ビデオカード(グラフィック)の 性能とは

解説文の最終更新 2020年3月

ビデオカード 性能解説 メニュー

ビデオカード ってなに?

ビデオカード(グラフィックカード)とは、映像や画像、文字などを画面に表示するためのパーツです。
GeForce」と「Radeon」の2種類が主流になっていて、画面にどれだけ綺麗な絵を表示できるか、どれだけ立体的なグラフィックを高速、かつ滑らかに動かすことができるかは、このパーツの性能によります。

ただ、普通の絵や文字を表示するだけであれば、それほど高度な機能は必要ありません。
そのためパソコンをビジネスやインターネットに使う範囲であれば、グラフィック機能にこだわらなくても良いでしょう。

ビデオカード必要になるのは、パソコンでゲームをやったり、動画の配信や編集を頻繁に行うという場合。
映像を高画質で見たり、CG 制作ソフトや高度な CAD(設計ソフト)を使う人にも必要になります。

特に最新のパソコンゲームは高度な 3D グラフィックが使われたものが多く、そうしたソフトを高画質で快適に遊べるかどうかは、ビデオカードの性能に大きく左右されます。

このパーツには呼び方が色々あります。
グラフィックカード」、「グラフィックボード」、「ビデオカード」、「ビデオボード」などの呼び名があって、略称も「グラボ」や「VGA」があります。
どれも同じものだと思って構いません。

このページでは「ビデオカード」、略称は「VGA」を主に使います。
ちなみに「VGA」は「ビデオ・グラフィック・アクセラレータ」の略です。

CPU 内蔵グラフィック機能とは

ビデオカードの性能を説明する前に、まず「CPU 内蔵グラフィック機能」について説明しておきましょう。

これは文字通り、CPU に基本的なグラフィック機能が内蔵されているものです。
インテル HD グラフィックス」などが該当します。

ビデオカードがなくても、CPU 内蔵のグラフィック機能を使えば絵や文字を表示する事ができます。
動画の視聴や編集なども、近年の CPU なら内蔵機能でかなり出来るようになっています。

そしてビデオカードはサイズが大きく、消費電力や発熱も大きいパーツです。
良いものは価格も高いです。

そのため、一般向けのパソコンにビデオカードが搭載されることは少なくなっています。
普通のノートパソコンにはまずなく、小型のパソコンや安価なモデルにも、ビデオカードはほぼ搭載されていません。
後から追加することも、小型のパソコンだとできないものが多いです。

しかし CPU 内蔵のグラフィック機能の性能は高くなく、最新の(3D グラフィックを表示する)ゲームは、快適に動かせない場合がほとんどです。
そのため「ゲームをやるつもりでパソコンを買ったけど、ビデオカードがなくてまともに動かなかった!」というケースが、パソコンの初心者には非常に多くあります。

ビデオカードが搭載されたモデルは現在、ゲーミングモデル(ゲーム用に作られたパソコン)とされていることが多いです。
ゲームもやりたいなら、その中から選ぶのが無難です。
(この辺の詳細は 3D グラフィックのゲームをやるためのパソコンアドバイス のページでも説明しています)
動画編集者や設計者、CG 制作者などを対象としたクリエイターモデルにもビデオカードは搭載されています。

なお、昔は CPU ではなく、マザーボード(基板)にグラフィック機能が内蔵されており、これを「オンボード」と呼んでいました。
「CPU 内蔵グラフィック機能」では長いので、今でも CPU 内蔵機能を「オンボード」と呼称していることがあります。

グラフィック機能は「GPU」と呼ばれる場合もあり、CPU 内蔵の場合は「内蔵 GPU」とも呼ばれます。
GPU は正確にはグラフィック機能用 CPU のことで、内蔵 GPU の場合は「CPU の中に GPU がある」という形になります。
サウンド機能なども含め、コンピューターの動作に必要なものを CPU の中にまとめて入れているものは「SoC」(システム・オン・チップ)とも呼ばれます。

グラフィックの種類とは?

パソコンの画像には、普通の平面の画像(2D グラフィック)と、ポリゴンとも呼ばれる「3D グラフィック」、ビデオなどの映像(動画)の3種類があります。
それぞれに必要となる性能が異なります。

ここで言う 3D グラフィック とは、映像に奥行きが感じられる「立体視」や、仮想空間があるように見える「VR(バーチャルリアリティ)」のことではありません。

下の画像のような、計算によって立体的に描かれた画像のことです。
画面の中に「点」を打ち、点と点の間を「線」で結び、線の中に「面」を描いて作られています。

近年のグラフィック機能は、平面画像と一般的な動画の処理については、ほとんど差がありません。
昔はビデオカードの種類によって、画像のスクロールが苦手だったり、映像の質に違いがあったりしたのですが、いまは CPU 内蔵のグラフィック機能でも人間が感じられるほどのスピード差は出ませんし、画質も好みに調整できます。

ただし 3D グラフィックについては、大量の高度な計算を必要とするため、高画質で滑らかに表示するには高い性能の製品が必要になります。
立体視や VR などの新技術、4K などの超高画質の映像にも、それに対応した機能が必要です。

ビデオカード(グラフィック機能)の種類

まずはビデオカードやグラフィック機能に、どんな種類があるか説明しましょう。

ビデオカードは技術競争の末、数種類に絞られています。
製品を発売しているメーカーはたくさんありますが、その中心となる GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット、グラフィックチップ)が同じなら、どのメーカーが作ったものでも似た性能になります。

この GPU は現在「GeForce」というものと「Redeon」というものの2種類が中心です。

nVidia GeForceGeForce 系 GPU 搭載カード
GeForce は NVIDIA社 の開発したグラフィックチップです。
最先端の性能を持ち、最も普及しているため、多くのゲームやソフトウェアが GeForce を基準に開発されており、日本は特にその傾向が強いです。
最大手であるため技術研究も進んでおり、グラフィック機能以外の分野でも活用されています。
intel GeForce 2000 シリーズ
NVIDIA 社が 2018 年から提供している GeForce で、GTX ではなく「RTX 20 シリーズ」と称しています。
「RTコア」と「Tensorコア」と呼ばれる、用途の異なる2つのコアを内蔵しているのが特徴で、設計(アーキテクチャ)は「Turing」と呼ばれています。
RTコアは光や影の処理を、Tensorコアは AI を活用した滑らかな表現(DLSS)を行っており、その分担で 4K のような高解像度でも、美しいグラフィックを高速表示できるようになっています。内部の細かさ(製造プロセス)も向上しました。
しかし値段が高く、ミドルクラス以下の製品は 2000 シリーズの登場後も、1000 シリーズが担っています。
intel GeForce 1000 シリーズ
NVIDIA 社が 2016 年の春から提供している GPU です。設計(アーキテクチャ)の名称は「Pascal」。
型番は 1000 台ですが、公式には「GeForce 10 シリーズ」と称しています。
メモリとデータをやり取りする速度を高速化し、GPU 内部の細かさ(製造プロセス)も向上、性能に対する消費電力や発熱は従来より低くなっています。
中間モデルの GeForce GTX 1060 でも、一世代前の最上位型である GeForce GTX 980 と同等の性能を持つ優れた設計で、2000 シリーズが出たあとの 2019 年になっても、中クラス以下のビデオカードとして改良型が登場し続けています。
この製品から古いモニター(アナログ信号のディスプレイ、ブラウン管など)は非対応となりました。
intel GeForce 900 シリーズ
NVIDIA 社が 2014 年の秋から提供している GPU です。
Maxwell」と呼ばれる設計(アーキテクチャ)の製品で、様々な新しいグラフィック技術に対応、4K画質の高解像度ディスプレイ(モニター)も使用でき、消費電力も大きく軽減されています。
VR(仮想現実)を活用するための機器やソフトを使うには、この世代以上のビデオカードが必要です。
デスクトップパソコン用の GeForce は 800 シリーズが出なかったため、700 の次はいきなり 900 になっています。
3年近く主力を務めた、息の長い製品です。
intel GeForce 800M シリーズ
GeForce 800 はノートパソコン用しかなく、メーカーに直接納入されていたもので、市販はされていません。
上位型(880M、870M)は 700 シリーズの設計(Kepler)を使っていたのですが、下位型(850M、840M)は新設計(Maxwell)で、860M は両者が混在しているといった具合に、製品によって中身が異なります。
バッテリー駆動時に消費電力と性能を抑える機能を持ちます。

intel GeForce 700 シリーズ
NVIDIA 社が 2013 年の春から提供している GPU です。
設計(アーキテクチャ)は GeForce 600 シリーズと同じ「Kepler」ですが、従来より一回り上の性能を持ち、状況に合わせて CPU の速度を調整する「GPU Boost」が 2.0 に進化、メモリも高速化しました。
ファンの振動を抑えて騒音を減らす機能も盛り込まれましたが、消費電力は増えています。
超高価格のフラグシップモデル GeForce GTX TITAN という製品も登場しました。
2014 年に登場した下位モデル GeForce GTX 750 は、設計が新しいもの(Maxwell)になっています。
intel GeForce 600 シリーズ
NVIDIA 社が 2012 年の春から提供している GPU です。
設計(アーキテクチャ)が「Kepler」という新しいものになり、多くの新技術が盛り込まれました。
内部の細かさ(製造プロセス)も向上し、状況に合わせて CPU の速度を調整する「GPU Boost」が導入され、消費電力は大幅に軽減されており、同じ電力での性能は従来の約2倍になっています。
ただしピーク性能は、GeForce 500 と比べて大きく上がっているという程ではありません。
intel GeForce 500 シリーズ
NVIDIA 社が 2010 年末から提供している GPU です。
ただ、中身は GeForce 400 シリーズとほぼ同じで、マイナーチェンジと言われています。
内部の最適化や、若干の性能向上、400 シリーズの問題点だった発熱や騒音の軽減などが行われています。
intel GeForce 400 シリーズ
NVIDIA 社が 2010 年から提供している GPU です。
Fermi」と呼ばれる新しい設計に変わり、Windows 7 から提供された DirectX 11 というグラフィックシステムに対応した製品です。
ただ、DirectX 11 対応でないソフトを動かした時の速度は GeForce 200 と大差なく、対応ソフトが普及するまで本領発揮できませんでした。
また消費電力と発熱が GeForce 200 シリーズよりさらに高く、ファンの騒音も増加、それらが問題視されました。
intel GeForce GTX 200 シリーズ
NVIDIA 社が 2008 年から提供している GPU です。
進化した GPU を他の用途にも活用できる CUDA と呼ばれる技術や、物理的な動きをリアルに表現する PhysX など、NVIDIA 独自のグラフィック技術を導入した新設計の製品です。
一気に性能が上がりましたが、消費電力や発熱も急増し、ここからビデオカードの大型化が始まります。
intel GeForce GTS 200、GT、300 等
GeForce 200 シリーズには主力モデルの GTX の他に、GTS というものもありました。
GeForce GTS 200 は旧モデルである GeForce 9800 のマイナーチェンジで、新設計ではありません。
また GT シリーズという下位モデルが登場し、以後 GTX が高価格、GTS が中間、GT は下位という扱いになります。
GeForce 300 シリーズは企業に納入された特注品ですが、基本設計は GeForce 200 や 9800 と変わりません。

GeForce シリーズの製品は、ナンバーの下二桁で「グレード」を表わしています。

例えば、同世代の GeForce シリーズでも以下のような種類があります。

下二桁が 40 以下のものは、やや特殊な用途で使われるものです。

nVidia GeForceRADEON 系 GPU 搭載カード
RADEON は ATI 社が開発した、GeForce シリーズに対抗する性能のグラフィックチップです。
映像や動画などの再生に定評があり、3D グラフィックの表示性能は GeForce シリーズに一歩遅れていましたが、現在は大きな差はありません。
しかし以前の RADEON には得手不得手があり、ドライバ(ソフトウェアへの対応)でも GeForce に劣ったため、劣勢な状況が続き、ついに ATI は CPU 開発会社の AMD 社に買収されてしまいました。
しかしそこまで性能差がある訳ではなく、現在は AMD の元で RADEON の開発が続いています。
一般的に AMD 社の CPU のパソコンには、RADEON のビデオカードが搭載されます。
intel Radeon RX 5000 シリーズ
AMD 社が 2019 年から提供している GPU です。600 ではなく、桁が増えて 5000 になりました。
「RDNA」と呼ばれる新設計(アーキテクチャ)の製品ですが、やや出遅れた感は否めません。
同世代の GeForce より内部の細かさ(製造プロセス)が上位で(GeForce 1000 は 14nm、GeForce 2000 は 12nm、Radeon 5000 は 7nm)発熱と消費電力が大きく軽減されているのですが、その製造の難しさのためか最上位型や廉価型の開発が遅れており、ラインナップがなかなかそろいません。
intel Radeon RX 500 / Vega シリーズ
AMD 社が 2017 年の夏から提供している GPU です。
第二世代の「Polaris」と呼ばれる設計(アーキテクチャ)の製品ですが、基本的には第一世代のマイナーチェンジです。
しかし処理速度(GPU クロック)がアップしていて、そのぶん性能が増しています。
ただ Radeon RX シリーズはミドルクラスの製品で、上位の Radeon RX 580 でも、GeForce の中間型 1060 と同等。
RX Vega というシリーズも発売され、こちらが GeForce の上位型に相当しますが、消費電力や発熱は高いです。
intel Radeon RX 400 シリーズ
AMD 社が 2016 年の夏から提供している GPU です。
Polaris」と呼ばれる新しい設計(アーキテクチャ)の製品で、内部の細かさ(製造プロセス)も向上しました。
Radeon 300 シリーズの消費電力の高さを反省してか、処理性能より消費電力と発熱の軽減に重点を置いています。
しかしこのため、性能は同世代の GeForce 1000(10)シリーズと比べると分が悪く、発熱も GeForce と比べてそこまで低い訳でもありません。
ただ、AMD 社の CPU に備わっていた動画を滑らかに表示する技術「Fluid Motion」を、この頃にビデオカードの Radeon でも利用できるようにしたため、アニメや DVD 映像に強いビデオカードとして注目されました。
intel Radeon R9/R7 300/Fury シリーズ
AMD 社が 2015 年の夏から提供している GPU です。
基本設計は Radeon 200 シリーズと変わりませんが、新型のビデオメモリを搭載しています。
ただ、消費電力と発熱が高く、値段も高めであったため、性能的には GeForce 900 シリーズと同クラスでしたが、見劣りするのは否めず苦戦が続きました。
Fury と Fury X は 4K 画質に最適化した上位型でしたが、4K ディスプレイを持っている人が少なかったうえに、対応できるビデオメモリの容量が少なかったため、真価を発揮できませんでした。
intel Radeon R9/R7 200 シリーズ
AMD 社が 2013 年末から提供している GPU です。
上位型は新設計になっていましたが、下位型や初期型は Radeon HD 7000 シリーズの設計が使われていて、それらは旧モデルと大差なく、リネーム(名前だけ変えたもの)と言われています。
ただ、価格は一回り安くなっていました。
intel Radeon HD 7000/8000 シリーズ
AMD 社が 2012 年から提供している GPU です。
設計を刷新しており、内部の細かさ(製造プロセス)も向上、様々な新技術にも対応しており、同世代の GeForce と比べても遜色ない高性能と低い消費電力を持っていました。
Radeon HD 8000 シリーズはメーカーに直接納入される企業用の製品で、市販はされていません。
intel Radeon HD 6000 シリーズ
AMD 社が 2011 年から提供している GPU です。
主に電力と発熱の軽減に力が入れられていて、性能は HD 5000 シリーズと大差ないのですが、消費電力は減っています。
映像関連の機能も強化されています。
intel Radeon HD 5000 シリーズ
AMD 社が 2009 年から提供している GPU です。
Windows 7 から提供された DirectX 11 というグラフィックシステムに初めて対応した製品で、新型メモリに対応し、性能も全体的に強化されました。
前モデルと前々モデル(4000 と 3000)はマイナーチェンジでしたが、ようやく目立った性能向上が行われています。
ただ、上位モデルはサイズがかなり大きく、大型ケースでないと入らなかったため、マニア向けと言えました。

現在の Radeon シリーズの製品も GeForce と同じく、ナンバーの下二桁で「グレード」を表わしています。
ただ、Radeon は製品によってナンバーが4桁だったり2桁だったりするので、例外があります。

同じ Radeon シリーズでも、以下のような種類があります。

GeForce と同じく、M が付いていたらモバイル用(ノートパソコン用)です。
モバイル用は消費電力と発熱が少ない分、デスクトップ用より性能は控えめになります。

【 古いビデオカード 】

RIVA 128 / TNT、GeForce 256
NVIDIA 社が GeForce の前に開発していたグラフィックチップです。
RIVA は 1997 年、GeForce 256 は 1999 年に登場し、ここから GeForce シリーズに繋がっていきます。
RAGE シリーズ
ATI 社が RADEON の前に開発していたグラフィックチップです。
1990 年代後半に使われていました。この頃はまだ多くの会社がグラフィック機能のシェア争いをしていました。
Savage / Chrome シリーズ
Savage は S3 社が開発していたグラフィックチップで、安価だったため低価格のパソコンやオンボードの機能で広く使われていましたが、ドライバ(動かすためのソフトウェア)の欠陥により 2000 年頃に敗退してしまいます。
現在は後継の Chrome が台湾の HTC 社で活用されています。
Voodoo シリーズ
3dfx 社が開発した、ポリゴン(3D 表現)に強いグラフィックチップでした。
Windows 95 時代はトップクラスでしたが、GeForce や Radeon に逆転され、その後に NVIDIA 社に買収されました。
Millenium G / Parhelia シリーズ
Matrox 社が発売していたビデオカードで、平面画像の処理やスクロール、画質などに定評がありました。
しかし 3D グラフィック時代になると苦戦、それに対応した Parhelia も登場しましたが、2000 年代初頭に衰退します。
intel GeForce 2 シリーズ
NVIDIA 社が 2000 年から提供していた GeForce の第二世代で、広く普及したグラフィックチップです。
通常型は GTS、上位型は Pro、最上位型は Ultra、廉価型は MX という名前でした。
intel GeForce 3 シリーズ
NVIDIA 社が 2001 年から提供していた、当時の GeForce の高性能モデルです。
値段が高かったため、主力は GeForce 2 のままで、それほど普及しませんでした。
intel GeForce 4 シリーズ
NVIDIA 社が 2002 年から提供していた、人気のあったグラフィックチップです。
廉価版から上位型まで製品の幅が広く、ライバルの RADEON に差を付けました。
オンラインゲーム FF11(Final Fatnasy XI)のプレイに最適な VGA として人気になりました。
intel GeForce FX シリーズ
NVIDIA 社が 2003 年から提供したもので、買収した 3dfx 社の技術を活用しているため名前が FX になっています。
DirectX 9 というグラフィックシステムに対応し、製品の数も多く、4と共に長く主力を務めました。
intel GeForce 6000 シリーズ
NVIDIA 社が 2004 年から提供していたグラフィックチップです。
この頃にビデオカードの取付部が AGP から PCI Express に移行しており、それに対応した製品です。
intel GeForce 7000 シリーズ
NVIDIA 社が 2005 年から提供していたグラフィックチップです。
かなり性能が強化され、消費電力も軽減、人気の製品となりました。ビデオカードを2つ繋げる SLI に対応しています。
intel GeForce 8000 シリーズ
NVIDIA 社が 2006 年末から提供したグラフィックチップで、DirectX 10 というシステムに対応しました。
高性能な製品でしたが消費電力が高く、発熱も増加、その対策が問題になり始めます。
この頃から 3D グラフィックのオンラインゲームが世界的な人気になり、その影響で販売数を伸ばしました。
intel GeForce 9000 シリーズ
NVIDIA 社が 2008 年から提供していましたが、基本設計は 8000 と大差なく、マイナーチェンジと言えます。
ほどなくして後継の GeForce GTX 200 シリーズが登場したため、主力であった期間は短いです。
intel RADEON 256 / 7000 シリーズ
ATI 社が 2000 年頃に提供していたグラフィックチップです。
GeForce 2 のライバルでしたが、性能はやや劣っていました。名前が 256、32/64、7200 など何度も変わっています。
intel RADEON 8000 シリーズ
ATI 社が 2001 年から提供していたグラフィックチップです。
後期型は同世代の GeForce に並ぶ性能を持ち、ここから GeForce と Radeon の二強状態が始まります。
ALL-IN-WONDER と呼ばれるテレビチューナー内蔵モデルが登場して人気になりました。
intel RADEON 9000 シリーズ
ATI 社が 2002 年から提供していたグラフィックチップで、DirectX 9 というグラフィックシステムに対応しました。
GeForce との争いが激化しており、マイナーチェンジが繰り返され、多くのモデルが登場しました。
しかし日本ではゲーム向けの GeForce が強く、映像向けと言われていた Radeon はやや苦戦していました。
intel RADEON X700 / X800 シリーズ
ATI 社が 2004 年から提供していたグラフィックチップです。
新しいビデオカードの取付部 PCI Express に対応、後期型は2つのビデオカードを繋げる CrossFire にも対応します。
同世代の GeForce より性能がやや劣りましたが、価格が安く、安価なパソコンで多用されていました。
intel RADEON X1000 シリーズ
ATI 社が 2005 年から提供していたグラフィックチップです。
これも同世代の GeForce より劣っていたため苦戦が続き、ついに ATI 社は AMD 社に買収されることとなります。
intel RADEON HD 2000 シリーズ
AMD 社が 2007 年から提供していたグラフィックチップで、DirectX 10 のグラフィックシステムに対応しました。
性能が強化され、動画関連機能も改善されましたが、消費電力が高く、わずか半年で後継が出ることになります。
intel RADEON HD 3000 シリーズ
AMD 社が 2007 年末から提供していたグラフィックチップです。
基本設計が変わっていないマイナーアップデートですが、消費電力と発熱の高さが軽減されました。
AMD の当時の新 CPU「Phenom」に最適化されましたが、その Phenom が大不振だったので長所になりませんでした。
intel RADEON HD 4000 シリーズ
ATI 社が 2008 年から提供していたグラフィックチップです。
これもマイナーアップデートですが、消費電力と発熱がさらに軽減され、低価格がアピールされました。
なお、これ以前の Radeon のビデオカードは平面画像のスクロールが弱く、平面の絵が流れていくゲームをプレイすると、旧式の GeForce や CPU 内蔵グラフィック機能よりも動作が悪化することがありました。

各製品の性能の比較は ビデオカードのランク付け一覧表 をご覧下さい。
この表には CPU 内蔵のグラフィック機能や、ノートパソコン専用のビデオカードも含めています。

GPU クロック

パソコンの頭脳と言えるパーツは「CPU」ですが、ビデオカードの中にもパソコンの CPU に相当する部分があります。
これが「GPU」で、言わば「グラフィック用の CPU」です。
グラフィックコア」とも呼ばれます。

CPU の処理速度は「クロック数」という数値で表わされますが、GPU にも「クロック数」(コアクロック)があり、CPU と同様に 1200 MHz や 1.2 GHz といった「Hz」の単位で記載されます。(1000 MHz で 1GHz になります)
この数値が高いほど処理速度が速く、すなわち性能が良いということですね。

CPU とは違い、GPU は 1531 MHz といったように、一桁目まで表記されることが多いです。
(CPU だと端数は省略されて 1.5 GHz といった表記になります)

最近は CPU の「ターボブーストテクノロジー」と同じく、使用状況に合わせて速度が調整されるものが多いため、コアクロック(定格クロック)とブーストクロックの2つが併記されていることもあります。

同じ GPU(グラフィックチップ)を使ったビデオカードでも、製品によってクロック数は違います。
各メーカーが独自の改良を行い、できるだけ高クロックで動かすようにしていて、それを製品のアピールポイントにしているからで、1桁目までクロック数を表わしているのもそのためです。
ただ、GPU が同じなら、それほど大きな性能差はありません。

CPU に内蔵されているグラフィック機能も GPU と呼ばれます。
CPU の中に CPU(GPU)がある、みたいな妙な話になりますが・・・ 実際、CPU の中にグラフィックの処理を行う「グラフィックコア」が内蔵されているため、その認識で構いません。

ビデオメモリ(VRAM)

パソコンが作業に必要なデータを置いておく場所を「メモリ」と言いますが、ビデオカードにもグラフィックの処理に必要なデータを置いておく専用のメモリがあります。
これを「ビデオメモリ」や「グラフィックメモリ」、「VRAM」と呼びます。

通常のメモリと同じく、ビデオメモリにも容量と種類があります。
容量は 512MB や 2GB、4GB などの数値で表わされ、1000MB で 1GB です。

画面に 3D グラフィック(ポリゴングラフィック)を表示する場合、大量の計算データが必要になります。
GPU で計算したそのデータはビデオメモリに保存され、随時使われていくのですが、もしメモリが少なくてデータを保存しきれなかった場合・・・
描画が遅くなったり、一部が表示されなかったり、模様や色が抜け落ちるといった症状が起こります。

大画面で高精細なコンピューターグラフィックスほど、その処理に大量のデータを必要とするため、ビデオメモリが十分にないと表示不良が生じてしまいます。

性能としては、量が多いほど良いと言えますね。
安いものだと 2GB が多いですが、最近は 4GB や 8GB といった大容量のビデオカードも増えています。

最近は「メモリバンド幅」や「メモリバス帯域幅」といった性能もよく表記されています。
これはデータの最大転送量で、192GB/s や 256GB/s といった「GB/s」で表されます。
192GB/s なら1秒間に 192GB のデータを送ることができ、数値が高いほど高性能です。

VRAM の性能には、データを送る速さを示す「メモリクロック」や、一度に送れる量を示す「メモリバス幅」などもあるのですが、速さと量で帯域(バンド幅)が決まるため、そこまで気にする必要はありません。

これらの性能はメモリの種類によって大まかに決まっており、以下のようなものがあります。

GDDR(1)

メインメモリの「DDR」をグラフィック専用にしたものです。
一度により多くのデータを送れるようになっており、2001年頃に登場しました。
メインメモリと違い、GPU の近くの基板に直接貼り付けられていて、ビデオカードからの着脱はできません。

GDDR2

メインメモリの「DDR2」をグラフィック専用のメモリにしたもので、2004年頃に登場しました。
初代の約 1.5 倍ほどの速度でデータをやり取りでき、消費電力も抑えられています。
ただ、GDDR3 がすぐに登場したため、下位製品向けとして使われました。

GDDR3

「DDR3」のグラフィック専用型、ではありません。GDDR2 の改良型です。
GDDR2 のさらに 1.5 倍ほどの転送速度を持ち、GDDR2 との互換性があって、GDDR2 が使えるビデオカードにはこちらも使用できました。ただ、基板に貼り付けられているため、ユーザーが取り替えたりはできません。
上位製品に使われることが多く、ゲーム機の PS3、XBOX360、Wii などにも使用されています。

GDDR4

名前が紛らわしいですが、メインメモリの「DDR3」をグラフィック専用にしたものです。
2008年頃に登場し、GDDR3 の 1.5 倍ほどの速度があり、消費電力も軽減。
しかし DDR3 の価格がなかなか下がらなかったためか、こちらもコストが高く、あまり使われないまま GDDR5 の時代へと移っていきました。

GDDR5

GDDR4 の改良型です。2010年頃に登場しました。
性能は GDDR4 の2倍以上となり、消費電力もさらに軽減。登場してすぐに主流となっています。
そして以後10年近く、VRAM の中心を務めている息の長いメモリです。
あまりに長く使われたため、途中で何度か改良が施され、性能はさらに増していきました。

HBM

GDDR とは異なる設計思想で開発されたビデオメモリです。2015 年に登場しました。
「High Band width Memory」の略で、メモリを GPU の周囲に並べるのではなく、縦に積み重ねています。
これによって経路を短縮、さらに GDDR 系は「メモリクロック」を高めて性能(帯域、バンド幅)を増やしていましたが、こちらは「バス幅」を大きく増やしており、そのメモリバス幅は他の製品の10倍以上に及びます。
ただ、新技術のため割高になり、バス幅以外の性能は振るわなかったため、あまり採用されず HBM2 に移行しました。

GDDR5X

GDDR5 の拡張版です。2016年頃に登場、GDDR5 との互換性があります。
GDDR5 の 1.5 倍ほどの性能に加え、データ先読み機能(プリフェッチ)も強化されています。
ただ、そのぶんコストが増したためか、製造メーカーが少なく、GDDR5 と併用される状態が続いています。

HBM2

バス幅を高めたビデオメモリ「HBM」の改良型。2018年頃に登場しました。
高いバス幅に加え、初代 HBM の欠点だった最大容量を増やし、速度も増加、全体的な改良を行っています。
やはりコストは高いのですが、技術の将来性を買ったメーカーがフラグシップモデル(最上位型、技術アピールや実地テストを兼ねた製品)で採用しています。

GDDR6

新たに開発された低価格向けのビデオメモリです。2018年頃に登場しました。
GDDR5X や HBM2 は高性能な反面、価格が高く、中間から下位の主力製品にはずっと GDDR5 が使われていたため、このクラスで使う新しい VRAM を、ということで開発されました。
ただ、結果的に消費電力の維持と高速化を両立できたため、上位のビデオカードでも使用されています。

グラフィック機能の中には、「ビデオメモリをメインメモリと共有」しているものがあります。
これはパソコン本体のメモリの一部をグラフィック用のメモリとして拝借するもので、VRAM を持たないタイプ、つまり CPU 内蔵のグラフィック機能(もしくはオンボード)ということになります。

専用のメモリではないため速度が遅く、パソコン本体のメモリが十分にない場合はメモリ不足にもなりがちです。
CPU 内蔵グラフィック機能は、メモリの速度でもビデオカードより性能が劣ることになります。

インターフェイス(取り付けスロット)

昔のビデオカードは「AGP スロット」という取り付け部に装着していました。
現在は「PCI Express x16 スロット」という取り付け部に装着します。

PCI Express には x1 や x4、x16 など複数の種類があり、数値が大きいほどデータの転送量が大きいのですが、サイズも大きくなります。
ビデオカードは多くのデータを高速にやり取りする必要があるため、x16 を使うのが一般的です。

さらに PCI Express には複数のバージョンがあり、最新のものに対応しているほど送受信の速度が速くなります。

これはビデオカード側だけが対応していてもダメで、マザーボード(基板)と CPU も対応している必要があります。
どちらかが遅い場合、遅い方に合わせられてしまいます。

注意として、PCI Express スロットが「物理的に」使えない場合があります。
例えば、ケースが小さく、他の部品も邪魔で、そこにパーツを付けるのを考慮していないパソコンなどです。
PCI Express x16 スロットが空いていても、ビデオカードを装着できるとは限らないので、もし増設を考えている場合は目視で確認しておくことが大切です。

出力端子 / 映像コード

ディスプレイ(モニター)とパソコンを繋げるコードを「映像コード」や「映像ケーブル」、「AV コード」「ビデオコード」などと言います。
どれも同じものですが、映像コードには取付部(端子)の形状が異なる、いくつかの種類があります。

昔は「D-Sub15pin」という端子/コードが使われていました。
その後「DVI」という端子/コードが一般的になります。
現在はさらに最新の「HDMI」や「Display Port」という端子/コードが普及しています。

これらの出力端子には以下のような特徴があります。

D-Sub15pin(HD15)D-Sub15pin(HD15)端子

古いパソコンのディスプレイ(モニター)で使われていた端子。
「アナログ信号」でデータを送ります。
画質は DVI や HDMI などのデジタル信号のものには劣ります。

DVI 端子DVI 端子

液晶ディスプレイ用の端子として普及した、デジタル信号を送れる端子です。
アナログ用の DVI-A、デジタル用の DVI-D、両用の DVI-I の3種類がありますが、もうアナログ信号のディスプレイ(ブラウン管のモニターなど)はなくなりつつあるので、普通は DVI-D を使います。
以前はコードの一方が DVI-A、もう一方が D-Sub15pin の混合コードなどもありました。

HDMI 端子

新しい映像出力端子で、音声もこれ1つで送ることができます。
様々なバージョンがあり、新しいものほど高い解像度と音響に対応しています。
DVI-D と互換性があり、DVI と HDMI の混合コードを使うと、HDMI 用の機器でも DVI 端子に繋げることが出来ます。
現在の大画面・高画質・高音質に対応するには必須ですが、コードの値段が高く、そこまでの高画質が必要ないケースでは、まだ DVI が利用されています。

Display PortDisplay Port 端子

DVI に代わるパソコンの映像端子として 2010 年頃から使われ始めたもので、通常型と、横幅が狭い mini があります。
HDMI はどちらかと言うとテレビ用で、値段も高いため、安くて最新の画質に対応できる端子としてこちらが作られました。
HDMI よりもさらに高い解像度に対応し、音声も送ることができます。
しかし製造コストが高く、肝心の価格があまり下がらなかったため、高画質が必要ない環境では DVI が主流のままです。

近年のビデオカードには、多くのモニターに対応できるよう、複数の映像端子が付いていることが多いです。
そして出力端子が2つ以上あるビデオカードは、複数のモニターを繋げて、同時に使うことができます。
それぞれに別の画面を映すことも、1つの大きな画面として使うことも可能です。

ちなみに DVI 端子や HDMI 端子があるテレビなら、それをパソコンに繋げることができます。
ただし、テレビはテレビ。
パソコンのモニターとしての活用を考慮していないものだと、色がにじむなどの症状が出ることがあります。

ファンとサイズ

「ファン」とは扇風機のことです。
パソコンの CPU には大きなファンが付いていて、これで風を送って冷やしていますが、GPU も同様に高熱になるため、それを冷やすためのファンがビデオカードに付いています。

近年のビデオカードはどんどん高性能化しているため、発熱量もかなり高くなっていて、それを冷やすファンもどんどん大きくなっています。
しかしファンは扇風機ですから、大きくなって風量が増えるほど「ブォ~」という騒音も増してしまいます。
高性能化に伴う 消費電力・発熱・騒音 の増加はビデオカードの大きな問題です。

ビデオカードの中には「ファンレス」のものもあります。
これはファンが付いていないタイプで、ヒートシンクと呼ばれる放熱板を大きくしたり、ファン以外の熱対策を施したりして、高温になるのを抑えています。
ただしファンレスのビデオカードは、あまり性能が高くない下位型がほとんどです。

ビデオカード 2スロット占有タイプ近年はファンの大型化に伴い、スロット(取付部)のスペースを2つとってしまうものも増えています。
ビデオカードは「PCI Express x16 スロット」という部分に装着しますが、この PCI Express スロットは通常、縦にたくさん並んでいます。
そして厚さのある「2スロット占有」の大型ビデオカードを付けると、となりのスロットまで使えなくなってしまいます。

ただ、昨今の上位型ビデオカードは2スロット占有が当たり前なので、最初から PCI Express x16 スロットの下を空けているマザーボード(基板)も多いです。
これだと2スロット占有の影響はありません。

ビデオカードのファンも CPU ファンと同じく、ずっと使っているとホコリが溜まってしまいます。
ただ、ビデオカードのファンは製品に組み込まれている場合が多く、簡単に外して掃除するという訳にはいきません。
しかしたまには、柔らかいブラシなどで払うぐらいはしておきたいですね。

近年は水冷のビデオカード(VGA クーラー)も登場しつつありますが、一般的とは言えません。

ロープロファイル(Low Profile)

これは性能と言うより、大きさの規格です。
Low Profile(ロープロファイル)を日本語に直訳すると「小型」。
つまり小サイズのパーツの事です。

最近は「スリムタイプ」や「ブックサイズ」「省スペースタイプ」などと言われる、本体が小さめのパソコンも人気です。
しかしサイズが小さいと言うことは、取り付けられるパーツの大きさに制限があるということです。

もし自分のパソコンが小さめのタイプの場合、ビデオカードや拡張パーツの交換・取り付けを行うときには、LowProfile かどうかに注意しなければなりません。
もし LowProfile のパーツしか付けられない場合、対応品を買わないと物理的にパーツが入りません。

ビデオカードの Low Profile 対応品は、性能的に下位のものが多いです。

消費電力(TDP)

パソコンのパーツはすべて電気を使います。
電気はコンセントから来るわけですが、パソコンのケースの中には「電源ユニット(電源ボックス)」というパーツがあり、これがコンセントの電気をパソコンが使用する電力に変換しています。

そして電源ユニットには供給できる電力量(出力)があり、例えば「500W」の電源ユニットなら、パソコンが使う電力の合計は 500W 以内にしなければなりません。

通常、電力はそれほど気にする必要はありません。
メモリや HDD/SSD が使う電力はそれほど大きくなく、CPU の消費電力も年々低下しています。
周辺機器もよほど大量に付けたりしないかぎり、電力量をオーバーさせるようなことはありません。
しかしビデオカードだけは例外です!

高性能なビデオカードは高負荷時、全てのパーツの中で、もっとも多くの電力を消費します。
そのため電源出力のことを考えずに最新のビデオカードを付けてしまうと、「電力が足りなくて動かない」ということが起こる可能性があります。

市販のパソコンは使われているビデオカードに見合った電源ユニットが搭載されており、BTO(パーツのカスタマイズ)で買う場合でも、選んだパーツに合わせた電源ユニットが自動的に選ばれるのが普通です。
よってそれほど気にする必要はありませんが、パーツの交換や増設を考えている人、余裕を持ちたい人は、電源の出力とビデオカードの消費電力には注意する必要があります。
消費電力が高いと電気代がかかるのはもちろん、発熱や駆動音に影響し、ギリギリだと不安定になることもあります。

CPU やビデオカードの発熱は「TDP」という数値が目安になります。
TDP は熱設計電力、サーモ・デザイン・パワーの略で、これが 200W なら最大消費電力も 200W ぐらいになり、その際には 200W 分の熱が発せられることになります。

3D グラフィック作画機能

3D グラフィック(3D CG)は「ポリゴン グラフィックス」とも呼ばれます。
これは点と点を結んで線を引き、線で囲われた部分を面にして、そこに絵を描いて立体感のある物体を表現する技術で、計算による滑らかな動きと、自由な拡大・縮小・回転をさせることが可能です。

昔のポリゴンはカクカクしたものが多かったのですが、現在は写真と見間違うほど高精細になりました。

ポリゴングラフィックス 初期
ポリゴングラフィックス 後期

 

 

しかしそれを表現するには、仮想空間上の点の位置と移動、それを結ぶ計算、表面に絵を描く処理、さらに光や影などの計算といった、数多くの処理を必要とします。

これを高速に行うためには、専用の機能が GPU に備わっている必要があります。
この 3D グラフィックの作画のための機能を「3D アクセラレータ」と言います。

こうしたグラフィックが多用されるのはゲームが多いので、最新のゲームをプレイするための機能とも言えます。
ただ、CAD(設計ソフト)やプレゼン用ソフトなど、一部の業務用ソフトでも利用されることが増えています。

ひとくちに 3D アクセラレータと言っても、描くための手法は色々と存在し、メーカーの開発競争もあって様々な技術が登場しています。
とりあえず新しいビデオカードほど、新たな技術に対応していると思っておきましょう。

以下、3D グラフィックに関する技術の用語と、簡単な説明を記載しておきます。
ここまで細かく知る必要はまったくないのですが、興味のある方は参考にしてみて下さい。

  • 頂点シェーダー(バーテックスシェーダ)
    ポリゴンは点と点を結んで線にして、その線を結んで面にして、その面に絵を描いて物体を表現する技術です。
    頂点シェーダーはその「点(頂点)」に関する処理を行う技術のことで、新しいバージョンほど頂点の動きを効率よく制御でき、滑らかで高速な動きを表現できます。
    技術の進歩により、ポリゴンの細かい分割などを行える「ジオメトリシェーダ」、表面をなだらかにする「テッセレーション」といった処理も登場し、カクカクしていない立体物を作れるようになっています。
  • ピクセルシェーダー(フラグメントシェーダ)
    物体の光があたっている場所や影になっている場所の陰影を処理する技術で、立体の表現には必須な技術です。
    光の処理はライティング、陰影の処理はシェーディング、反射はリフレクションとも呼ばれます。
    近年は光の屈折や映り込みの処理を行う「レイトレーシング」という技術も登場しています。
    これらのバージョンが新しく、一度に利用できる数が多いほど、綺麗な陰影のある立体を効率よく高速に表示することが出来ます。
  • 統合型シェーダー
    頂点シェーダーとピクセルシェーダーをまとめて行えるものを「統合型シェーダー」と呼びます。
    頂点シェーダーが忙しいけどピクセルシェーダーは忙しくない時、余裕がある方にパワーを振り分けるといったことが可能で、より効率的な処理を行えるようになっています。
    GeForce ではユニファイドシェーダーや CUDA(クーダ)、Radeon ではストリーミングプロセッサとも呼んでいます。
  • テクセルフィルレート
    ポリゴン(3D グラフィック)は点と点を結んで線にして、その線を結んで面にして、その面に絵を描いていますが、この面に描く絵を「テクスチャ」と言います。
    テクスチャを描く速度はフィルレート(テクセルフィルレート)と呼ばれます。
    立体の処理が早くても、その立体に絵を貼り付ける作業も早くないと、綺麗なグラフィックを表示するのは遅くなってしまいます。ですからこの速度も 3D グラフィックには重要です。
  • ピクセルパイプライン
    ポリゴンの表示に必要な一通りの作業を「1本」として、同時に何本の処理を行えるかを示す数値です。
    つまりピクセルパイプラインが多いほど、3Dグラフィックの動きはなめらかで高速になります。
    一通りの処理を全部まとめて「グラフィックスパイプライン」、その作業を実行させることを「レンダリング」とも呼びます。
  • GPGPU
    これは3Dグラフィックの技術ではなく、それを応用した別の機能なのですが……。
    高度に発達した3Dグラフィック用の演算性能を、別の計算処理にも活用しようというものです。
    単純な計算を繰り返すような作業に向いていて、2017~2018年、仮想通貨を得るマイニングと呼ばれる作業で多用されました。

実際のグラフィック機能の性能はこうした細かいところではなく、銘柄とバージョンを見て判断しましょう。

製造プロセス(プロセスルール)

これは GPU の内部の細かさのことで、CPU のプロセスルール と同じです。
内部が細かいほど、GPU の中にたくさんの回路を詰め込むことができ、電気の通る距離も短くなるので、消費電力や発熱の低減に繋がります。

あまり気にする必要はないのですが、製造プロセス(プロセスルール)が小さいほど高性能で新型と言えるので、性能の目安にはなります。
代表的な GPU とその製造プロセスは以下のようになっています。

SLI / CrossFire

これはビデオカードを1つのパソコンに2枚付けて連携させ、更なる性能向上を計ろうという機能です。
しかしそれでなくても値段の高いビデオカードを2つも使うのですから、ものすごくお金がかかります。
一般的に使用されるものではありません。

しかも2枚付けたからといって、処理能力が2倍になる訳ではありません。
せいぜい 1.3~1.5 倍程度です。

SLI」は GeForce シリーズを作っている NVIDIA 社の技術で、「CrossFire」は Radeon シリーズを作っている ATI / AMD 社の技術です。
名前は違いますが、同じものだと思って構いません。

元々はビデオカードを交換した時に、以前のものが勿体ないので、それもサブのビデオカードとして活用できるようにしようという機能でした。
しかし古いビデオカードはしょせん古い性能、連携させてもうまくいかず、この利用法は頓挫します。

そのため最新のビデオカードを2つ連結し、性能をさらに強化するという、インフレ的なパワーアップを目指す技術に目的が変わりました。
最初から二枚一組になっている高額ビデオカードも発売されています。

しかしそれでなくても消費電力と発熱の高い上位製品を2枚組にするのですから、必要電力はすごいことになります。
それに耐えられる電源ユニットも必要で、この辺まで来るともう一般向けではなく、マニア向けのフラグシップモデル(技術アピール)という性質が強いですね。

Fluid Motion

ビデオカードや GPU の性能と言うより、AMD 社の独自技術なのですが・・・ 個別に説明しておきます。

これは動画を滑らかに表示する技術で、具体的には動画のコマとコマの間に、新しいコマを生成して加えるものです。
例えば、毎秒 30 コマ(30 fps)の動画の場合、コマの数を2倍にして、毎秒 60 コマ(60 fps)の滑らかさにします。

60 コマ以上は判別が困難で、モニターの多くも毎秒 60 コマまでしか対応していないので、それ以上は考慮されていません。
つまり上限まで動画を滑らかにする技術と言えます。

ただし最初から 60 fps の動画だと意味がありません。
ブルーレイディスクの映画は 60 fps のものが多いので、これに Fluid Motion を適用しても変化はありません。
60 fps で撮影されたビデオ映像なども同様です。

録画されたテレビ番組も、そのままではうまくいかないことが多いようです。
(テレビ番組は「インターレース」という、1枚の絵を半分に分けて1コマずつ交互に映す方式で、これにはうまく対応できないようです。半分に分けていない動画は「プログレッシブ」と呼ばれます)
動画サイトなども通常、対応できません。

ただ、アニメは一般的に 24 fps(毎秒 24 コマ)なので、効果が大きくなります。
加えて、動きが大きいシーンほど違いは顕著になります。
「円盤(DVD / Blu-ray)のアニメ視聴に向いた機能」と言われるのはこのためです。
アニメ以外でも、DVD の映画やドラマは滑らかになります。(DVD は 30 fps)

利用できるのは近年の Radeon のみで、Radeon R7/R9/RX 300 シリーズ以降と、Radeon R7 260X、Radeon R9 285 以上です。
また、 Windows は 8 以降である必要があります。

Windows の 32bit と 64bit のメモリ上限

これはグラフィック機能の性能ではなく、今はあまり気にする必要のない話でもあるのですが・・・
参考として表記しておきます。

Windows には 32bit 版と 64bit 版があります。
現在は 64bit 版が一般的ですが、古いソフトや周辺機器は 32bit 版を基準に作られているため、64bit 版の Windows を使うとこれらが動かないことがあります。
これについては CPU 解説の 32bit/64bit のところでも解説しています。

よって今でも 32bit 版の Windows を使っているケースがありますが、32bit 版の Windows にはメモリの最大量が 4GB までという制限があります。
この「メモリの最大量」には、ビデオカードに搭載されている「VRAM(ビデオメモリ)」の分も含まれます。

もし 32bit の Windows のパソコンに VRAM 2GB のビデオカードを付けてしまうと・・・
メインメモリが 3GB あっても、2GB に減ってしまいます。

今のマザーボードには「メモリーリマッピング」という機能があり、VRAM が多すぎてメインメモリが減る状況になると、メモリの割り当てを使用量に合わせて調整するシステムがあるので、多少は融通が利きますが・・・

しかし、もうビデオカードの VRAM は 2GB 以上が普通ですから、ビデオカードを搭載するなら Windows は 64bit でなければならないと考えておきましょう。

メーカーの企業力 / ソフトウェアの対応 / 相性

これはグラフィック機能の性能ではないのですが・・・
ビデオカードの購入を考えるのであれば、考慮しなければならないものです。

ビデオカードは主に、NVIDIA社の GeForce 系と、AMD 社の Radeon 系に分かれます。
この両社は激しい競争を続けてきました。
そして多くのソフトウェアを作るメーカーに、「うちのビデオカードをメインに開発して下さい!」と商談・交渉を持ちかけています。

その結果、「この会社のゲームは GeForce と相性が良い」とか、「この会社のソフトは Radeon をメインにしている」といった、ソフトとビデオカードの「相性」が生まれています。

つまりビデオカードの基本性能が高くても、ソフトとの相性が悪い場合、性能を十分に発揮できない場合があるわけです。

メーカーやソフトによって異なりますが、ゲームは GeForce の方が相性が良い場合が多いです。
ゲーム以外でも、特に日本のメーカーは GeForce を基準としているため、Radeon よりトラブルが少なくなります。
海外だと Radeon を中心にしているものもありますが、基本的には GeForce の方が企業力は強いと考えていいでしょう。
GeForce(NVIDIA 社)の方が、ソフトへの対応(ドライバの改良)を行う技術チームの規模が大きいというのもあります。

ただし、ビデオカードの「乗り換え」は推奨できません。
Radeon と GeForce は機能が異なっているため、Radeon が付いていたパソコンに新たに GeForce を付けると、トラブルの元になってしまいます。
絶対にそうしないとダメという訳ではありませんが、ビデオカードを上位のものに交換する場合、Radeon が付いていたパソコンには Radeon の新型を、GeForce が付いていたパソコンには GeForce の新型を付けるのが無難です。

また、Radeon の AMD 社は Ryzen や A10 などの CPU も作っているので、AMD の CPU を使っているパソコンは、ビデオカードも Radeon にするのが普通です。

パソコンを販売している各メーカーにもそれぞれ提携関係があり、「この会社のパソコンは主に GeForce を使っている」とか「この会社は Radeon ばかりだ」といった違いがあります。
これらの会社の力は単純な機械の性能とは違い、数値で見えませんが、重要なので覚えておきましょう。

ビデオカードの取り付け

参考までに、簡単にビデオカードの取り付け / 交換について説明いたします。

普通ビデオカードは「PCI Express x16」という場所に取り付けられます。

PCI Express x16PCI Express x16 スロットはマザーボードの中央付近にある細長い取り付け部で、ここにカードをザクッとさし込みます。

ファンの向きが下になるようにさし込んで下さい。
向きが違っていたら刺さらない(凹凸部がぶつかる)ので解ります。
やや硬い場合もありますが、しっかりさし込みましょう。

ビデオカードを装着したら、パソコンの裏側、映像出力端子のところにネジ穴があるので、そこにネジを止めて固定します。
(ネジ止めがないパソコンもあります)

ケースの裏側のフタ(ブラケット)は、先に外しておきましょう。

要するに、取り付け口にザクッ挿すだけなので難しいものではありません。
これは PCI Express スロットに装着する拡張カードに共通した取り付け方です。

その後、電源コードをビデオカードの所定の場所に差し込みます。
これは「補助電源」と呼ばれ、必要ないビデオカードもあるのですが、近年の中間以上のビデオカードならほぼ必須です。

差し込む電源コードは 8pin や 6pin のもので、4pin の場合もあります。
製品によっては2本挿すこともあります。
差し込む場所と種類は見れば解ると思いますが、モノによって違うので説明書で確認して下さい。

電源コードは電源ユニットから伸びていて、通常はパソコンの中に束にして押し込められています。
もし取付部の形状が異なる場合は変換コードが必要ですが、大抵は製品に付属されています。

接続後、パソコンを起動してみて、ビデオカードを認識していれば OK ですね。

実際にパソコンパーツを交換する時は書籍などを見ながら行うのをお勧めします。

ドライバについて

ビデオカード(グラフィック機能)は「ドライバ」が重要です。
ドライバはパーツをパソコンに使わせるためのソフトウェアで、動作速度や安定性などに大きく影響します。
新技術への対応や、特定のゲーム / ソフトへの最適化なども行われます。

最近は付属ソフトをインストールすれば自動で更新してくれるのですが、もし更新されていないならメーカーのウェブサイトを見て、最新のものがあったら導入しておきましょう。
ドライバの更新によりトラブルが解消されることもあります。

代表的なグラフィックチップである GeForce と Radeon のドライバは、以下のページからダウンロードできます。
表示関連のトラブルが起きたときは、まずドライバを最新のものにして試してみましょう。

■ NVIDIA社、GeForce シリーズ:ドライバダウンロードページ

■ ATI社、RADEON シリーズ:ドライバダウンロードページ