしょう。



以上、Pavilion s5150jp のレビューでした。

置き場所にあまり困らない「スリムサイズのパソコン」としては、これ以上ない性能のものと言えます。
現時点(2009年夏時点)でスリムサイズの最強構成のパソコンを作ろうと思ったら、(一般的なパーツを使っての)構成としては、これ以外のパーツの組み合わせはないのではないかと思います。
これ以上の性能のパーツだと、サイズが大きくて入らないか、発熱が大きくてスリムサイズでの使用は難しいかになるでしょうからね。

「スリムサイズのパソコンで高性能を追求する」というのは、ちょっと珍しい話ではありますが・・・
スペースや机のサイズの都合で一般のパソコンが置き辛いとか、大きなパソコンは置きたくないので省スペース型がいいという方で、出来るだけ高性能なパソコンが欲しい方は、選択に入れてみてはいかがでしょうか。

(実際の価格はキャンペーンや時期・構成などで変動します。 下記リンク先で確認してみて下さい)

日本HP Pavilion Desktop PC シリーズ
※すでに後継モデルが登場しているため、リンクは HP Pavilion シリーズのトップページに移動します。

・OS は 32bit / 64bit 選択可能
・スリムサイズデスクトップ、BTO によるパーツ選択可能
・カスタムモデル/ダブル地デジモデル
・Athlon X2 などの AMD モデルもあり

ページトップへ

PCハードウェア 初心者の館 へ 実機解説編のメニューページ へ