○ 展示会・発表会で担当者の方から聞いたお話
国内メーカー系:富士通・東芝・NEC
このページでは、各地で開かれている展示会や発表会に参加した際に、国内のパソコン販売メーカーの担当者さまから直接お聞きした話を掲載しています。
普段は解りにくい各メーカーの開発方針や、販売傾向、重視しているポイント、扱っている製品の特徴や今後の予定などをお聞きしています。
ただしそれぞれのお話は、あくまで会場で聞いた担当者さんのセリフであり、その会社の総意という訳ではないのでご了承下さい。
(読みやすいように言葉/単語を一部修正したり、複数の担当者さんのお話をまとめている場合もあります)
お話をさせて頂いた担当者の皆さん、ありがとうございました。
(以下の文章の「担」は担当者様、「私」は筆者である私のセリフです)
・富士通
日本の大手電機メーカー。IT 情報サービスやスキャナの分野で最大手。
ビジネス向けの製品と、個人向けのノート PC やモニター一体型に注力している。
ユーザーの年齢層が高めで、ユニークなモデルを販売することも。
・東芝
日本の大手電機メーカー。 製品の信頼性を重視しているのが特徴。
個人向けの大型モデルから小型のモバイル PC まで、製品の幅が広かったが、現在は小型のビジネスモデルを中心にしている。
パソコン事業は 10 月にシャープに買収される予定。
・NEC
かつて国民機と言われた PC-98 シリーズを作っていた老舗メーカー。
現在は初心者向けと言うか、パソコンに詳しくない人向けのモデルが中心。
テレビ兼用のモニター一体型と軽量ノートが主力。
【 2016年 11月 】
私:「富士通さんの『パソコンメーカーとしての特徴や傾向』を教えて頂けますでしょうか?」
担:「最近の傾向としては、モニター一体型に力を入れています。
今はテレビを繋げられる、画面の大きいものが主力ですね。
テレビとパソコンを兼ねて使って頂ける製品です」
私:「富士通さんはユーザーの年齢層が高いのが特徴だと思いますが、その点はどうなのでしょうか?」
担:「それはその通りです。 高齢者の方が多いです。
ですからそれに合わせたデザインを行っていて、前述のモニター一体型もシックな外観にして、色も黒にするといった、派手すぎないものにしています。
また、高齢者向けのサポートや機能を重視しています」
私:「ここが得意だ、アピールポイントだという点は何になるでしょうか?」
担:「展示しているモデル(モニター一体型)だとスピーカーはパイオニアの良いものを使っています」
私:「つまり AV パソコンということでしょうか?
モニター一体型以外には何かありますか?」
担:「このモデルはテレビの視聴と、映像・音響に力を入れているので、AV パソコンと言えますね。
他にはペンタブレットや、2 in 1(ノート PC + タブレット)なども人気ですよ」
【 2017年 11月 】
私:「富士通さんの傾向や、力を入れているものは何でしょうか?」
担:「モバイル(持ち運び重視のノート)に力を入れています。
15.6 型から 10 インチの 2in1(タブレット兼ノート)まで、モデルを一新しています。
13 型の UH は世界最軽量、一番軽いものは 748g で、超薄型です」
私:「今年は NEC さんも世界最軽量とか言ってたような…」
担:「あー、一度抜かれて、また抜き返したんです。
NEC さんは 2in1 タイプで世界最軽量、こちらは普通のノートで世界最軽量ということで…(笑
画面の外枠(ベゼル幅)も細くして、薄さだけでなく、全体の大きさも一回り小さくなりました」
私:「重量やサイズ以外にこだわっているところはありますか?」
担:「キーボードを良くしています。
この世界最軽量モデルは、この薄さでキーストローク(キーの深さ)1.5 mm を実現しています。
12.5 型の 2in1 でも 1.5 mm を確保しており、15.6 型の AH は 2.5 mm のキーストロークを持ちます」
私:「(キーを押してみて)あー、確かにしっかりした打鍵感がありますね。
この薄さのノートだと板を叩いているようなものが多いですが、これは違いますね」
担:「あと、ひらがなを印字していないキーボードを作ったのですが、これがセンスが良いと人気ですね。
今は天板も変えられるようになっていて、色々な柄を用意しています。
後は、長時間駆動や、インターフェイス(USB や HDMI 端子など)の豊富さにはこだわっています」
私:「富士通さんはユーザーの年齢層が高い傾向にあると思いますが、これは若者向けでしょうか?」
担:「そうですね。ノートは 30~40 代が中心となっています」
私:「あそこにある VR(仮想現実)のゴーグルが付いたデスクトップ PC が気になるのですが…
ゲーミングモデルではないですよね?」
担:「ゲーム用ではありませんが、VR ヘッドセットとモーションコントローラーを独自に開発しまして、VR コンテンツを楽しめます。
パソコン自体は一般のモデルですね。
コンテンツによりますが、ビデオカードがなくても CPU 内蔵のグラフィック機能で利用できますよ」
私:「富士通さんは以前から立体視に取り組んでいましたからね。
ただ、VR のソフトウェアやコンテンツって、そんなにあるのでしょうか?
私的には、まだ一般化していない印象があるのですが…」
担:「いや、そんなことはないですよ。 かなり伸びています。
ジャンルとしましては、え~、その~…」
私:「エロですか?(笑」
担:「えぇ(笑
それも含めて、VR の動画やコンテンツは増えています」
私:「先日、富士通のパソコン事業がレノボに買収されたという、正式な発表がありました。(このお話を聞いているのは、その数日後)
これにより富士通さんの方に、何か変化はありますでしょうか?」
担:「社内でも話題になっていますが、特に変わらないという連絡は来ました。
現在、富士通は島根でノート、福島でデスクトップの生産をしておりますが、これも変わりません。
(生産工場が中国になったりする予定は今のところない)
部材に関しては、レノボと共用できるのではないかと思います。
何か発表できるとしたら4月頃だと思いますが…
正直なところ、これからどうなるのか一番知りたいのは、社員である我々です(笑」
【 2016年 11月 】
私:「東芝さんの『パソコンメーカーとしての特徴や傾向』を教えて頂けますでしょうか?」
担:「堅牢性に力を入れています。
素材や構造を改良し、様々な耐久テストも実施していて、壊れにくいパソコンを作っています。
価格では外資系メーカーには太刀打ちできないので、信頼性などで対抗しています」
私:「展示してあるモデルは小型のものが多いですが、従来の東芝さんは大型ノートの印象がありました。 その点はどうでしょうか?」
担:「現在は 13.3 インチのモバイル PC など、小型のものがメインになっています。
標準で光学ドライブを搭載しているのが特徴で、このサイズで光学ドライブがあるものは少ないはずです。
代わりに、17 インチの大型モデルは廃止されました」
私:「あぁ、17 インチなくなったんですか・・・ あれが東芝さんらしいと思ってたんですけどね・・・
ではもうビデオカードを搭載しているモデルもないですね?」
担:「ビデオカードがあるモデルはなくなりましたね。
17 インチモデルについては、確かに東芝らしさだったのですが(笑
今は持ち運びしやすいものを優先しています」
私:「東芝さんの重量級ノートは、ほとんどデスクトップでしたもんね。
では数年前とは、だいぶ傾向が変わっている感じですね」
担:「今は路線を変更しています。 B to B(企業モデル)が中心になっていて、B to C(一般モデル)は縮小中です。
新モデルとしては、サーフェイスタイプ(2 in 1)のパソコンを新たに開発しています」
【 2017年 11月 】
私:「今の東芝さんのパソコンの傾向を教えて頂けますでしょうか?」
担:「スタンダードモデルと、ビジネスモデルの2つですね。
2in1(ノート兼タブレット)のモバイルパソコンも販売開始しました」
私:「スタンダードというのは一般向けでしょうか?
去年、一般モデルは縮小しているとお聞きしたのですが…」
担:「いや、そんなことありませんよ。 一般の個人向けも変わらず販売しております」
私:「ここが良いという点は何になりますでしょうか?」
担:「液晶の良さですね。画面が綺麗です。
また、スピーカーには力を入れていて、音質が良いですね」
私:「他に力を入れている部分はありますでしょうか?」
担:「サポートがウリです。
大きなサポートセンターで、しっかりした対応を行っております」
私:「先日、富士通のパソコン事業がレノボに買収されて、NEC もすでにレノボの傘下です。
東芝さんにも買収の噂が飛び交っておりますが、その辺はどうでしょうか…?
担:「色々とありましたからね…(苦笑
ご心配をおかけしていて、申し訳ないです。
レノボとの提携の噂については、少なくとも社内には、そんな話はないですね。
パソコン事業の縮小という噂もあったようですが、私は聞いていないです」
※とのお話でしたが、2018年6月、東芝のパソコン事業は台湾「鴻海」の傘下になっているシャープに買収されることが決定しました。
正式にシャープグループとなるのは 2018年10月 から。
事業は継続の予定ですが、今後どうなるのかはまだ解りません。
【 2016年 11月 】
私:「NEC さんの『パソコンメーカーとしての特徴や傾向』を教えて頂けますでしょうか?」
担:「国内メーカーなのが特徴でしょうか。安心感を持って頂けると思います。
パソコンはスタンダードなモデルが売れています」
私:「国内メーカーと言っても、今は上がレノボ(中国)ですよね・・・
レノボ傘下になったことによる影響などはありますでしょうか?
」
担:「部材を共用できるため、製造コストが下がったのはメリットですね」
私:「ここが得意だ、アピールポイントだという点は何になるでしょうか?」
担:「プリインストールソフト(最初から入っているソフト)が多い点でしょうか。
パソコンを買って、すぐに様々な用途に活用することができます」
私:「以前、NEC さんはウルトラブックというか、世界最薄最軽量のモデルを発売し、そちらに力を入れていましたが、今はどうでしょう?」
担:「超薄型モデルは今でも主力製品ですよ。
こちらも進化を続けており、さらに軽く、薄くなっています。
耐久性も、出た当時は弱い部分もありましたが、今はかなり改善しています。
他にはテレビチューナーを内蔵したモニター一体型モデルも主力ですね」
私:「NEC さんが今『力を入れているところ』はなんでしょうか?」
担:「サポートには力を入れています。
修理の時の配送料は無料にしており、サポート電話も無料で、24時間体制です。
サポート期間は1年のところが多いですが、うちは2年、さらに5年に延長して頂くことも可能です。
あまりパソコンに詳しくない方でも、安心して買って頂けると思います」
【 2017年 11月 】
私:「今の NEC さんの傾向のようなものは何でしょうか?
モニター一体型モデルに力を入れているようですが」
担:「そうですね。 テレビチューナー内蔵のモニター一体型がよく売れています。
新社会人や学生の方で、テレビの代わりに買われる方が多いです。
独自のデコーダー(映像変換器)を内蔵しており、モニターにテレビを綺麗に映すことができます。
寝室向けのパソコンとしての需要も多く、テレビから買い換える人も結構おられます」
私:「今回はスリムデスクトップも結構展示されてますね。
あまり NEC さんにデスクトップのイメージはないのですが」
担:「いや、当社はずっとデスクトップも扱っていますよ。
今回は新モデルも出しています」
私:「他に注目の製品はありますでしょうか?」
担:「世界最軽量、769g の薄型ノートを出しています」
私:「さっき富士通さんも世界最軽量とか言ってたんですが…」
担:「あぁ、13.3 型で、2in1(ノート兼タブレット)タイプとしては、うちが世界最軽量です(笑
マグネシウムなどの軽量素材を使い、耐久性などを維持しつつ、極限の軽さに挑戦しています」
私:「何かここに力を入れているという点はありますでしょうか?」
担:「表面の良さと言いますか、安っぽいのは作らないようにしています。
高級感を感じられる製品作りをしていますね。
後は、時勢に逆らうと言いますか、うちらしいものを作り続けるようにしています。
物理ボタンを付けているのも特徴でしょうか」
私:「物理ボタン… 電源ボタンのような?」
担:「えぇ。初めて使う方でも解りやすいように、電源のボタンや、よく使うソフトを起動するボタンを、説明付きでキーボードに付けています」
私:「展示品を見ていて気になったのですが、NEC さんのパソコンには最初から多くのソフト(プリインストールソフト)が入っている印象があります。
しかしここにあるものは、ゴミ箱の他にアイコンが1つしかありません。
これは展示品だからでしょうか?」
担:「ネット購入だとプリインストールを減らせるんですよ。
セキュリティに関わるものもあるので全部消すことはできませんが、ネット購入時に『ミニマム ソフトウェアパック』を選んで頂くと、最小限にして購入頂けます」
私:「正直、NEC さんのパソコンはスペックに対して割高な印象がありますが…
この点はどうでしょうか?」
担:「当社は量販店にパソコンを多く出荷しております。
そのため量販店様との兼ね合いがあって、ネットではあまり安く売れないのです。
量販店での割引次第では、安くご購入頂けるとは思いますが…
ただ、ネット購入でも、メール会員になれば、安く販売を行っている専用のページにアクセスできます。
ぜひそちらを利用して頂ければと思います」
【 まとめ 】
最近はこういう言い方をしなくなりましたが、いわゆる「国内メーカー品」のパソコン3社。
それぞれ特色がハッキリしていて、富士通は高齢者向け、東芝は堅牢性と信頼性重視、NEC はパソコン初心者向けですね。
ただ 2017 年以降、富士通は使い勝手の良いモバイルノートを追求、NEC はテレビ兼用のモニター一体型に力を入れていて、これが特色になりつつあります。
そしてこの両者は、ノートパソコンの世界最軽量争いを続けています。
東芝は技術的なことはあまりお聞きできなかったのですが、変わらず品質を追求、といったところでしょうか。
全体的に割高なため、パソコンに詳しい人だと敬遠しがちなメーカーですが、こうしたパソコンの裾野を広げる初心者向けのメーカーももちろん必要。
また、素材や構造がしっかりしているため、耐久性や信頼性、セキュリティが必要なノートパソコンは、これらの家電メーカー品もお勧めできます。
○ リンク:富士通(富士通 WEB MART)、東芝ダイレクト、NEC(NEC Direct)